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特集 農業再建・地域営農確立と大規模専業農家のために活動する
JA全農生産資材事業の挑戦

地域農業振興のため、最新情報や技術を提供
営農総合対策部長
 清水正 

◆生産資材事業間の連携強化

−−今年1月の機構改革にともなって、営農・生産資材事業本部を創設し、従来の営農・技術センターが再編され営農総合対策部(営総対部)となりましたが、その背景と営総対部が今後どのような役割を果たしていくのかからお話ください。

 清水 今年3月に27都府県との統合が実現し、さらに来年4月には第3次統合が予定されているように、本格的な統合連合・新全農がスタートします。いま、全農では統合効果を速やかに発揮できる体制の整備、事業環境の変化に迅速に対応できる戦略・施策をということで、5年後を見通した「中期事業構想」を策定しようとしています。
 この「構想」における新全農の役割・使命の柱は、@地域農業の振興、A販売力・商品開発力の強化、B生産資材コストの低減、C安心・快適な地域社会の創造、DJAグループ経済事業の再構築と収支の確立の5つです。耕種部門の営農・生産資材関連事業としては、その内の地域農業の振興と生産資材コストの低減という課題に対応するために、肥料農薬部、生産資材部と営総対部の3部からなる営農・生産資材事業本部で、購買力の強化と専門性の発揮を追及していこうとしているわけです。
 そのなかで、営総対部の役割は、生産資材各部門間の連携をはかり、地域農業振興のための最新情報や技術の提供を強化すること。そして、新設した担い手対応室による大規模農家や生産法人など地域農業の担い手への対応を強化することです。

◆販売と連動した企画提案・生産指導できる人材育成

−−もう少し具体的にいうとどういう内容ですか。

 清水 一言でいえば、人材の育成と情報発信ということです。  昨年のJA全国大会決議の中で、JAの営農指導は、技術指導に重点化したものだけではなく、マーケティングも視野に入れて農産物を作る必要があるとしています。そうした、販売事業と連動した企画提案、生産指導ができて、そのために必要な技術・情報ノウハウをもったJAの生産販売企画専任者をJA全中とも連携して育成いくことです。
 すでに園芸の主産地では「作れば売れる」ではなく、どうやってマーケティングにもとづいた作物なり品種を作るかという取組みがされているところがあります。そういう優良先進事例を収集し、その内容を情報発信していくことも重要な役割です。このことは、いままでも行ってきていますが、これからの新全農ではいままで以上に外からも分かりやすく進めていこうということです。
 そういう意味では、アピネス/アグリインフォの営農・技術情報の内容充実も大事なことですし、営農技術者ネットワークの構築による営農相談体制の強化にも取組んでいきます。

−−販売部門とも連携していくわけですか。

 清水 大消費地販売推進部が窓口となって「全農安心システム」を進めていますが、そこでの栽培履歴とか記帳の問題のような現場の指導など、検査検証業務への技術的な支援に取り組みます。また、検査員養成講習会への講師派遣などを通じて、販売を支援する取組みをすすめます。

◆「新運動」で事業本部の総合性発揮の核に

−−「環境に調和した農業における生産コスト低減運動」をこの4月から3か年取組むことを提案していますが、この運動での営総対部の役割はなんですか。

 清水 JAグループでは従来から、土づくり運動や安全防除運動、廃棄物適正処理対策などの環境と調和した農業に取組んできています。また、HELP農機や肥料のアラジンなどによる生産資材費用の低減にも取組んできました。その結果、一部のJAや県連では、生産コスト低減と環境に調和した農業を両立する取組みが始まっています。
 JAグループは、農業の持続的な発展のために、国民に対しては環境と調和した農業を進めていることをPRし、農業者には生産コスト低減と環境に調和した農業の実践をさらにすすめるために、
@地域別に「作物別コスト低減モデル」の作成・実証と普及を進める地域レベルの実践運動とする、
Aこのモデル作成にあたっては、生産資材を中心とした費用低減から「生産コスト全体の低減」に対象範囲を拡大する、
B資材・機械などの選定にあたっては、可能な限り「環境との調和」を志向する、
という新たな考え方をとりいれて従来の運動を再構築し、この新運動を提案しています。
 この運動は、JAが地域の営農の現状を分析して、環境と調和するための課題や費用低減資材・省力機械・技術、合わせて地域の試算モデルを作り、実践してもらうものです。連合会は、そのためのモデルづくりや取組み手法の手引きなどを提供し、支援していくわけですが、営総対部が核となって営農・生産資材事業本部の総合性を発揮できるようにしていくのが役割だと考えています。

