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特集 農業再建・地域営農確立と大規模専業農家のために活動する
JA全農生産資材事業の挑戦

資材・技術を含めて総合的に事業を展開
JA全農生産資材部 部長
 藤野 瀛 

◆面的対応を求められる時代に

−−1月の機構改革で、肥料農薬を除く生産資材関連部署が一つになりましたがこの意義はなんでしょうか。

 藤野 段ボール、ハウス、農機、施設と幅広い対応が出来る体制になりました。
 生産資材の取扱い体制について、JAでは生産資材担当とか指示担当と呼ばれて、品目別にバラバラに対応する体制ではありません。県連・県本部では、例えば、園芸部の園芸資材課と呼ぶように、青果物の販売の部の中に、段ボールやハウスを扱う課があることが多いんです。
 全農は、これまでも、また、これからも仕入れを専門的に担当していくことになると考えています。しかし、農家と農協の間では、一つ一つの資材を仕入れたり供給したりするのではなく、農機もビニールもと、幅広く相談したり提案したりしていること、つまり、推進を意識した提案をしたい。つまり、品目個々の仕入れはもちろん頑張るんですが、”資材のトータル対応”が狙いの一つということになります。

 園芸農家にビニール・パイプと栽培システムを供給する、農協に選果場を導入しその選果場に段ボールを配送する、それを関連づけて対応したい。安心システムもその一つと考えています。場面によっては、販売につながる資材の供給、県本部による青果物集荷と園芸資材供給のセット、総合力の発揮をというニーズにも応えていくことと認識しています。
 また、今回の機構改革では、営農総合対策部、肥料農薬部、生産資材部が、営農・生産資材事業本部となりました。これも、技術・相談と肥料農薬・生産資材を、トータルで対応しようとするものと理解しています。
 こうした機構改革は、会全体のテーマであるリストラの一環でもあります。が、合理化の中で効率化、機能アップを目指していくものと考えています。

◆計画から実行段階へ−−廃プラ対策 廃プラの適正処理の考え方

−−「環境と調和した農業における生産コスト低減運動」がこの4月からスタートします。環境との関係では廃プラ問題がありますが、これについては・・・。

 藤野 以前から「廃棄物適正処理対策」については、JAグループとして各地域の廃プラ適正処理推進協議会や行政と連携して、農家が事業者としての責任を果たせるような仕組み作りに取り組んできています。
 また、園芸資材課が「農ビ・農ポリ等再生処理研究会」を設けて、技術的な問題や再生処理施設の運営の仕方などについて検討を進めてきています。近いうちにその成果を発表できるかと考えています。やるべきことは明確になってきているので、計画の段階から実効の段階に移ってきていると考えています。
 廃棄物を出さないということでは、生分解性マルチの選定と普及、長期展張が可能な被覆資材の普及もこれから重要になってくると考えています。

◆合理化効果が高い広域部品センター

−−この運動でもそうですが、全農の「中期事業構想(原案)」でも、生産コスト低減が大きな柱になっていますが、各品目別の課題についてお聞かせください。まず、農業機械から・・・。

 藤野 コスト低減はいつの時代でも追求していかなければいけない課題だといえます。「中期事業構想」では、到達すべき目標数値をあげて分かりやすい「行動計画」を示しています。
 HELP農機で残されている課題は、専業農家向けの大型機械と野菜用の機械のメニューがまだ少し不足していることです。通常の機械については大体揃っていると考えています。

−−農機では、山陰で広域部品センターがスタートしていますが、今後の展開についてはどうですか。

 藤野 広域部品センターをつくることで、「部品があるか」という問い合わせに、「あります」といえる即納率がいままで50%だとすれば75%まで高めることができます。また、EOS(Electronic Ordering System:電子受発注システム)で注文を受けますから、誤発注を減らすことができます。山陰では、こうした合理化メリットが出て、センターの経営は自立に近づいています。
 いままで、県連・県本部と3回の研究会を開き、広域部品センターは重要なテーマだとの確認がされました。現在、いくつかの地域で研究会をつくり検討を進めています。合理化の効果が一番ハッキリでることですので、早い時期に実現したいと考えています。

