系統信用事業の第一線で活躍するJA役職員の功労を称える農林中央金庫と(社)全国信連協会の第48回全国JA金融推進大会は21日、東京・大手町のJAビルで開き、優れた融資の実績を誇る4JAを表彰し、また功労者89人に感謝状を贈った。大会での発言はいずれも、大手銀行の再編や、異業種からの新規参入など「劇的な変化」を挙げ、金融界の「大競争時代」突入を強調した。これらを受けた大会宣言は、JAと信連と農林中金が一体となって競争を勝ち抜く「JAバンク」ブランドの確立を誓い、それに向けた取り組み事項を確認した。
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預貯金の払い戻し保証を一定額までとするペイオフが来年4月に解禁となり、利用者が金融機関を厳しく選別する時代に入った。
このため大会宣言は、利用者から選ばれ、また「信頼される経営を実現する」ことをうたい、経営管理体制の強化や、JAの破たんを未然に防ぐセーフティネット(安全網)の構築などに取り組むとした。
すでに昨秋のJA全国大会は、JAと信連と農林中金が、一つの金融機関として機能する新たな農協金融システム「JAバンク」の構築を打ち出した。 農水省は、これを進める関係法案を今国会に提出する。
全国JA貯金残高は一昨年6月末に70兆円の大台を突破。昨年6月末には71兆円を超え、昨年末には73兆円と、伸びを加速させた。
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第48回全国JA金融推進大会の会場
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これはペイオフ対策と郵貯の大量満期対策を重点にした取り組みの成果であると農林中金はみている。
また系統の店舗数は約1万4000(JAと信連)と、そのネットワークは大きい。「JAバンク」は、そうした基盤に立脚する。
こうしたことから農林中金の上野博史理事長は21世紀を「新たな可能性の広がる新世紀でもある。JAバンクは他業態とは異なる確固たる生存基盤を有している。系統組織が一丸となって業務革新に取り組めば一層の発展への道は開ける」と開会あいさつで述べた。
またJA全中の原田睦民会長は「JAバンクとしての事業システム構築が急がれる」とあいさつした。
そして「早期是正措置より早い段階で破たんを防ぐ制度の確立が急務である。経営困難なJAは合併や、信連に事業譲渡をするという自主ルールに合意しないJAはセーフティネットからはずすことも必要ではないかと考える」と厳しい姿勢を示した。
農水省も、自主ルールの下で、問題のある農協と信連を早期に発見し、速やかに経営改善や組織統合をすることが必要としており、また、すでに問題を抱えている農協の処理も、極めて重要であるとしている。
今年は農水省の「農村地域金融推進優良事例」として農水大臣表彰組合には、埼玉県のJAいるま野と、兵庫県のJAたじま、また農水省経営局長表彰組合には、北海道のJA更別村と岩手県のJA岩手中央の計4JAが選ばれた。
大会では受賞組合代表に国井正幸・農水政務官と須賀田菊仁農水省経営局長から表彰状が贈られ、その栄誉を称える拍手が続いた。
また金融推進功労者には上野理事長と、全国信連協会の吉原弘行副会長から感謝状が手渡された。
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全国JA金融推進大会で
あいさつするイメージ
キャラクターの竹内結子さん
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全国信連協会と農林中金は平成13年度から3カ年間に系統信用事業全体で実行すべきことを具体的に打ち出した「系統信用事業中期戦略」を策定した。大会では、そのポイントをスライドで説明した。
それによると、基本戦略は@地域から信頼される経営基盤の確立A新たなビジネスモデルの構築B全国一体的な業務運営体制の強化の3点からなる。
記念講演では、スーパー大手の(株)イトーヨーカ堂社長で、またコンビニ最大手のセブンーイレブン・ジャパン会長である鈴木敏文氏が「私の経営観」について語った。
このあと農水大臣表彰に輝いたJAいるまの(山田紀一組合長)の奈良政治常務が「人に優しい豊かな地域社会を目指して」と題して、「自然災害復旧資金」などユニークな融資制度を設けているなどの金融実績を報告した。
またJAバンクのイメージキャラクターを女優の原田知世さんからバトンタッチした若手女優の竹内結子さんが紹介された。
〓〓大会宣言(要旨)〓〓〓〓〓〓〓〓
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1.
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農業融資推進体制の強化等により引き続き基本的役割を十全に発揮していくとともに、現在検討されている農協法、信用事業新法の内容を踏まえ、経営管理体制の強化、より実効性あるセーフティーネットを構築し、ペイオフ解禁に向けて利用者から信頼される経営を実現する。 |
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2.
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資産相談業務の展開、市場性金融商品の販売体制の整備、ライフプランに応じた提案型ローン推進等を通じての相談機能・提案力の強化、FP(ファイナンシャルプランナー)の養成等専門性の高い人材の育成を行い、事業実績を着実に確保するとともに、組合員・地域住民のニーズへの対応を追求する。
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3.
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IT投資を戦略的に行い、インターネットバンキングの全国展開等により利用者利便を向上させるとともに、系統イントラネットシステムの構築・拡充を進め、系統信用事業全体での情報の共有化・双方向化を行い、もって事業運営の効率化を実現する。
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【上野理事長のあいさつ】
金融業界では、業態・業種、さらには国を越えた再編と金融サービス業への転換を目指した業務展開が加速し、本格的な大競争時代に突入しています。一方では、少子高齢化社会の進展や経済の成熟化と環境問題への関心の高まりなど事業基盤に及ぼす社会の変容が進展していると考えます。
こうしたなか、まず、より実効性ある系統セーフティネットを構築し、他の金融機関と共通の尺度で経営の健全性を確保しなければなりません。これに関しては、JA全国大会決議を踏まえた系統独自の自主ルールの策定等について、全中・信連協会と連携しつつ努力しているところです。
さらに、組合員・利用者の期待に応えるサービスを提供していくためには、系統組織が一体となって取り組むことが肝要です。これについては「利用者から選ばれる『JAバンク』ブランドの確立=JAグループの一体的業務運営の確立」を基本目標とする「系統信用事業中期戦略」を着実に実践していくことです。
具体的には、ITの活用などにより新たなビジネスモデルを構築するなど、利用者主権・業務運営の効率化といった競争の枠組み変化に対応するため、人づくり体制の構築、システムの整備・拡充、商品・機能サービス開発など、全国一体的な業務運営体制の強化に取り組んでいくことです。
既成概念が崩れる大変革の21世紀を迎え、JAグループをとりまく環境がますます厳しくなるものと予想されますが、系統信用事業にとって新たな可能性の広がる新世紀でもあります。JAバンクは他業態とは異なる確固たる生存基盤を有しています。自信をもって事業運営にあたり系統組織が一丸となって業務革新に取り組めば、必ずや大競争時代を勝ち抜き、一層の発展への道は開けるものと信じています。
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