第48回全国JA金融推進大会
総合力の強さをいかした事業展開を−表彰4JAの事業活動 |
◆ユニークな事業展開と連動して業績伸ばす
21日の全国JA金融推進大会で農水大臣表彰に輝いた埼玉県のJAいるま野は夏休みに3泊4日で小学生を山村で遊ばせる「子供村事業」を年中行事にしている。これは少子化社会の中で、JAにどんな新規事業ができるのかを模索する上で、一つの示唆が期待される事業だ。少子高齢化のもと、高齢者福祉活動にも積極的で、これらの活動を信用事業で、どう取引の手がかりにしていくか、奈良政勝常務は「知恵を働かせ、よく工夫していきたい」という。他の表彰3JAも今後の金融推進にとって、示唆に富んだ事業を展開している。それらの実績概要や融資制度の特色を紹介する。 ◆農水省経済局長表彰2JAの融資制度
農水省経済局長表彰の2JAは主な融資制度として次のような資金を独自に創設している。
【意見発表】JAいるま野 奈良政勝常務
また量販店で「いるま野野菜フェア」を開催して顧客確保と安定供給基地としてのイメージ確立に努め、さらにJA直売所19店でも販促を展開中です。 さらに特産としてウメ、クリ、ユズ、ナシなどの産地化も着実に進め、これらの消費を拡大しています。 組合員の資産管理事業では、本店と6つの地区本部に担当者を置き、各種の相談に乗り、宅建事業を展開し、また土地区画整理事業を支援しています。 宅建事業の一つとしては住宅展示場を運営しておりそこのセンターでは、住宅ローン、マイカーローンなどの融資相談会をキャンペーン期間中の休日に実施しています。相談をきっかけに、お客の家づくりを手伝い、JA貯金や公共料金振替サービスをはじめとする総合取引を目ざしています。 貸出方針はJAバンク実現に焦点を合わせ、提案型融資に積極的に取り組み、体制は職員1155人のうち信用事業担当を本店を含む67店に計434人配置し、また支店には渉外担当215人を配置しています。 ファイナンシャルプランナーは46人で、体制を整備中ですが、農地の宅地化が進む中で、提案型融資を推進するために、その育成を重点的に進めます。 農業関連資金融資は近代化資金などの制度資金を中心とするほか、5年前、独自につくった「農業経営資金」と、人材育成を支援する「農業後継者資金」で補完しています。 さらに「自然災害復旧資金」も同年度に創設しました。これは台風や大雨、雪など自然災害による農産物の大きな被害に対して、営農部と融資部が連携し、敏速に支援するものです。 しかし農業離れの進行で農業投資は低調であり、取引件数は減少傾向です。 資産管理事業を重視した資金の貸し出しにも積極的に取り組み、賃貸住宅関係はもちろん、貸し倉庫建設などのニーズにも対応しています。 貸付残高は農外事業資金が一番多くて1416億4000万円、次いで住宅と生活の関連資金が496億8100万円、そして農業近代化資金と制度資金で33億5600万円、また農業関連資金が28億5300万円となり、合計2272億1900万円です。 貯金残高は6615億6800万円(以上昨年3月末現在、以下同)。従って貯貸率は34.3%と、徐々に伸びてきております。 こうして管内には260の金融店舗がひしめき合う中で、JAのシェアは貯金残高で14.2%、貸出金残高で8%と、これもシェアを伸ばしています。 その実現に向けた中期計画では▽都市と調和した地域農業の確立▽自然と調和したまちづくりなどを活動の基本としました。 そして労働保険事務組合の資格を取得したり、高齢者福祉活動ではデイサービスを運営したり、また「次世代との共生」イベントを進展させるなど創造的な取り組みが多彩です。 【事業概況】▽組合員数5万7016人(うち正組合員2万4231人)▽販売事業取扱高92億7600万円▽購買事業同87億600万円▽長期共済保有高2兆3133億1800万円▽他の金融機関店舗数260(都銀44、地銀25、信金69、信組1、郵便局115、労金3、信託3)。
【組合長インタビュー】JAたじま 田口義修組合長
コメの集荷率は貯金残高に響くということもあるため毎年、努力して高い集荷率をキープしています。 昨年産も転作面積は増えましたが、目標を達成し、しかも集荷数量を前年より増やしています。 人気の高い但馬のコシヒカリをねらう計画外米の買付業者が多い中で、集荷率が高いのは、酒米が総集荷量の約35%を占めているという要因もあります。 しかし酒の消費減退による酒米需要の減少の中で、JAは灘五郷向け出荷だけでなく、4年前からは地元メーカーと提携して本醸造の銘酒「たじまっ娘」を発売し、大変好評です。 但馬牛といえば松阪牛や神戸牛の素牛として、サシがよく入ることで有名ですが、その血統が全国に広がって他産地の子牛価格の格差が縮まってきました。 そこで本家としての優位性を見直し、さらなる品質改良に力を入れます。4月には4JAが合併し、但馬牛の産地が一つになるためその力を結集して本腰を入れたいと思います。 野菜生産も輸入急増で大変です。この対策も合併後の新たな地域農業振興策の中で重要課題となります。 JAは農業振興に必要な長期・低利の「営農資金」を創設し、農業経営改善をはかっています。これは専業農家の規模拡大に必要な機械や施設の導入などに利用されています。しかし施設園芸があまりないので大口需要は少ない状況です。 生活面では「公共施設資金」を設けています。県は地域環境整備として農村部の下水道建設を進めていますが、本管と各家庭の排水管をつないだり、これにともなう住宅改造の資金を貸し出しています。 また、その資金に充てる積立貯金も5年ものとか7年ものがあります。 この資金は土地改良や区画整理などのインフラ整備に対応したもので管内1市6町の大口利用や、起債にも使ってもらっています。 「観光開発資金」も独自の制度です。管内の観光地では城崎温泉や神鍋高原が有名ですが、また各集落はそれぞれの山をスキー場にしています。そして集落の組合員全員が出資する会社がリフトの建設や、さらにそれを山上でつないだりする投資を続けています。これに対応して1件で5、6億円ほどの開発資金を貸し出しています。 こうしたJA独自の融資制度をさらに拡充し、組合員とのつながりを一層強めていきたいと思います。 私個人としては、ペイオフの解禁をそれほど心配していません。他の金融機関は経営内容がよくみえないし、大手銀行が突然、倒れたりする状況です。 だから組合員にはJAに貯金しておくほうが安心だという意識があると信じています。この信頼をさらに深めるようデイスクロージャーの徹底などを一層はかりたいと考えています。 【事業概況】▽組合員数2万922人(うち正組合員1万2324人)▽職員531人(うち信用事業担当181人)▽支店・分店26店舗▽貯金残高1490億円▽貸出金残高275億4200万円▽販売事業取扱高33億6700万円▽購買同44億1100万円▽長期共済保有高1兆660億5500万円▽他の金融機関の店舗数85(都銀1、地銀19、信金14、信組6、郵便局39、漁協5、労金1) |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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