◆40%超えた茶色箱化に  さらなる施設の開発に

−−段ボールの茶色箱化についてはどうですか。

 藤野 おかげさまで段ボールの利用率は、全国段階で50%という高い水準にあります。しかし、業界はメーカーの再編が進んでいて、段ボール原紙は大手3社で75%のシェアで、まさに寡占化が進められています。
 茶色箱は、そうした業界に対抗するための需要の結集と7.8%のコスト削減を目指して取り組んでまいりました。今、ほとんどの県で取り組まれています。メロン・イチゴ・花などでの取り組みが、鈍いということはありますが、全農が取り扱う10億ケースの40%が茶色箱といえるところまで来ました。茶色箱と合わせて、より低価格な原紙の開発に取り組まねばいけないと考えています。また、組み立てが容易な箱など包装の省力化の検討を進めています。

−−農業施設については。

 藤野 選別・包装や乾燥・調製の機械化がなくて、農業が継続できたかと言うと、答えは、ノーだと思います。つまり、選果場やカントリーエレベーターは、今日の農業にとって無くてはならないものになっていると考えています。ねらいは、施設で共同作業すること、米、トマト、ミカンを大量に処理する。大量処理することでコストを下げるのが、農業施設の役割と思います。そう考えると農業施設は、まだまだ導入されて良い、もっと国庫補助があって良いと考えています。適正導入について連合会のノウハウの出番があると理解しています。
 少し観点が違いますが、合併JAでは、台帳管理すべき施設が多くなります。私たちが開発したJAーSKSは、そうした農協の固定資産を管理する台帳システムです。数農協で導入されていますが、この普及も力を入れたいと考えます。

◆20kg袋でさらにコスト低減 −−米袋
   一度は検討してもらいたいJAグリーン

−−米袋については。

 藤野 需要が毎年減っていますが、コストは少しづつ下がっています。また、ここ3年間20kg袋の実証試験を行ってきましたが、問題はないという結果がでています。これが実用化されれば、袋が小さくなってしかも作業の軽減につながると考えています。

−−JAグリーンについてはどう考えていますか。

 藤野 当初は農業資材店との競合からこの事業は始まりました。しかし、いまは日本中どこにでもあるホームセンターとの競合が、JAにとって大きな問題となっています。そして、JA合併が進み支所購買店舗をどうするかという問題も大きな課題となっています。そうした意味から、実際にやる・やらないは、別ですが、JAとして1回は検討してみる価値のある事業だと思います。
 オーダーメイドではなく、地域の実状に合わせて、花が中心だったり、朝どり野菜をメインにしたり、地域住民を対象にしても、農家を対象にしてもいいわけです。全農は基本的なことは提案できますので、あとは地域で特色ある店にしていくことができれば失敗するはずがないと思っています。

−−農住事業については。

 藤野 大都市圏の市街化区域内農地の都市的活用をはかり、組合員の資産保全を目的とした事業ですが、一方で、都市住民に快適な住環境を提供するという社会的意義のある事業と思っています。
 賃貸住宅の過剰感の中で、事業は低迷していますが、これからも需要は爬行・減少するわけですので、地域にふさわしい連合会の取り扱い体制をシフトすることを検討する必要があると思います。

◆それぞれの仕事が経営的に自立できるよう

−−最後に今後の抱負を一言お願いします。

 藤野 農業機械も農業施設も、作業を効率化・省力化して、コストを低減する無くてはならない商品です。段ボールは、大きな需要を背景に、明らかに良い条件で届けられています。こうした良い商品を供給することを通じて、農家が再生産できる経営を支援したい、そして、申し上げた各品目の経営が、自立できるようでありたいと考えています。  


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