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「米の需給と価格安定の実現めざして

特色競う卸各社やJA全農 見直されるブレンド米
多彩な組み合わせで単品並みの食味保証


 ブレンド米が見直されている。「消費や入札取引の動向を考え合わせると、これからは産地銘柄の闘いよりも、むしろブレンド米の世界だとみています」(JA全農宮城県本部の松井俊幸・米穀部長)とまでいい切る人もいる。消費者は、どういうお米を求めているのか。スーパーの店頭には様々なお米商品が並んで消費者の多様な志向を物語る。その中で最近、単品銘柄より割安なブレンド米への注目度が高まってきた。そこで、これを切り口に需要動向を占ってみた。

JA全農ブレンド米「真珠伝説
”水のめぐみ” と ”光のめぐみ”

 大手の米卸会社ミツハシは、昨年四月にコシヒカリと、あきたこまちのブレンド米「大満足」シリーズを発売。これが当たって今、ブレンド米の月間出荷量は約1500t。これは発売当初の約3倍だ。
 全体の出荷量約8000tの中で、ブレンド米はシェアも大きく伸ばしたわけだ。「大満足」は魚沼や新潟のコシより少し下のランクをねらった同社の戦略商品で割安だが、ほかに高級志向のブレンド米「いいとこどり」も出している。

 ブレンド米というと、違う品種を混ぜ合わせた商品と思われがちだが、実際には、同じ産地銘柄の新米と古米を使った複数年産のもの、また産年と品種が同じで、産地だけが違っている複数産地のものなど組み合わせはいろいろ。
 「大満足」シリーズはミツハシの商品開発力を生かした複数年産ブレンドなどで話題を呼んでいる。
 単品銘柄にそん色のないおいしさで、しかも値段が安いのがブレンド米だ。低価格志向の中で、その価値が光り出したようだ。米卸各社は、それぞれ特徴のあるブレンド米づくりに工夫を凝らしている。
 スーパーでは西友がプライベートブランド(PB)でブレンド米を積極的に販売して実績を上げ、生協にもPB米が多い。

JA全農ブレンド米
良米蔵

 一方、JA全農は「真珠伝説」というブレンド米を3年前に開発。各社の後発商品と競い合っている。JAブランドの「パールライス」に因んだネーミングの真珠伝説には2種類あって「光のめぐみ」は新潟コシ並みの、また「水のめぐみ」は、あきたこまち並みの食味を追求した。
 お米の味は、その年の気候とか保管状況で変化するため年間を通じて安定した食味を実現しようと全農の営農技術センターで研究を重ねたのが真珠伝説だ。
 前後して、JAの低温貯蔵倉出米(古米)のブレンド「良米蔵」も発売した。これは低価格米の愛用者の間に人気がある。

 食管制度下の標準価格米は別として、もともと昔の米屋はブレンド技術で勝負したものだ。その後、自主流通米制度下で、各産地は品質を競い、量販店の競争も激しくなる中で単品銘柄販売が主流となった。
 また7年前の凶作時に外国産米を混ぜるように政府が指導し、ブレンド米は評判を落とした。今も、その後遺症が、薄らいだとはいえ、まだ残っている。
 一方、例えば関東の計画外米が魚沼コシに化けるなど、低価格志向を当て込むインチキ品の出回りから、激安単品銘柄への不信感もあり、相対的にブレンド米の株が上がる面もある。

 レストランや食堂などの外食産業、持ち帰りの弁当やすしなどの業務用は、すでにブレンド米の世界だ。産地銘柄名をメニューにうたう店はぐんと減った。年間安定した食味を単品で保つのは難しいからだ。
 消費者も外食や持ち帰りのご飯はブレンド米と心得て割り切っているようだ。しかし家庭用では産地銘柄へのこだわりがある。
 全農宮城県本部の松井部長も産地銘柄競争は続くとの前提に立ってパールライスの拡販を強調する。現実にブレンド米がスーパーやコンビニの米売場に占めるシェアはまだごくわずか。
 全農パールライス部の丸橋和彦次長は「ブレンド米のシェアを早く2ケタ台に乗せたい」という。現状の占有率は全体として、まだ1ケタ台とみている。

 全農は最近特にスポーツを通したパールライスの知名度定着に力を入れ、3日にはシドニー五輪のメダリスト全員に「真珠伝説」100kgを贈った。贈呈式では柔道銀の篠原信一選手が「五輪選手村にパールライスがなかったので決勝では負けました」などと笑いを取った一幕もあった。
 これらキャンペーンは米消費拡大運動の一環で、全農はあらゆる角度から消費拡大をはかる取り組みを加速している。パールライス部の中沢正良審議役は「消費拡大には決め手がないので様々な攻め口を考え、合わせ技で実効を挙げていきます」という。

 ブレンド米は価格面で消費を下支えしているが、今後の人気上昇が消費拡大にどう結びつくか、あなどれない存在になってきた。



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