第48回全国JA金融推進大会
座談会 組合員と地域に支持される「JAバンク」めざして
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◆広域合併でイントラネット活用による組織強化へ
白石 昨秋のJA全国大会は「地域農業戦略づくり」と「系統信用事業の改革」を打ち出しましたが、この二つのかかわりを念頭に、田口組合長から、まず地元の概況などをお話いただければと思います。
田口 但馬牛、コシヒカリなどの産地として知られていますが、生鮮野菜はいろんなものを少しずつ作っています。
白石 長澤専務はいかがですか。
長澤 ひとめぼれを中心にした米が基幹作物で、果樹はリンゴなどです。畜産は南部牛をはじめ最近は非常に肉質のよい黒豚が好評です。野菜は様々な品目を作っています。 白石 岩手県一の所得というのはどういうことですか。 長澤 販売ロットが大きくても組合員個々の所得が少なければ、JAの価値が薄れますから、組合員所得の優先をはかったわけです。 白石 JAたじまは7年に1市6町のJAが合併しましたね。 田口 ええ、さらに今年4月には1市18町の4JAが合併し、エリア面積は香川県や大阪府より大きくなり、東京都とほぼ同じになります。 白石 1県1農協なみですね。
田口 しかし山が多いので、交通アクセスが難問です。 ◆農地の流動化促進で経営規模拡大し農業振興へ 白石 農業振興について合併後の課題とか目標はいかがですか。
田口 これからは但馬地域全体として、どういう農業をつくっていくかを考えなければなりません。 白石 JAいわて中央は、販売金額が120億円ですか、なかでも、もち米生産では日本一のJAです。今後の農業戦略はいかがですか。 長澤 農地保有合理化事業を「農地貸し借り安心事業」と、やさしく銘打って、積極的に貸し手と借り手の間の農地流動化を進め、経営規模の拡大に力を入れています。
また、農作業受託組織の中に「機械銀行」というのがあり、「機械貧乏」にならないように有効活用して受委託を円滑化しています。 ◆独自資金や制度資金の活用で地域の農業をサポート 白石 では信用事業の実績や課題に入って、JA独自の融資制度などについて、お聞かせ下さい。 田口 私のほうは、経済活動が、それほど活発な地域ではありませんので、貯貸率は低く、19%です。 白石 旅館は准組合員ですか。
田口 ほとんどがそうです。正組合員も少しはいますが。 白石 JAいわて中央の取り組みはどうでしょうか。
営農関係でも立地を生かして、産直事業に取り組み、JAの直売所が3カ所あります。駅前と団地と営農センターに1店ずつです。 組合員数はJAたじまさんの半分くらいですが、うち約320人が直売所に出荷しています。年間売上げは約2億円です。一人当たりでは65万円ほどになる勘定です。 白石 産直は農家の女性が担い手ですか。
長澤 そうです。とくに若いお嫁さんたちが積極的ですね。消費者の評判も上々です。自分で収穫し、値段をつけ、袋や束に個人名を明記した野菜や果物を直売所に並べるというやり方です。JAは手数料をもらい、職員がサポートしています。 白石 Aコープ店舗で販売する野菜や果物も地場産のものですか。 長澤 いやぁ、それは市場からの買い付けが多くなっています。 白石 「アグリマイティ資金」というのはどういう資金ですか。 長澤 例えば、近代化資金融資が需要の8割7割にとどまる場合、あとの2割3割をアグリマイティの融資で補完するといった形です。 白石 生活面で、賃貸マンション建設資金などは住宅金融公庫の融資がありますが、その辺は?。
長澤 住宅公庫の金利が高いためそれよりも低利のJA資金に借り換えをする利用者もありますよ。 ◆地域に根ざし貢献広げる目標管理型の事業を目指す 白石 信用事業と高齢者福祉など助け合い運動の関係はどうですか。
田口 福祉積立をやっています。契約者はJAの葬祭事業や福祉事業を割引料金で利用できます。 白石 JA金融と、他の金融機関との競合はいかがですか。 田口 銀行は一生懸命に入り込もうとしていますが、例えばスキー場などは農家が起こした事業なので、最初からのつながりがあり、やはりJAのほうが強いですね。 白石 いわて中央のほうは?
