日本の食文化にあった農産物を 安定、安価に 株式会社ファミリーマート 執行役員総合企画室長・経営管理部長 飯沼 浩 氏 (インタビュアー)農政ジャーナリストの会会員 坂田 正通 氏
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◆ニーズに応えればそれなりの反応が
坂田 個人消費が低迷しているといわれていますが、直接、消費者と接しておられるCVSからみるとどうですか? 飯沼 小売業では既存店の売上が一つの目安となります。百貨店やスーパーはこの既存店の売上高が長期間前年割れをしていますが、CVSも昨年9月以降、前年割れになるなど既存店の売上が伸び悩んでいます。売上というのは客数×客単価ですが、客数はファミリーマートでは3年連続増加しています。しかし、客単価は下がっています。 坂田 その原因はなんですか? 飯沼 データ上では1人当たりの買上げ点数が少なくなっていること、1品当たりの単価が下がっていること。1品当たりの単価が下がるという点では、構造改革によって低価格の商品を提供する衣料品のユニクロのようなところが出現しマーケットプライス(市場価格)が形成されれば、他業態のスーパーも専門店もそこにシフトせざるを得なくなります。 また、1人当たりの買い上げ点数が少なくなってきていることに通じるかもしれませんが、支出構造が変化しているということがいえると思います。さまざまな調査結果をみますと、1人当たりの購買支出金額はあまり変わっていないようですが、携帯電話やインターネットなどの通信費の割合(支出)が高くなり、これまでのような物販支出の割合が低くなってきているというのが特徴です。 坂田 そうすると個人消費は…。 飯沼 マクロでいえば消費者心理は雇用環境とか年金など将来の不安もあり、急激な回復は望めないと思います。といってそれほど縮こまっているわけでもないので、お客様の望んでいるものをきちんと把握をして提供できれば、それなりの反応はあると思います。 ◆主婦や壮年男性にまで広がった顧客 坂田 CVSの客層は若い人、というイメージがありましたが、最近は変わってきているようですね。 飯沼 客層は広がっています。お弁当などの品質の向上はもちろんですが、個食といいますか小さなパッケージは一人暮らしの若者だけではなく、ご自身で作るとかえって割高になったり無駄になってしまうというお年寄りや少人数家族、また家族の中でも食の好みが違うということで自分用の惣菜を買われる方など幅広くご利用されています。それから、30坪ながら生活をサポートするいろいろなサービス機能が充実していることもあるのだと思いますが、主婦や壮年男性といったお客様が増えていますね。 坂田 主婦や壮年はやはり食料品を買いに来ているわけですね。 飯沼 現在のファミリーマートは本当の意味で街の便利屋になってきています。お弁当やデザートなどの食料品はもちろんですが、公共料金や通販料金支払いに利用される主婦が増えています。 ◆環境変化に対応して機能高める 坂田 今後の重点施策としては…。 飯沼 1つはCVSであるファミリーマートの基本機能の強化です。お客様が望まれるサービス・商品を開発し提供し続けることはもちろん、それぞれのお店がお客様にあった品揃えをし、接客サービスやクリンネスなど、常にお客様に満足していただける体制を強化することです。 ファミリーマートは1981年に創業しましたが、その機能は常に強化され変化してきています。90年には公共料金の代行収納を開始し、95年には通販に広がり、いまではクレジットを含むかなりの分野で代行収納を行っています。また、91年には店頭で予約チケットが買えるオンラインチケットも導入しております。96年には規制緩和に伴いおコメ、〒郵便切手類の販売を開始するとともに、従来は玩具店で販売していたテレビゲームも取り扱いを開始しました。さらに99年からはドリンク剤の取り扱いを開始しています。お客様のニーズと規制緩和など環境の変化に対応することでCVSの機能を高めてきましたが、さらにどのように成長、変革していくのか、いま、し烈な競争をしています。 坂田 POSをいち早く導入するなどITを一番活用していますね。 飯沼 私どもでは、89年に全店にPOSを導入しました。POSは、客層分類キーを押さないとレジが動きませんから、このキーと商品のバーコードで、何時にどの商品がどういう客層に売れたかが分かります。取扱商品のデータはすべてこれで取れますが、取り扱っていない商品データ、トレンドデータをどう収集するかが課題になりますね。 ◆ショップの売上は各加盟店に
