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第46回JA全国女性大会特集 農と共生の時代をわたしたちの手で
トップインタビュー
 
農と共生の世紀づくりは
女性のあふれでるような力で


JA全中副会長 加藤 源蔵
インタビュアー 
(株)農林中金総研 基礎研究部副主任研究員
 根岸 久子
 JA全中の加藤源蔵副会長は「21世紀は女性の出番」と男女共同参画の開花に大きく期待をかけ、全中の「地域・人づくり推進中央本部長」として参画へのアクセスなどを熱っぽく語った。インタビュアーの根岸久子氏(農中中金総合研究所)は「共生」のあり方などについて多角的に質問。これに答えて加藤副会長は「女性の経済的地位を高めること」などを具体的事例を挙げて強調した。

農と共生の世紀は実力と意欲ある女性の手で

 根岸 昨年のJA全国大会決議は『「農」と「共生」の世紀づくり』を基本方針としていますが、その意図するものが何なのか、そしてその中でのJA女性部の役割や期待についてまずおうかがいしたいと思います。

 加藤 新年早々、韓国にいきましたが、韓国の女性部は50歳までなんですよ。正副会長は40代前半の人でした。ところが、日本では70代以上のリーダーがたくさんいますし、実際に農業をやっていない人が役員になっています。これでは本当の女性部運動にならないんじゃないかと思いました。
 私はJA東京中央会会長なので東京の自慢をさせていただくと、伊豆諸島の各島にはみな女性のJA理事がいます。また各生産部会長も全部女性です。男が出稼ぎにいっちゃっていないという事情もありますが。

(かとう げんぞう)大正15年東京都生まれ。日本大学法文学部卒業。昭和38年練馬農協組合長、41年東京都農協中央会理事、44年東京都農協中央会会長、53年全国農協中央会理事、平成8年全国農協中央会副会長に就任。

 根岸 そうした行動力のある女性部づくりと農業やJA運営への女性参画が「共生」の具体的な中身になるわけですね。

 加藤 女性参画といったって、JAがやらないことには言葉倒れですよ。まずJAです。JA役員の定数を決める時に男性と女性を分けるのは失礼だとは思うけど、現状ではトップ層が自ら「女性を一人くらい理事にしたらどうだろう」などといった提案をしていかないとね。
 私はこう思います。中国と朝鮮半島と日本は儒教の国だから、男尊女卑が底流にある。ところが中国だけは革命で地球は男と女が両方で支えるんだということになり、問題なく男女共同参画になりました。

 しかし朝鮮半島と日本列島はなかなか持ち上がらない。やっと国際会議で共同参画が決まって、そこが第一歩ですよね。これからはJAでも農業委員会でも町内会やPTAなどすべて女性を主体で動いていくようにしなければ成り立ちません。
 ましてや日本の農業は女性が6割ですから、JAは女性の意見を聞かないとうまくいきませんよ。

 根岸 農と共生の世紀づくりは女性の手でということになりますか。

 加藤 そうですよ。農業は女性が担っているのですから。

 根岸 しかしJAはずっと男性主導型の組織できたわけだから、女性の参画にはトップ層の大変な意識改革が必要になると思います。

 加藤 女性も実力をつけなきゃだめです。例えば孫が小学校でパソコンやっているでしょ。おばあさんが「何だ、これは」などといっていてはリーダーになれませんよ。
 JAもすべてコンピューターです。自分たちでパソコン教室なりを開かなきゃね。いろんな勉強を地道に進めることが基本ですよ。そうすれば理屈抜きで、リーダーになっちゃいます。

 根岸 最近はとくにフレッシュミズの中には実力も意欲もある女性たちがすごく多いように見受けられます。女性はすでに実力をつけていると思いますが。

総合的な力を身につけ 本気になった行動を

(ねぎし ひさこ)埼玉県生まれ。昭和51年から農林中央金庫調査部(現総研)で調査、研究。主な著書は「農産物自給運動」(お茶の水書房)、「農村女性起業」(家の光協会)等。日本農村生活学会理事、よこはま・ゆめ・ファーマー・アドバイザー(横浜市)等。

 加藤 また韓国の話で恐縮ですが、高齢社会に直面し、福祉厚生をどうするかということで韓国全国の農協の中に女性福祉課というのをつくりました。課長はすべて30、40代の女性です。それから今度は若い農業女性たちを「道」で結集し始めました。そこで政府も女性省をつくりました。

