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特集 農業再建・地域営農確立と大規模専業農家のために活動する
JA全農生産資材事業の挑戦

多彩な購買対策や物流改革でコストを低減
JA全農肥料農薬部 部長
 松永 公平 

◆着実に伸展するアラジンや粒状ようりん

−−13年度からの全農の「中期事業構想(原案)」が提案されましたが、肥料農薬部の重点施策はなんでしょうか。

 松永 総括的にいえば、27都府県との統合が実現し新全農がスタートしますから、統合によるさらなる需要結集を背景に、一層の購買力強化をはかり、生産コストの低減に貢献することが最大の課題だと考えています。また、同時に、地域実態に応じた弾力的な価格・供給条件の設定によって、競争力ある価格の実現を図っていきます。

−−品目別にお聞きしたいと思いますが、肥料については・・・。

 松永 アラジン、中国粒状ヨウリンやBB肥料などいままで推進してきた低コスト肥料の普及率向上をはかることだと考えています。
 アラジンは平成9年9月から供給を行っていますが、10肥料年度6万t、11肥料年度8万dで普及率(国内化成肥料に占めるシェア)7%、12肥料年度はまだ途中ですが10万6000t、普及率8%が見込まれています。肥料の全体需要が減少している中で着実に伸びてきているといえます。ただ、普及率でみると県間格差があるので、1県あたり最低でも2000t程度の取扱いをめざし、17年度には全国ベースでの普及率を10%程度まで高めたいと思っています。

 粒状ようりんは、良質な燐鉱石の埋蔵量が豊富で、製造コストが安い中国に、日本の技術で造粒工場を設置し、安価で良品質な製品を供給しています。9年5月に生産能力2万tの工場が完成し、10肥料年度2805tから11肥料年度には6093tと217%も供給量が伸びています。
 さらに粒状有機肥料も中国からの開発輸入をすすめており、10肥料年度の5666tから11肥料年度には8003tと141%も伸びています。

◆直接購買、共同開発などで農薬価格を引き下げ

−−農薬はどうですか。

 松永 8農薬年度から除草剤ラウンドアップ(モンサント)の直接購買を始め、大幅な価格引き下げを実現しましたが、12年度からはゼネカの除草剤プリグロックスLを、そして12年10月からはノバルティス社との直接購買を開始しています。直接購買品の取扱い拡大によって、流通の合理化に積極的に対応していきたいと思います。
 海外原体メーカーと共同開発すすめてきた高活性ヒエ剤成分・オキサジクロメホン(MY-100)は、昨年、農薬登録を取得しました。この混合剤を積極的に推進し、水稲除草剤分野での低コスト・省力化を進めていきます。
 また、園芸殺菌剤ペンコゼブに続く特許切れ品(ジェネリック農薬)として園芸殺虫剤ジェイエースの開発に取組んでいます。今後もジェネリックへの取組みを強化して、価格水準の引き下げをはかっていきたいと思います。

−−新全農としての事業推進体制として考えておられることは何でしょうか。

 松永 新全農の事業競争力の一層の強化ということで、さまざまな取り組みをしていますが、なかでも、新しい全農としての技術普及体制を整備して、JA品目部会など生産者組織に対する推進に力を入れていきたいと考えています。

◆物流合理化は最大の重点課題

−−昨年のJA全国大会や今回の「中期構想」で、物流問題がかなり大きく取り上げられていますが・・・

 松永 物流の合理化、流通コストの低減は、13年度以降の最重点課題として位置づけています。部内に専任の「物流対策チーム」を発足させました。JA、県連、県本部・支所と連携して、「農家配送拠点」の集約・再編に積極的に取組んでいきます。

−−具体的には、どのような考え方で進めるのですか。

 松永 JAの資材倉庫はほとんどが小規模で分散設置されています。そのため、配送経費、保管経費、在庫金利などがかさみ、JAの経営を圧迫しています。こうした非効率的なJA資材倉庫を集約・再編し農家配送拠点とすることで、物流コストを削減しようというものです。それによって生じるメリットを組合員へ還元したり、経済渉外担当の設置などのサービス向上が図れます。

 農家配送拠点の整備にあたっては、「JA運営型」を基本としますが、県ごとの物流事情やJA合併の進展などを考慮して、JA単独では合理化が進まない地域では県連などの拠点から直接農家へ配送する「県域受託型」による整備を行います。また、県域を超える物流合理化に取り組む観点から、隣接県との調整も行います。

◆組合員の理解を得られる配送サービス水準を明確に

−−そのときの設置基準はあるのでしょうか。

 松永 目安としては、配送サービス水準を維持しながら輸送経路の短縮が可能な拠点の適正規模として、@正組合員戸数約1万戸、A年間の肥料取扱量1万t以上、B輸送の範囲を半径20〜30km圏内と考えています。そして、既存倉庫の活用を基本に、荷役・保管・配送などの物流業務の外部委託などによってコスト削減を図りたいと思います。
 さらに、農家配送拠点における在庫の圧縮、業務・事務の合理化を支援するために「広域物流拠点システム」を開発し、13年度から普及していく予定です。

−−JAの資材倉庫は1万くらいあるといわれ、それを300に集約しようという構想のようですが、大変な仕事ですね。

 松永 そうですね。まず、JAの役員方たちにこの主旨と必要性を理解していただき、決断していただくことだと思います。そして、組合員に理解していただき、納得してもらわなければなりません。身近にある倉庫がなくなり不便になると思われる方もいると思いますから、農家が注文をしてどれくらいで届けられるのかなど配送サービスの水準を明確にして、それを維持していくことが大事だと思います。すでに、拠点の集約・再編をしているJAもありますから、そうしたJAの経験も活かして、取り組んでいきたいと考えています。

