インタビュー 農林中央金庫 組合金融第一本部・業務開発部 向井地純一部長に聞く 「系統信用事業中期戦略」のめざすもの−− JA・信連・農林中金が一体となった事業運営で 「JAバンク」ブランドの確立を |
JAグループの信用事業は、大競争時代のなかで、組合員・利用者から選ばれる金融機関となるために、グループが一体的な事業運営を展開していく必要があるとして「系統信用事業中期戦略(平成13〜15年度)」を策定した。この「戦略」の背景とめざすものを、向井地純一農林中金業務開発部長に聞いた。
環境変化は必ずしも ‐‐最近の系統信用事業を取り巻く環境についてどう見ていますか。
向井地 事業基盤に影響をおよぼす社会の変容としては、まず少子高齢化の進展があります。これは必ずしも悲観する必要はないと考えています。なぜかといえば、豊かな資産に関する管理・相談ニーズの高まりとか、介護事業をはじめとするシルバー産業の成長が予測されるからです。
2つ目は、経済の成熟化と環境問題への関心の高まりから、人びとの価値観がゆとり重視、地域との関わりを求める方向に変化してきていることです。これも農業・農村の多面的機能に対する関心の高まりということになりますから、JAの事業基盤にとって悪い影響はないといえます。 ◆事前指導型から事後チェック型に金融行政転換 ‐‐金融行政も大きく変化していますね。
向井地 従来の護送船団方式の「事前指導型」から、市場規律に立脚した透明性の高い行政へということで「事後チェック型」に行政は変わりました。 ◆リテールは歴史的にJAの市場 ‐‐都銀など他業態の動向については…。
向井地 金融機関は法人部門や証券部門では収益が上がらなくなってきていますから、都銀・地銀・信金などに加え、ソニーやイトーヨーカ堂などの異業種も、GDPの約2.5倍の大きさをもつ1350兆円のリテール(個人金融)部門に経営資源を集中してきています。 ‐‐それが、昨年のJA全国大会で決議された系統信用事業改革ですね。
向井地 そうですね。それから昨年11月にとりまとめがなされた農水省経済局長の私的検討会である「農協系統の事業・組織に関する検討会」でも、@全国統一システム(JASTEM、系統決済データ通信システム)をベースとした一元的かつ戦略的なシステム投資とITの全国段階における集中的な実務的検討・企画および開発、Aできるだけ早い段階で経営改善に着手できるための全国段階での集中的かつ横断的なモニタリング体制、JAバンクの自主ルールによる破綻未然防止策の早急な確立、などに精力的に取り組んでいく必要があるとしています。 ◆系統信用事業の強みと弱み ‐‐いままでのお話の中にもでてきましたが、都銀などに比べ系統信用事業の強みと弱みを整理すると、どういうことになりますか。
向井地 強みとしては、金融資産をもつ「組合員」というコア顧客層との強い結びつきがあることが、まずあげられますね。ある調査によると、貯金残高1000万円以上の利用者が2.3%で、貯金全体の37.6%を占めています。つまり、JA利用者には、土地もちの富裕者層が多いということですし、都銀とは決定的に違う強みです。 ‐‐逆に弱みとしては…。
向井地 1つは、正組合員が減少してきていることと、次世代層との取引きが薄くなってきていること。そして会社単位の給与振込など職域シェアが低いことです。2つ目は、経営管理面でこれから対応しなければならない問題があります。例えば、収益管理だとか目標管理など、プラン・ドゥ・チェック・アクションサイクルを徹底する必要があるのかなと思っています。
◆系統信用事業の今日的意義は ‐‐そうしたことを踏まえて、4月から3カ年「中期戦略」を実践されるわけですが、そのめざす方向はどこにあるのでしょうか。
向井地 まず、系統信用事業が今日的にどういう意義があるのかというと、4つに整理することができると考えています。 ◆3つのネットワークがポイント ‐‐その基本戦略の柱となるのは何でしょうか。
向井地 基本戦略の大きな柱は、@地域から信頼される経営基盤の確立、A新たなビジネスモデルの構築、B全国一体的な業務運営体制の強化、の3つです。そのそれぞれに個別戦略があり、JA・信連・農林中金が一体的に仕事をするための具体的な展開内容を明確にしています。私はそのポイントは3つのネットワークだと考えています。 ◆変化の激しい時代に柔軟に対応し、JAバンク確立を ‐‐全国統一というイメージづくりも重要ですね。
向井地 いまはJA・県によって商品が違い商品名も異なりますから、全国的な商品PRができないとか、JAバンクのロゴマークも必ずしも統一されていません。これでは、都銀をはじめ他業態には勝てませんから、商標や商品を統一して一体的に取り組もうということです。従来からある商品の統一は難しいので、これから開発するものは統一していきたいと考えています。 ‐‐最後にJAの皆さんへのメッセージを…。
向井地 変化の激しい時代で従来の仕事のやり方が通用しなくなっています。とくに、顧客ニーズに立って仕事をしないといけない時代だといえます。それに対応し、JA・信連・農林中金が一体的に事業運営するために、私たちは信連といっしょになってJAと仕事をしますし、われわれ自身の意識を変革し、系統信用事業の牽引者として責任を持って仕事をしていきたいと思います。JAもこの変化に柔軟に対応し、仕事の仕方などを変革していただき、ともに「JAバンク」ブランドの確立に取り組んでいただきたいと思います。 |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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