◆環境と調和した農業の確立をめざして

−−研究部門(平塚)の役割も大きいですね。

 清水 一つは環境と調和した農業をめざす資材・技術面での支援です。  それは、
@作付体系、栽培体系、品種など総合技術の普及、
A健康な土づくりと施肥改善運動の展開や、診作くん2000や施肥名人のなど「土づくりの推進と効率的施肥技術の確立と普及」、
B安全防除運動の展開、残留農薬分析の実施、簡易分析手法の検討など「農薬の適正使用の推進」、
C臭化メチル代替剤の普及、フェロモン剤の活用、総合的防除の検討など「総合的病害虫・雑草管理技術の検討・普及」、
D生分解性マルチ・長期展張被覆資材の選定、低燃費・軽量農機の開発要請など「環境への負荷を軽減する資材・機械の普及」です。
 そして、アピネス/アグリインフォによる総合営農情報の提供と営農技術相談の実施やISO14001認証取得の支援など「役立つ資材・技術情報の提供と相談対応の実施」や、JAモデル作成のための手引きの作成などを行います。

−−「費用低減」から「生産コスト低減」と変わりましたが…。

 清水 モデルの作成にあたっては、「環境」および「コスト低減」場面での効果、資材の使用量や労働時間、 廃棄費用を含む生産コスト、収量を構成要素としてコスト低減率を明らかにすることが必要です。そして個人個人 がバラバラに行うのではなく、地域全体で取り組むことで農家に実感してもらおうということで、単に資材費の低 減だけではなく「コスト低減」としたわけです。JAが主体となって、可能な目標を設定して実践できるよう、 今後、具体的な提案をしていきます。(談)


大規模農家・生産法人のJA利用率向上をめざして
担い手対応室の活動

◆事業につながる推進活動を強化

 最近の農業政策の抜本的転換を受けて、第22回JA全国大会では「地域農業の将来を支える担い手(大規模農家・農業生産法人、集落営農等)を明確にし、担い手育成のための支援を強力にすすめる」ことを決議している。
JA全農では、この決議に先だって昨年1月に「大規模農家・農業生産法人を対象とした専門推進チーム(通称DASHチーム)」を総合企画部に設置し、耕種部門の大規模農家・農業生産法人への対応強化とJAグループ利用率の向上を目的に、
@大規模農家・法人の経営実態・ニーズの把握、
AJA、当該部門等との協議によるスポット事業化の提案、
Bニーズに対応した新たな購買・販売事業方式の検討などに取り組んできた。
 DASHチームは、昨年1年間に約170の法人等を訪問したが、多くの法人からは@農地集積による生産コスト低減、A安定した販路と販売代金の確保、B生産資材費の低減、C中長期・短期資金の利用、D地域との共生や地域農業の継続・発展など、JAグループに期待する声があがってきている。
 そこでJA全農は、今年1月の機構改革にあたって、営農総合対策部に「担い手対応室」を設置し、積極的に担い手対応に取り組み、県本部・県連・JAと連携して、事業につなげる推進活動を強化していく。

◆「事業の公平性を重視した運営への転換」の意識向上を

 DASHチームの調査によれば、法人のニーズとJAグループの事業運営がかみあわず、ビジネスチャンスを失っている実態があることが明らかになっている。
そのため、@担い手に対する個別対応を行うことの動機づけ、A専任担当の設置と実践活動、B担い手に対する機能別規模別の弾力的な取引条件の設定、などの提案活動を行いJAグループにおいて「事業の公平性を重視した運営への転換」の意識向上をはかっていくこととする。
 そして、県本部・県連・JAとの打ち合わせや法人等への巡回活動を行うモデルJAづくりを進めるとともに、セミナーの開催、(社)日本農業法人協会、JA全青協などとの情報交換会などに取り組んでいく。
 対象となる法人は、@すでに法人のJA利用があり、取引を継続・拡大するもの。あるいは現在は法人対応ができていないが今後JAに専任担当者を配置して弾力的取扱対応によって新たな取引をおこなうなど、JAが主体的に推進するケース。  AJAで推進体制を整備できないケース。法人の農場がJA・県域を超え、JAが対応できないケース。JAとほとんど取引がなく疎遠なケース、に分けられる。
 この内、AのJAが推進することが難しいケースについては、当該のJAと協議・合意することを前提に連合会が主体的に推進に取り組むことにしている。その場合でも、代金決済は当該JAの窓口で行うことを原則としていく。


ますます充実するアピネス/アグリインフォ

アピネス/アグリインフォは、農薬登録データベース、グリーンレポート全巻収録、日本農業新聞記事検索などコンテンツを充実してきた結果、現在、7万3000ページにもおよぶ営農技術・生産資材のデータを収録している。  また、昨年4月から農家会員制度を設置し会員数の拡大に取り組んでいるが、3月末には、180JA、1000農家の会員が見込まれている。
 この4月からは、青果物の10市場の市況情報を提供する予定になっている。さらに、営農技術者のネットワーク構築による営農相談体制の拡充も4月から実施される。そして、13年度中には公的試験場やメーカーの会員も設置し、情報を幅広く収集して、JAや農家会員に利用してもらうシステムを構築する予定だという。  


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