◆環境との調和にも積極的に取り組む

−−「環境との調和」ということが、生産コス ト低減とともに、これからの大きな柱とされていますが・・・。

 松永 肥料農薬部では、従来から「健康な土づくりと施肥改善運動」や「安全防除運動」を進めてきています。今回の新たな運動の中でも、こうしたものを継続・発展させ、持続的な農業生産の普及と定着をはかっていきます。また「診作くん2000」「施肥名人」などを活用した適正施肥の推進や被覆肥料など、環境に優しい肥料や施肥技術の普及拡大にもつとめていきます。
 この1月30日には、系統一元品目で低コストなフェロモン剤が農薬登録を取得しました。こういった品目への取組みを通じて、環境対応型防除体系の普及推進も拡大できると考えています。 また、2005年に全廃される臭化メチル代替対策の確立と普及にも積極的に取り組みます。(談)


大規模農家の低コスト化に貢献する農薬の大型規格を続々と投入

◆ラウンドアップハイロード大型規格で出荷量の約50%--さらに20Lを投入

 輸入農産物の増大などによって、国内農産物価格が長期に低迷するなか、生産コストの低減は日本の農業にとって大きな課題となっている。そうしたときにJA全農は、日本農業の中核的な担い手である大規模農家向けに割安価格で提供する農薬の「系統独自の大型規格」をこの2月から発売することにした。
 大型規格としてはラウンドアップハイロードで、当初の500ml規格に対して2L、5L規格を出し、規格によって500ml(基準)規格よりも10〜30%価格を割安にしてきた。その結果、ラウンドアップハイロードの系統出荷量に占める2Lの割合は、平成12農薬年度で38%、5Lで11%と大型規格だけで50%近くに達した。
 さらに13年度にはさらに割安な20L規格を3月上旬から出荷する予定で、前評判もかなり高いようだ。

◆園芸・畑作除草剤3剤で大型規格

 このラウンドアップハイロードに次いで、全農が今シーズンから投入する大型規格は、園芸・畑作除草剤のバスタ、プリグロックスL、ゴーゴーサン乳剤・細粒剤の3剤・4アイテム。いずれも2月から4月にかけて出荷される予定だ。
 バスタは現行の500ml規格に2.2L規格を投入。価格は500mlの約4倍だが、量的には500mlの4倍よりも0.2L(10%)多くなっている。今後こうした柔軟な大型規格ニーズを模索していくための試験的な意味合いもあってこうした規格にしたという。発売予定は2月中旬。
 プリグロックスLは、従来の1L規格に対して5L規格を出し、価格は1割弱程度安くする。発売予定は2月上旬から。
 ゴーゴーサンは、乳剤が500mlを基準に、2L、細粒剤は3kgを基準に10kg規格を投入し、価格的にはともに5%程度安くなる見込みだ。発売予定は、細粒剤が2月上旬、乳剤は4月上旬。

 この3剤には、茎や葉を総合的に枯らす意味からバスタには「クサッカラス」、即効性のあるプリグロックスLは「ハヤッカラス」、そして根元からじっくり攻めるゴーゴーサンは「メッカラス」というそれぞれのそれぞれの特徴を示したキャラクターを用意し、「カラス3兄弟」としPRしていく作戦もある。
 この3剤を大型規格として取り組んだ理由について、山内元二肥料農薬部次長は「需要が大きいことと、3剤がそれぞれ効果が高いこと。そしてメーカーがいずれも全農との関係強化を指向していることなどから、私どもとしても取り組みやすかった」ことをあげている。そして、今回3剤を一斉に発売することで「少しでも低コスト化に寄与していきたいし、系統独自の規格によって、JAグループから農薬を購入していただく流れをつくっていきたい」とも。

◆MY-100混合剤・トレディ顆粒400g規格では全農からの直送方式も  

 全農が昨年農薬登録を取得したオキサジクロメホン(MY-100)混合剤のトレディ顆粒でも、大型規格を発売する。水稲除草剤の場合には各種剤型が豊富に揃っているが、トレディ顆粒は10aあたりわずか40gのスティックすんでしまう。
 今回3月出荷を予定されている規格は、1haを対象とした400g規格で、大規模農家向けに約20%安をめざしている。さらに、このトレディ顆粒400g規格の場合、10袋(1箱)を単位(10haに対応)に、要望があれば農家へ直送するという新しい取り組みを行うことにした。
 つまり、JA・県連・県本部で予約をとりまとめて、予約受注生産を行い、全農から農家へ直接配送するもので、配送経費も安くなる。前述したラウンドアップハイロード20L規格でも、要望があれば直送を行うことにしている。


 今後も大型規格については取り組んでいく予定だが、当面は面積的にもしっかり把握できている水稲除草剤から取り組みたいと考えている。
 また、低コスト化ということで積極的に特許切れ農薬(ジェネリック品)の開発に取り組んでおり、すでにマンゼブ剤のジェネリック品「ペンコゼブ」をだしているが、対象作物・適用害虫の幅が広い国内最大の園芸殺虫剤としてアセフェートのジェネリック品「ジェイエース」を市場に送り込む予定で、現在、登録の促進中だ。
 さらに、環境に優しい防除体系を推進するために、フェロモン剤の開発にも力を入れているが、1月30日に系統独自のフェロモン剤「ハマキコンN」が、系統フェロモン剤として初めての農薬登録を取得した。
 ハマキコンNは、従来品のハマキコンLよりも10aあたり約20%価格が安いだけではなく、10aの使用本数が半分ですむため、価格と手間(労力)の相乗効果が期待できることも大きな魅力だといえる。全農としては、今後も何剤か現行剤よりも低コストな剤を出していきたと考えている。  


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