坂田 ネットショップのファミマ・ドット・コム(http://www.famima.com)を立ち上げられましたが、どういうものですか。 飯沼 会員制のネットショップです。昨年10月に立ち上げましたが登録会員はすでに25万人を超えました。会員の特典がありますし、もちろん登録料、会費は無料です。ネット上のショップで商品を購入していただきます。商品は宅配か、お客様が指定する全国どこのファミリーマートでも受け取っていただけます。代金はお店で前払いまたは商品と引き替えにお支払いいただく方式が一番多いようです。 他のCVSチェーンは本部が運営しているネットショップですから仕組みは違っています。近いうちそれぞれの店(5000店以上)が独自の品揃えしたネットショップになっていきます。実際の商売と同様に、ネット上でもフランチャイジーがそれぞれに品揃えをし、会員とコミュニケーションをとるこの仕組みを「ECフランチャイズ」としてビジネスモデルの特許申請をしています。 坂田 食料品はネットショップで扱えますか? 飯沼 コメとか産直品は、注文を受けて出荷準備しますから、従来のカタログ販売よりは鮮度が落ちませんね。入口は1つですが、その先には無限の売りたい人がいるという広がりがあります。注文などのデータは瞬時に届きます。
坂田 そうなると商品を探すのが大変ですね。 飯沼 実際のCVSは無数の商品の中からお客さんのニーズにあったものに絞り込み、30坪の店舗に2800アイテムしか置いていません。ネットでもそれと同じ考えでいきますから、お客様のニーズに合わせて商品は常に入れ替わっていきます。 坂田 価格の問題もあってCVSの食料品は輸入物が多いような気がしますが… 飯沼 価格の要素は確かに大きいのですが、一方で安心・安全という観点から減農薬・減化学肥料の食材が求められています。ですから単純に安いから輸入物というわけにはいきません。 さらに、循環型経済活動の一環として、お店から出る生ゴミをコンポスト化し土壌改良剤として農家の方に提供し、そこから作られた農産物を原材料として加工し、お店で販売することにも取り組んでいます。 坂田 コメの販売はどうですか。 飯沼 秋田、山形や新潟経済連のご協力を得て、ぎりぎりまで籾保管する「籾蔵」というオリジナル商品を出しています。当初は1キログラム、2キログラムパックだったのですが、味が良いと主婦にも人気がでましたので現在は5キログラムも品揃えし、これが売れています。 坂田 おにぎりや弁当類の仕入れはどのようにされているのですか。 飯沼 各地に製造拠点があり、弁当工場は54カ所ほどで、そこから1日3回納品しています。 坂田 他に売れ筋の農産物としてはどんなものがありますか。 飯沼 以前、ファミリーマートはCVSとしては珍しく丸のままのキャベツやスイカ、泥つき野菜など結構取り扱っていましたが、今はカットフルーツをはじめサラダとかカット野菜など手をかけたものが多くなっていますね。 ◆物流を含めた構造的な改革が必要 坂田 最後に日本の農業あるいは生産者への注文はありますか。 飯沼 先ほどもお話しましたが、お客様のニーズを考えると単純に安いからということだけで海外からの輸入物を選択するということはありません。安全性などの視点もこれまで以上に重視していかなければなりませんから。 日本の農産物の価格を競争力あるものにするためにも物流コストをはじめとする構造的改革と、効率の良い大規模な生産ができる体制を構築する必要があるのではないでしょうか。産地と消費地をできるだけダイレクトにしたり、生活者のニーズ、情報を提供したり、私どもにできることは積極的に取り組んでいきたいと思います。 インタビューを終えて 飯沼さんの心の癒しは、自宅に御香の部屋をつくり、御香の芳ばしい香りの中に1人静かに座っていると心が落ち着くのだという。娘2人の父親。(坂田) |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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