「米の需給と価格安定の実現めざして」
「緊急米対策」の確実な実施を JAグループが足並みそろえた米の集荷・販売を JA全農米穀販売部長に聞く JA全農米穀販売部長 水野 文雄 氏 聞き手: 明治大学教授 北出 俊昭 氏
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「平成12年度緊急総合米対策」後の需給量の考え方 「平成12年緊急総合米対策」で目指す方向
北出 最初に12年産米の集荷状況からお聞かせいただけますか。 水野 集荷見込みはまだまとまっていませんが検査数量実績では10月末時点で400万トンです。昨年の同時期は379万トンでしたから前年対比で105%ということになります。 北出 このところ米価の下落が続いていますが、こうした状況では生産者も独自販売は難しく、やはりJAに出荷するという傾向もみられるのでしょうか。 水野 その点はなかなか数字としては把握できませんが、各地の経済連担当者の話を聞くと、計画外流通米として販売していた生産者が計画流通米としての出荷に切り替えることが増えてきたということは聞きます。その理由は、米価の低迷もありますが、やはり代金回収がなかなか難しいという面もあるようですね。 北出 9月には米の需給と稲作経営の安定をはかるため「緊急総合米対策」が決定されましたが、とくに調整保管など米の販売方針に関わる点について改めて解説していただけますか。
水野 今回の「緊急総合米対策」は、今年10月末に計画を60万トンも上回るような在庫が積み増すと見通されたこと、12米穀年度の政府米の販売は20トン程度と見込まれ、備蓄運営ルールからすると12年産米の政府買い入れはゼロとなる可能性があること、また、11年産自主流通米の20万トン程度の販売残も見込まれることなどの状況を受けて、とにかく米の需給を均衡させなくてはならないということから検討が開始されたわけです。
ただし、これだけでは不十分で、さらに一定量を市場隔離するために調整保管を行うということになったわけです。しかしながら、調整保管という需給調整の方法はこれまでにも行っていて、それは翌年に市場に出回るという形でしたから市場隔離効果としては薄かった。したがって、今回は、米穀年度当初から24万トンを調整保管し来年の10月末に同量の政府古米と差し替えるという方法になったわけです。 北出 その方法はこれまでにないことですね。 水野 そうです。緊急対策では“隔離効果の高い自主流通法人による一元的な調整保管”と書かれていますが、この調整保管分は、言ってみれば自主流通米ではなく最初から政府米であって、これまでのように市場に出ることはないということなんです。
北出 販売については、政府米との協調販売は継続していくのですか。協調販売を中止するとの報道もありましたが。 水野 政府米と自主流通米では類似の銘柄もありましたから、その部分についてはこれまで政府米の販売を控えてもらうという協調販売を行ってきました。
北出 つまり、13米穀年度になる前にも、さまざまな需給調整を行っていくことがポイントだ、ということですね。 水野 昨年も17万トンの生産オーバー分を飼料用に処理することで単年度の需給はこれで均衡するはずだと考えられていました。均衡すれば米価も下がり続けることはないだろうということでしたが、実際には流通在庫がずいぶん影響していることが分かったわけです。そうしたわれわれの想定のつかないことで売れ残ることは十分あり得ることです。 また、この調整保管の量は当面24万トンとしていますが、かりに売れ残りがさらに増えるようなら同じ仕組みで処理することも検討しています。
北出 最近の米流通業界ではとくに卸の再編が進行していますが、この傾向についてはどうお考えですか。 水野 やはり卸会社の数が多いために、量販店など小売りに対しての競争も品質競争ではなく、価格競争になってしまっていると思います。
したがって、業界が再編され信用のある大手の卸業者が生まれれば、適切な品質競争ができるのでしょうし、業界もそれをめざしているのだと思います。 北出 JAグループの組織統合も進んでいますが、米穀事業の方向はどうなるのでしょうか。 水野 米穀事業でいえば、全農は自主流通法人ですから統合すれば県本部も自主流通法人になるわけです。ただ、自主流通法人は小売りに直接販売することはできないので、県本部の卸業務については別会社にするしかないという問題がでてきました。
北出 非常に大きな変化のなかにあると思いますが、今後のJAグループの米穀事業にとって大切なことを改めてお聞かせください。 水野 今後とも米は市場で評価されることは変わらないと思います。その市場での評価をいかに生産にいかしていくかということが産地としては大事になると思います。 また、今後も全体の需給調整や販売調整は全農の大きな仕事だろうと思いますし、経済連等は県単位の生産指導、JAも生産指導と生産者の要望に応えるように集荷していくことが大切だと思います。このようなそれぞれの役割分担を明確にしていく必要があると思いますし、それがいちばん生産者にメリットを還元できることになると思います。 北出 どうもありがとうございました。 |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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