 根岸 女性施策の面でも日本の農協界は一歩遅れちゃっているんですね。

 加藤 日本でのもたもたは女性の側にもあるんです。やはり、もっと実力をつけなきゃ。

 根岸 昨年の大会では女性の理事や総代の数値目標が出ましたが、こうした参画のためのプロセスとして女性に力をつけさせる場をつくっていくという具体的な施策はありますか。

 加藤 JA東京中央会では、共生と改革と参画の3部会をつくって、参画では女性協の保戸塚節子会長を座長に専門委員会を設け、3年間で数値目標を実現するスケジュールをつくりました。全中でも全国の取り組み状況を4半期ごとに公表します。着実に進むと思います。

 根岸 一番大事なJA段階での具体化はどうでしようか。

 加藤 県中央会の専門委員会がしっかりすれば、そこに参加する委員はJAの中枢ですからJAもやらざるを得なくなります。問題は県中央会のリーダーシップです。

 根岸 JA組合長の意識はどうですか。抵抗感はありませんか。

 加藤 あんまりないようですよ。問題は地区です。理事なり総代なりを地区でどう選ぶか難しいですね。

 根岸 まずは地区段階で女性参画の必要性について理解が得られるように女性側からも行動しなくちゃいけないということでしょうか。

 加藤 今は地区で一生懸命やっている女性が、地区の主導権を握っていることが多い。だから女性が本気になってやる気になれば、そんなに難しいこっちゃないと思います。
 それから今、女性のJA組合長は鹿児島県にたった1人ですが、私は、5年たったら女性のJA組合長がかなり生まれてくるのではないかとみています。5年間にはJAの役員の改選が2回くらいありますから。

 しかし代表理事ともなれば責任が重いから、よほど勉強してもらわないとね。JA合併が進んで、これからのJA運動には高齢者福祉と資産管理が非常に重要になると思います。そうなると女性のリーダーでないと動かないですよ。ただ資産管理ではまだ女性の勉強が足りません。
 だから全中でも女性協の人に入ってもらって、その勉強会をやろうとしており、県中央会も動き始めています。今後は、まちづくりとか、いろんな勉強会にも出ていって総合的に力をつけないといけません。

 根岸 しかしトップ層など男性の理解と支援がないとなかなか出られないし、そうした情報すら届かないのが実情ではないでしょうか。

女性に仕事の責任を果たす保障としての報酬を

 加藤 女性部の場合、一番の問題はボランティア活動になっていることです。私たち男は報酬をいただいていますが、女性部活動はみなボランティアで無報酬です。やはり女性部活動を専門でやる役員たちには報酬を支払うべきです。

 根岸 それは女性部の位置づけ方にもかかわるものでいいご提言です。

 加藤 自分たちではいいにくいだろうから私がいいます。
 貯金の推進や購買のお手伝いとかを女性部に頼んでも、見返りは旅行程度しか考えてない。それはもう前世紀の協同組合の考え方です。
 今後は男性も女性も仕事の責任を果たす保障として報酬をきちんと出すべきです。だからJA東京中央会では女性協の正副会長が報酬審議会の委員になっています。

 根岸 女性部をJAの大事な組織だと位置づけ、そのためにはリーダーに報酬を支払って、きちんとした活動をやってもらうというわけですね。

 加藤 職員が出張すれば日当が出るのに、女性部幹部は電車賃と宿泊費だけといった差別はなくさなくてはいけません。男女共同参画を進めるのなら、まず、それをやるのがわれわれとJAの責任ですよ。

 根岸 そうした処遇の検討も含め女性部も職員も一緒にJAグループのメンバーとしてやっていくという一体感をつくっていくことは大切ですよね。そして報酬のある仕事となれば責任や能力が問われます。その中でパワーアップしながら女性部活動とJAの組織活動を活性化していけば女性部も質的に変わってきます。

 加藤 有能な人材が発掘しやすいように受け皿をつくらなくちゃ。

 根岸 有能であっても地区の中などにはまだ女性が発言や行動がしにくい風土がありますので、発言しやすい、行動しやすいという受け皿をJAは積極的につくってほしいですね。

 加藤 男性は気配りしていかなくちゃだめですね。

 根岸 こうした期待をうかがっているとJAグループもようやく女性の出番に気づきはじめたのかと思うのですが。

 加藤 だから出番の土台となる経済的な問題を早く改めなくちゃ。経済力を持つことですよ。伊豆七島の生産部会長は自分が財布を握っているから誰にも文句をいわせない。

女性部の活動が外部に伝わる仕組みづくりを

 根岸 女性部も今、「21世紀いきいきライフプラン」学習活動の中で自分の経済的地位を高める運動を始めています。女性のあふれ出るような力をJAが生かさないと、パワー発揮の場を求めてその力が外へ出ていってしまう。

