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第46回JA全国女性大会特集 農と共生の時代をわたしたちの手で
    「食と農」女性ベンチャーら大活躍
ファーマーズマーケット核に多彩な事業活動を展開
  
−JAあいち知多 あぐりタウンげんきの郷
 愛知県のJAあいち知多(竹内寛幸組合長)は「あぐりタウンげんきの郷」というファーマーズマーケットを中核にした施設をつくり、昨年12月23日のオープン以来、1日平均6000人の客を集めるという好調のすべり出しをみせている。そこで働く約120人の9割は女性だ。野菜などを出荷する生産者は12月中で約280人。これまた毎日搬入してくる顔ぶれの約6割は農家の主婦たちである。場内にはファーマーズマーケットのほかに多彩な施設が並ぶ。加工施設の一角にある惣菜店は女性起業家7人の共同経営だ。ここでは爆発的な女性パワーが多方面で発揮されている。

 げんきの郷は大府市内に広がる。エリアは5.5ヘクタール。建設の端緒は地力の低下にあった。なんとか土壌を再生させたい、農業を復興させたいとJA合併前の旧JA東知多は「アグリルネッサンス構想」と呼ぶ壮大な設計図を描いた。




あぐりタウン
「げんきの郷」
のシンボル・
時計台

●土づくりを基本にJAに先行して

加工施設「できたて館」で郷土料理を販売する
(有)七工房彩菜のみなさん

 それは土づくりを基本とした持続性のある有機農業を目ざす内容である。この構想にもとづいて、げんきの郷ができた。
 だが構想の策定に先がけて東知多の女性部会は、平成9年から生ゴミ減量運動と一体の土づくり運動を始めていた。生ゴミをたい肥化して有機質肥料とする運動だ。
 行動開始はJA本体より早かった。このためJAあいち知多の中嶋好夫専務は「いや女性の行動力には脱帽です」と述懐し、今後の女性参画に大きな期待をかけている。
 女性部会は生ゴミによる有機質肥料を普及するためモデル農園もつくった。げんきの郷の惣菜店で販売している商品の食材は、その農園で作った無農薬・無化学肥料の野菜だ。  

ビジネスチャンスとらえた女性たち

 惣菜店はモデル農園グループの仲間7人が設立した有限会社「七工房彩菜」が経営する。

加工施設「できたて館」の外では
みたらし団子も販売している

 社長は前JA理事の鈴木香津美さん、「今後もモデル農園の野菜にこだわった安心・安全な惣菜を提供していきたい」という。
 一方、畜産農家の家畜ふん尿処理ではJAが昨年2月に「JA総合有機センター」を完成させて有機質肥料を供給し、着々と土づくりを進めている。
 げんきの郷で販売する農産物はすべて、こうした土づくりを基本にした商品だ。

 コメ消費拡大に情熱を燃やしてファーマーズマーケットに参加した女性もいる。JA理事の青木君笑さんだ。女性部会の仲間と計4人で、おすしをつくって販売している。昔からの家庭料理風のおすしである。
 惣菜といい、おすしといい、予想以上の売れ行きだという。惣菜店の横にあるパン屋さんの売上げは1日約20万円。そんなにかせぐベーカリーは非常に珍しいとのことだ。

 げんきの郷建設というビジネスチャンスをとらえた女性ベンチャーの事業活動は好調のスタートを切っている。
 土・日曜日には1日約1万6000人ほどが詰めかけて活気にあふれるげんきの郷だが、そこで働く女性たちの姿は「女性が築く元気なJA」とでもいえそうなたくましさだ。
 そうした活動をつぶさに見ている中嶋専務は「21世紀の元気なJAを担うのは女性の行動力ですよ」と期待。JAとしては「環境や福祉や文化など幅広い視点から女性の行動力を引き出していくべきです」と語る。  

●拠点を広げ、農業復興へ壮大な構想

「さんハウス四季」では
地元花生産農家が出荷

 そして女性の活動で消費者とのつながりを広げ「農業に対する地域住民の理解を深めてもらえば農業復興は夢でなくなる」とロマンをふくらませる。
 地域住民の理解と共感を得てこそアグリルネッサンスは実現するという考え方である。
 げんきの郷は「農と食、健康の交流拠点」だ。「都市農村交流複合拠点施設」という位置づけもある。女性を中心とした交流が理解を深め、農業復興につながっていく期待は大きい。

 施設群はファーマーズマーケット、グリーンセンター、加工施設、レストラン、そして天然温泉と実に多彩だ。それらをトータルした集客力の強さを発揮している。新年度には食と農と健康について学ぶ学習・研修施設「アグリカレッジ」を建設する計画だ。
 JAの100%出資で設立した株式会社「げんきの郷」が経営している。社長はJAの深谷泰造副組合長。正社員は13人だが、パートを含めた従業員規模からして同社による雇用機会の創出は大きい。

 総事業費は35億円。うち約5億円は国と県の補助事業だ。
 アグリルネッサンス構想はげんきの郷の背後に広がる農地150ヘクタールを生産ゾーンとした。
 ここを拠点に土づくりを周辺農地へと広げ、農業復興を推進するという壮大な構想だ。
 今はファーマーズマーケットで直売する農産物は無農薬・無化学肥料や減農薬・無化学肥料といった栽培段階だが、数年後には有機農業を目ざす。そのためにJA総合有機センターの製造能力を増強する。現在は年間製造量4000トン。  

●行動力、感性生かし活動参画広げる

ファーマーズマーケット「はなまる市」では
農家が採れたての野菜や特産物を直売

 この地域は重量野菜の生産が中心だったが、多品目生産に転換して多様な需要に応える。これは高齢者に元気で農業を続けてもらう生きがい対策だ。女性と高齢者の元気な行動を引き出したいと中嶋専務は語る。
 今後、生産ゾーンの3分の1ほどはハウス栽培として通年供給体制とする計画だ。ハウスでは重油を焚かずに、たい肥化の過程で発生するメタンガスを熱エネルギーに転換する循環農業も検討している。

 資源リサイクルでは風力発電も計画中だ。温泉施設の横に巨大な風車を立てる。羽根を含めると高さ60メートル。発電量は年間約80万キロワット。げんきの郷の電力需要量は50キロワットなので余った分は売電するという計画だ。
 このほか雨水を貯めてトイレや散水に活用する計画などもあり、環境保全を貫く方針。
 げんきの郷を中心としたアグリルネッサンス構想の話題は多彩だ。総事業費のうち国・県の補助を除いた約30億円がすべてJAの自己資金で「借金なしの仕事起こし」というやり方も珍しい。
 JAあいち知多は昨年4月に3JAが合併して発足したが、旧JA東知多が剰余金処分のうち1部を目的資金として8年ほど前から積み立て、それを投入したのだ。

 アグリルネッサンス構想は農業復興にかけた壮大なロマンへの挑戦といえる。そうしたJAの取り組みの中で行動力や感性を生かした女性の参画が今後さらに期待される。


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