「クミアイガス器具取扱25周年」
「ふれあい訪問」で利用者の「安心と信頼」を クミアイガス器具取扱25周年キャンペーンを展開 JA岩手県経済連、県南クミアイプロパンセンター、JAいわて南、JAおおふなとをたずねて
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厳しさますガス事業の環境 |
◆値下げする競合エネルギー
LPガス事業は、液石法(液化石油ガス法)の改正によって、保安の高度化と販売の自由化が進み、消費者が販売事業者を自由に選択できる時代となってきた。 ◆元売・大手卸も小売に参入 LPガス業界では石油元売の合併・集約にともなってLPガス元売の再編が急速に進んでいるが、その水面下では系列販売店を買収し直接小売りに進出する元売も出てきている。さらに圧倒的な資金力と営業力をもつ大手卸が小売(販売)業務へ進出し、県域を超える販売エリアによって高い収益性を上げていることも目立ってきている。 ◆伸び悩みの原因は、単位消費量の低迷に こうしたLPガス業界を取り巻く状況は、当然だがJAグループガス事業にも大きな影響を与えることは間違いない。現在、ガス事業は多くのJAで経済事業収益の柱になっているが、販売数量の伸びは業界に比べるとかなり低いため、小売価格が低落するとかなり厳しい状況になることも予測される。 ◆器具と消費量の拡大めざしてキャンペーン JAグループでは、今年度で25周年を迎えるクミアイガス器具の取扱拡大をめざして、この9月から12月まで、消費者に対する全国クローズドキャンペーンとJA・県連(県本部)に対するランク別奨励を実施内容とする「25周年記念キャンペーン」を展開している。 9月に訪問点検を実施 −岩手県のJAグループ JA岩手県経済連は25周年キャンペーン冒頭の1ヶ月(9月1日〜30日)を、@燃焼器具点検を実施し、組合員への保安サービスの向上を図る、A組合員との接点強化を図り「安心と信頼」の得られるJA−LPガス事業をめざすことを目的に「ふれあい訪問−周知義務強化月間−」を実施した。 ◆戸数シェア15%、数量シェア11% 岩手県でガス事業を行っているのは全27JA中17JA。供給戸数は6万9000戸弱だが、その内経済連の盛岡・花巻・県南の3クミアイプロパンセンターから供給しているのは6万1000戸強(加入率89.8%)で、出荷数量は約1万4000t(系統利用率94%)。JAの県内シェアは供給戸数では15%あるが、販売数量では11%と低く、これを上げることが課題だと経済連生活燃料部ガス課の加藤吾郎調査役。その原因は、集合住宅が多く給湯器などが普及している都市部では単位消費量が高いが、農村部では低く、平均で14.0kg/戸/月と商系に比べ消費量が低いことにある。 経済連では「組合員・利用者から信頼を得るよう全JAが『認定販売事業者』の取得に向けて指導強化」を図る(今年度中に4JAが取得予定)とともに、「集中監視システム(安全化システム)の加入者の拡大を図る」(現在の普及率は46.1%<東京支所平均36%>)など、「安全・安心・信頼」への取り組みを強化している。
◆最大の課題はまずお客と接すること しかし「自動検針が進んだことで、お客さんとのふれあう機会が少なくなっている」(古沢規・経済連県南クミアイプロパンセンター所長)。そのために、JAの利用者であってもガス器具の購入は、ガス器具販売店やスーパーに「逃げられている」のが現状だ。 ◆4月から自主的に訪問点検 −JAいわて南花泉センター 「ふれあい訪問」に県全体で取り組む前に、JAいわて南の花泉ガスセンターでは、今年の春から自主的に戸別訪問をして保安点検を行う「ふれあい」活動を展開していた。それは「JAの一番の任務は保安ですから、安全に使えるよう指導する」ことと、「単位消費量がかつての17kgから15kg台になり、器具の売り上げが落ちているので、顔を合わせれば売れる」と考えたからだと佐藤政敏センター長。訪問が即器具の販売に結びつくわけではないが、ホースの交換や必要な修理をし、予定されているキャンペーンの予告をしてくればその時期に「この間家に来て話をしてもらったから…」と電話があり器具を購入してくれたりするという。 9月に82戸を「ふれあい訪問」したJAおおふなとの互野建夫・燃料業務所係長は「古い器具があったり、よそから買ったものがあることが分かったのが一番の成果」だという。古くなった器具は交換することを勧めるが「その時にダメだなという家には、農業祭に出すから」と実物を見てくれるよう頼んだという。そして「ホームセンターよりは高いが、品質には自信をもっている商品」だということを強調する。10月のガス器具の販売実績の40%は、10月28〜29日の農業祭での販売だった。
◆JA−SSの全職員が「ガス器具講習会」 −JAおおふなと 互野係長の燃料事務所はJA−SSの中にある。今回のキャンペーンに先だってJA−SSの職員全員が参加して、メーカーや経済連から講師を招き「ガス器具講習会」を行った。そしてJA−SSの店頭にガス器具を初めて陳列したが、ガスは商系から購入しているが給油に来るお客がガス器具を購入するなどの成果が出ているという。鈴木和雄所長は「講習会で女子職員でもガス器具が売れるようになったし、売りやすくなったので、SS店頭陳列は継続する」という。 JAいわて南の黒井弘燃料課長も「商品の質が違うから、訪問し説明して、納得してもらうこと」がガス器具販売のポイントだいう。 専任体制で知識・ノウハウを蓄積 ◆複数担当者で事業を確立 「他部署からの異動も多いので、ノウハウの蓄積や知識などで商系よりも遅れをとることが多いが、危険物を扱うので信頼して任せてもらうには、担当者の資質の向上が大事だ」と、黒井課長。そして「消費者の立場に立って、JAなら安心といわれるようになるためには、できるだけ利用者と会うようにする」ことだと、同JA一関ガスセンターの責任者、千葉博・燃料課長代理。「日々の仕事もあり思うようにはいかないが、できるだけ訪問し点検するようにしています。点検だといえば断られることはありませんしね」と佐藤花泉センター長。 自動検針の普及などによってJAのガス事業担当者の人員が少なくなったり、他業務と兼任するケースが多くなっている。しかし、生活資材事業収益の30%をガス事業が占めるJAいわて南では、両センターに8名の専任担当者を配置している。 ◆住宅部門や地域工務店から情報収集 もう一つ両JAに共通しているのは、他部署や地域からの情報収集とその活用だ。JAいわて南の場合には、一関市を中心に宅地化が進み、組合員が集合住宅を建設することが多いが、その情報を資産運用課から得て、活用している。 経済連の「25周年キャンペーン」の目標は1億円だが、その内の5200万円が県南センター7JAの計画目標だ。古沢所長は「ガス事業担当者が主体的に『ふれあい』活動をすることが、ガス器具販売のキー」だと、「担当者の意識高揚と新たな挑戦意欲」を強調したが、取材した限りではこの年末商戦のなかで目標達成は間違いないだろう。 ◆利用者の器具情報をデータベース化 経済連では、従来からある情報と、この「ふれあい訪問」で得た情報を入力し、保安調査台帳の作成・登録を進めている。すでに50%の入力が完了している。 |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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