 加藤 PTAとか民生委員なんかへ出ていきますね。宗教運動などに熱心な女性もいます。

 根岸 女性が活動しやすい組織風土づくりが大事です。暮らしに直結する食べ物、健康、高齢者福祉などに取り組むことができるJAは本来、女性にとって一番魅力のある組織であり、女性パワーを活かせる機能を持っているはずなのですから。今は変化する新しい時代に合わせた新しい器をつくらなくちゃいけない時だと思います。結局それができるか否かは女性参画がキーワードになるわけですね。

 加藤 「ママさん大学」が全県で始まったようですが、私はいいことだと思います。しかし事務局には男性が多い。女性のリーダーがいない。

 根岸 女性参画をすすめるには女性部だけでなく女性職員の登用もあわせ進めていかないと、なかなか前進しないということですね。韓国を見習わなくては。

 加藤 JA東京中央会では福祉課長のポストなどに女性をどんどん登用しています。そうすると、期待に応えてよく勉強していますよ。

 根岸 それから女性部は様々な活動をしていますが、意外と外部には知られていません。消費者などとの共生に向け、もっと外部に向けて発信、連携するといいと思います。

 加藤 生協の人たちとかね。東京都の緑化委員会にJA女性協から委員が出るようになり、全国植樹祭にも参加しています。このため緑の羽根募金もたくさん集まるようになりました。だから女性委員が活躍を始めてからは「すごいね」と評価が高まっています。

 根岸 女性の活動が外に伝わる仕組みをつくるといいですね。全中や全農の役員がNHKテレビのシンポジウムなどにパネラーで出られますが、実際に農業をしている女性代表を出したほうが農業の現実も伝わるし「農家の女性って元気だな」といったイメージアップになりませんか。

男女共同参画には共に本腰を入れて大いに勉強を

 加藤 JA静岡女性協の「ことことこっとん・あったかキャンペーン〜綿を咲かせて〜愛を紡いで」の活動なんかもね。県下のお年寄りにちゃんちゃんこを贈ったなんて、その努力とエネルギーはすごいですね。そういう女性部の代表がテレビに出るといいでしょうね。

 根岸 最後に女性協結成50周年という節目を迎えた今年の女性大会開催にあたって、これからの女性部に期待されることをお聞かせ下さい。激励の言葉も添えて下さい。

 加藤 もう、かなりしゃべりましたよ。大いに勉強しましょうということでしょうか。しかし50周年、よく、ここまできましたね。かなり進んできましたよ。もう大丈夫です。足がかりはできました。それぞれの女性組織が、ここまでやってきましたよと自分のところの実績をきちんとまとめることです。世界中どこでも男女共同参画には本腰が入っていますよ。担当の私としては実践あるのみです。いくら演説しても実践しなければ誰もついてきませんから。農協運動はそれが基本です。

 根岸 具体的な行動の実践が自己変革とともに現状打開の一歩になるわけですね。

 加藤 それをするにはやはり経済的な裏づけをきちんとすることが基本になります。それをわれわれが提供しなきゃいけないと思います。

 根岸 きょうはいろいろお話いただきありがとうございました。


インタビューを終えて
 第22回JA全国大会では、平成15年度末までに達成する数値目標を掲げ、JA運営への女性参画の促進を決議した。そこで、「農」と「共生」の世紀づくりにおける女性への期待等をうかがうこととしたのであるが、インタビューの本番に入る前からさっそく女性部の話をされ、その期待の大きさを実感させられた。
 女性部の活動に実にお詳しい。きっと、頼まれて「挨拶だけして帰る」という方ではなく、女性部の方たちとざっくばらんにお話をされておられるのだろう。だから女性たちの活動や力の大きさをご存じで、女性部活動への理解もそこから生まれているのであろう。
 そしてまた、期待しているだけに女性部のあり方や女性への注文もお持ちである。しかもいずれも的を射ている。こうした良き理解者のアドバイスを受け止め、自己変革していくことが今、女性部に必要とされているのである。
 副会長は「女性参画の推進はJAトップが率先垂範」と語っておられるものの、現実にはなかなか困難が予想されるので、今後はトップ層を対象としたジェンダー学習を開催する等、男女共同参画型組織づくりに向けて一層のリーダーシップを期待したい。(根岸)

 


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