お米や野菜は国産がいいし安心できます 女優 樫山 文枝さん インタビュアー 農政ジャーナリストの会会員 坂田正通氏
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人の人生を左右する 先生の影響力はすごいですね
坂田 昨年は「かの子かんのん」(小幡欣治作、児玉庸策演出)で主役の小説家、岡本かの子を演じられて大変な評判でしたね。彼女は本当に激しい生き方をしたんですね。 樫山 そうなんです。あの激しさは演じるほうも非常におもしろいですね。演劇を見る醍醐味は、人間は、いろいろな抑圧があって生きているわけですが、それをいかに跳ね飛ばし、その人らしく生きたかというところを舞台で見るところにあるんじゃないでしょうか。 坂田 女優には学生時代からあこがれて? 樫山 中学3年生のときに、教科書に載っていた木下順二さんの『夕鶴』を演劇部でやることになったんですが、どういうわけか先生が私に“つう”をやらないか、と言ってくれたんです。演劇部に席を置いてはいたんですが、それまではあまり熱心ではなかったんですね。けれどそう言われて台本を読んだらのめり込んでしまって、こんな世界があったんだと。 学校の先生の力はたいしたものだと思います。中学3年生という非常に多感な時期に演じて、自分の行く道をそれとなく見つけさせてもらったことになりますから。俳優生活を振り返っても、これまでいろいろと抜擢されましたけど、夕鶴をやれたことほどよかったことはなかったかもしれないなと、ふと思うことがありますね。 おいしい野菜とご飯があれば 本当にそれだけでいい 坂田 公演があるときとそうでないときとは、普段の生活はかなり違うんでしょうね。 樫山 公演があるときは、もう朝から晩まで芝居のことを考えていますが、今はちょうど端境期というか仕事から少しは離れられていますから、朝起きてお掃除したり洗濯したり花に水をやったり、食事をつくったりと、ごくごく普通の主婦と同じような生活をしています。 坂田 食事はご自分でつくられているんですか。 樫山 みんなに驚かれるんですが、自分でやってますよ。このお正月に劇団の若い女優たちを呼んで食事を準備したら、こんなことするんですか、料理も上手で、とびっくりされたものですから、“それならみんなに言い振らしてよ、何もやらないように思われているから”、って(笑)。 坂田 ご飯はお好きですか。 樫山 大好きです。家はお米がどんどんなくなっちゃうんです。主人も私もご飯党でものすごくよく食べます。ご飯がおいしければおかずはいらないぐらい。 坂田 野菜は最近ずいぶん輸入野菜が増えているんです。 樫山 どうしてなんでしょうか。絶対、国産のほうがいいですよ。それは目の届きようも違うし、安心ですし。 お米がいちばんシンプルで 健康的な食べ物です 坂田 公演で地方を旅されることも多いと思いますが、農村の風景についてはどんなことをお感じですか。 樫山 劇団に入ってうれしかったのは、旅があるということでした。列車の窓から見る田植えの風景なんて、本当に美しいですよね。あぜ道にピンクのレンゲが生えていて、菅笠かぶって1本1本植えていた光景も見ましたし、それから年々、機械化されていった光景も旅のなかでの印象にあります。 こんなにいい大地があるんだからそれを使わないという手はないですよね。お米も食べられない時期もあったわけですから。先日もテレビで魚沼産コシヒカリができるまでのことをやっていましたが、涙が出ちゃいますものね。そうした歴史があってお米を作ってきたんだから、もう少し日本の良さとか歴史を見直して育てていかないと。 坂田 とくに若い人は、生活スタイルが洋風化してご飯やみそ汁をゆっくり食べる習慣じゃなくなっているんですよ。 樫山 私なんかご飯とみそ汁とお漬け物とサケの一切れか、干物があれば大満足です。でも、若い人は知らないんだと思いますね。お米は、いちばんシンプルで健康的な食べ物だと思うんです。もう少し宣伝すればだんだん分かってくるんじゃないかな。 農家もがんばっていい物をつくれば それだけ評価されると思う 坂田 今年も9月から新しい公演が始まるわけですね。 樫山 小説家の広津和郎の広津家を描いた「静かな落日‐広津家三代」という芝居です。岡本かの子の熱が冷めていないですが、そろそろ本読みや資料を読んで準備をしなければならないんです。 坂田 そういう創作の現場から農業者へのメッセージがあればお聞かせください。 樫山 それほどおこがましいことは言えませんが、舞台も種を播いて育つまでに時間がかかるものです。そのとき自分が心に決めているのは今までやったお芝居の小指の先でもいいから、違うところが見えて、樫山のここが新しいところだ、と言われるようにしようと思っているんですが、試行錯誤が長ければ長いほど結果は出てくるものなんじゃないかと思っています。 私は自分にすごく才能があるとは思っていないんですが、どうしても舞台が好きだから、諦めない、粘る、喧嘩してでもね。芝居は一人でやるわけじゃないから意見は違うし、くたくたになっちゃうけど。闘いですよね。闘いのなかで粘って粘って、それが力になってくるんじゃないですか。 劇団では、先を歩いている人は、下手な人が平均値に乗るまで待っているんです。うまくいかなければ一からやり直すこともありますし、これは耕し直しですかね。耕し直しができる、劇団はそこがいいかな。舞台はお客さんにみていただかなければ完成しないわけですから。農家もそうですよね。消費者に食べてもらわなければいけませんでしょう。 坂田 どうもありがとうございました。 インタビューを終えて 樫山さんの趣味は観劇。歌舞伎座などにはよく行く。小説でも自分の舞台に関連付けて読む。仕事人間なのだろう。犬を連れて武蔵野の面影の残る道を散歩する時、土が見えると気持ちが落ち着くという。日本農業がんばって下さいと熱いメッセージを送ってくれた。(坂田) |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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