長澤 競合に関連して「地域に根ざした」とか「地域密着」とかいわれますが、それは具体的にどういうことなのかと私は考えます。 白石 専門的には目標管理型を取り入れ、同時に職員たちによる地域貢献を広げていきたい、ということですね。女性部の活動はどうですか。
長澤 女性部と青年部は「大地の応援団」という事業を昨年から始めました。小学生を募って農業体験をしてもらうものです。親もついてきて子どもと一緒に生育状況を楽しそうに観察したりしています。 ◆リテール分野の強み活かし証券運用や地元融資増やす 白石 金融機能の強化などについて、JAたじまはいかがですか。
田口 12年度は一気に店舗を減らすという支店の統廃合をしました。37のうち10支店を統合し、1つを増やして現在は12支店です。これは13年度も続けます。その補完として渉外を充実し、現在62人です。 白石 渉外は御用聞きですね。
田口 地域密着をさらに深めていこうという趣旨です。しかし合併前の昔は本店だったところ、利用率の高いところを一気に減らすのですから大変でした。とはいっても、実施後の混乱などは聞いていません。 白石 貯貸率を高めていく課題についてはいかがですか。 田口 農業資金の需要減退で大変苦しいところですが、今後は観光事業とか、地元法人への融資を増やしていきたいと思います。 ◆農業後継者確保対策にシステム作りの強化へ 白石 一方、資金運用面では、証券運用が結構、高いですね。昨年3月末で115億円。これを4年前と比べると倍増です。さて、いわて中央のシェアはどうですか。 長澤 管内の金融機関店舗数は郵便局を除いて21あり、預貯金のシェアは29.9%です。 白石 随分高いですね。四分の一に達しているのですから。 長澤 収益改善については、JAの支所は16あります。他の金融機関合計21に比べ、これは、ちょっと多過ぎはしないかと考えました。そこで支所・出張所のうち貯金残高10億円以下のところは窓口扱いをやめて全部ATM(現金自動預け払い機)に代えていく方針です。
田口 一番大きな問題は、後継者難です。どう補充していくかといっても、若い農業後継者は限られていると思います。そこで定年退職者に後継者として農業をやっていただけるようなシステムをつくっていきたいと考えています。 白石 元気な高齢者に生きがい農業をやってもらうわけですか。
田口 農業で生きていただくためには、栽培技術を身につけるとか経営ノウハウの勉強などが必要になりますから、そういった研修の仕組みをつくらなければなりません。 ◆認定農業者の育成と集落営農構築で地域振興に尽くす 白石 信用事業については、どうみておられますか。
田口 金融ビッグバンとかペイオフ解禁とか業界の再編成とか、いろいろあります。しかしJAの場合は先ほども話題になったように、地域と密着して生き残るんだと、私は常々といっております。 白石 営農面、生活面と、幅広い面でつながりを深めるわけですね。 田口 信用だけ共済だけというつながりでは不足です。それから地域発展をいいましたが、これは地域がよくなってこそ農業もよくなるんだという考え方です。農家だけが、がんばっても地域はよくなりません。住民全体が地域振興に力を合わせる必要があります。それが地域の農業振興につながってきます。 白石 JAいわて中央はどうですか。
長澤 いわて中央農協では、大事にしなければならないのが認定農業者です。226人いて、それぞれ規模を拡大していますが、それにつれて労働力を増やす必要が出てきました。そこで非農家の方々に支援を求めて昨年初めてパートの農業従事者を募集しました。こうした認定農業者対策を着実に進める方針です。 ◆リスク管理体制強化で地域に信頼されるJAへ 白石 信用事業のほうは? 長澤 渉外担当を28人体制に強化したのだから、定期積金にも力を注ぐ必要があるということになっています。うちも先ほど話に出た葬祭積立を月3000円で進めています。また温泉旅行を楽しむ「湯けむり定積」とか、三陸へ行って魚をたらふく食べる「グルメ定積」などもやっております。あとは、これから大事なのは、年金をいかに獲得していくかということだと思います。
白石 それから、昨年のJA全国大会は「組合員と地域に支持されるJAバンク」を確立するためJA、信連、農林中金が一体的な業務運営を展開することを決議しましたが、それに対応する法整備では、政府が農協法改正や信用事業の新法を検討中です。その柱はセーフティネット構築など危機管理だと思います。これについてのお考えはどうですか。 白石 自己資本比率は16.74%と高いですね。 長澤 いやぁ、県下の平均よりは高いと思いますが……。 田口 私のところも、いま新しいリスク管理体制を組んでいます。いまのところは貸出に関しては内容の安心なものばかりだとみています。しかし、4月には合併をしますので、そのあとのことを、いろいろ考えています。 白石 JAの特性を活かした地域農業戦略づくりを土台とし、個性的にかつ自信を持って信用事業に取り組まれている実態をお話頂き有り難うございました。
田口組合長と長澤専務のお二人とも、「地域で信頼されるJAづくりやJAバンクづくり」のために、一方で、JAの総合性と専門性を組み合わせた事業経営体制の内部革新と他方では特に組合員とJAの組織事業活動のつなぎ役として職員の活躍を引き出す仕組みづくり、「人材づくり」を重視されている点が印象に残りました。
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農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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