地域農業の振興と消費者理解に重点
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大会には1000人が参加。写真は
JA青年の主張と青年組織活動実績の発表者たち |
JAの青年組織は、平成12年5月現在、46都道府県で組織され総数815を数える。全盟友数は、約9万人である。
全国組織のJA全青協(全国農協青年組織協議会、若林英毅会長)が行った青年部の活動実態調査(12年)によると最近の活動には、変化が生まれてきているのが分かる。
同調査で活動の上位を占めたのが、「収穫祭等のイベント開催」(45.8%、複数回答あり)、「営農技術等に関する学習活動」(33.9%)、「スポーツ大会」(39.1%)である。
かつての青年部では、農政活動が中心だったが、今回の調査では「農政課題の学習活動」(13.7%)、「市町村・県に対する農政運動」(5.4%)と位置づけが低く、消費者の理解を得るための活動や青年部員同士の交流を図ろうとする活動に重点を置く傾向にあるようだ。
新基本法農政が掲げる自給率向上を進めるにあたっても、青年部が重視している活動は「消費者に対する国産農産物の消費拡大キャンペーンの実施」がもっとも多く48.8%を占めている。
同時に自給率向上に向けた青年部としての課題としては、「地域農業の担い手の確保・育成」(61.1%)と「経営安定対策の充実」(43.8%)を重視している。
なかでも、担い手の育成を進めるために必要なこととして同調査結果では、「生産資材の低コスト化と大口利用による価格設定」(41.1%)、「多様な流通チャネルに対応する販売体制」(28.6%)、「農地の有効利用と連担化」(26.4%)などとなっている。これらの意向はJAグループ事業の今後の改革に対する期待でもあるが、今回の調査に寄せられた提案には「全国的な生産者の組織である青壮年部独自の大規模販売ルートの開発や、一括購入による農業資材の価格引き下げの方法をさぐってはどうか」という声もある。
組織活性化とJAへの参画が課題
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「俺たちが時代を変える」と
決意も新たにガンバロー三唱 |
こうした課題を解決するためにも、組織の活性化とJAへの経営参画が大切になる。
組織の活性化のため新規就農者への加入促進活動には81%の組織が取り組んでおり、55%の組織が効果があると回答している。活動は、青年部役員による巡回訪問やUターン就農者への加入促進などが中心だが、JA全青協では「時間のかかる取り組みだが継続して行うことが組織活性化につながる」と分析している。
JA経営への参画については、青年部とJAとの定期的な話し合いの機会は、全体の60.5%の組織で実施している。ただし、その回数の平均は年1.7回程度と少ない。そのため、青年部の意向のJA経営の反映については「あまり反映されているとはいえない」が56.3%で「反映されている」は33.7%にとどまっている。意見交換は、JA経営への参画の第一歩となることから、まずはそれぞれの現場で話し合いの機会を増やすことが課題となる。
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EU青年農業者組織協議会(CEJA)のダリサック会長。「公正な貿易が人類の平和につながる」と強調
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今年の大会には、フランスの青年農業者代表も出席。フランス青年農業者組織協議会(CNJA)のデュバル会長は、「農業は高貴な職業。私たちは人間の命を支えている。だが、現実は価格破壊が進行。それでは農業は破滅する。農産物の価格の維持が大切」などと語った。
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また、青年部役員でJAの理事に就任している割合は、今回の調査では16.3%と前回(平成7年)調査の23.9%から7.6%も減少した。青年部役員が理事になっているJAをみると、全理事のうち青年部理事の割合は10.2%となっているが、JA経営への意思反映については「反映されている」との回答は32.1%。JA全青協では、この結果について「青年部から理事に就任しても担い手のためのJA改革の実践には現実に距離がありそうだ」と分析している。
また、理事就任については、「自己の経営への影響が大きい」(27.4%)、「青年部自身が消極的」(31.0%)などの課題があることも明らかになった。
昨年のJA全国大会決議では、「担い手のJA運営への参画」が掲げられているが、農業経営への影響など青年部役員の負担も大きい。
JA全青協では、JA全国大会議案に向けて、JA段階での「経営管理委員会」制度の導入を求めたが、今回の調査結果からも、経営の執行と監視を分離する同制度の導入は、担い手がJA経営に参画するうえでの現実的な手法として「検討に値する」とJA全青協ではみている。
政策提言に力入れるJA全青協
一方で、9万人の盟友たちの全国組織であるJA全青協は、組織活性化のためホームページによる情報提供や各種学習会に力を入れている。
また、平成10年度から全国統一キャンペーン「子どもたちの未来へ」を展開し、11年度からは全国消費者大会に参加、分科会の運営団体のひとつとして企画・運営にもあたっている。また、学童農園の促進の取り組みもJA全青協としての
大きなテーマとしている。
さらに、最近のJA全青協の活動で大きく変わったのが、専門部会の設置と政策提言の重視である。それぞれの専門部会の委員には各都道府県の委員長が所属している。
専門部会は11年度に初めて設置が決まったもの。今年度も「土地利用型営農部会」、「地域振興部会」、「環境部会」、「国際部会」の4つを設置し、米政策や中山間地政策、WTO農業交渉などをテーマに農水省、JAグループとの意見交換を行い、政策提言を行っている。
12年度はWTOについて盟友の理解を深めるため、国際部会が議論して、まんがを活用した入門書作成しホームページに掲載するなど(「ゴリパパ一家と学ぶ早わかりWTO入門」)の活動も実現させた。また、「日本提案」(別掲記事参照)を政府がまとめるにあたっては、JA全青協として組織協議を行い、ミニマム・アクセス米の削減や農産物についてセーフガード自動発動の仕組みをつくることなどの提言をJA全中に提出した。
そのほか、新たな経営所得安定対策が検討されはじめたことに合わせ、今年1月には専門部会のほかに「経営所得安定対策プロジェクト」も設置するなど、国内の農政問題に機動的に対応する体制づくりをしている一方、国際的にも世界青年農業者大会、一昨年のWTOシアトル閣僚会議への出席などを通じて、EUなどの青年農業者組織との連携を深めてきた。今年の大会には、EUとフランス青年農業者の代表がJA全青協の招きで来日した。
大会宣言では、「世界各国の農業がともに発展していくことが重要であること」を国際的な連携で確信できていると強調、そして「盟友一人ひとりが地域の担い手としての使命を改めて認識し「俺たちが時代を変える」という意欲のもと」に青年部運動の活性を誓った。青年らしい感覚で、国際的な連携、国内消費者への農業理解促進など幅広い活動が期待される。
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