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産地や消費者の『もっと近くに。』
特集 米の需給調整と米価の回復めざすJA全農の挑戦

米価の回復と取扱数量拡大を
平成13年産米の集荷・販売対策について
JA全農 米穀販売部部長 森川喜郎氏

◆生産・集荷・販売・消費の情勢認識

  13年産米の集荷・販売対策を組み立てるにあたって次の情勢認識を押さえておく必要があります。
 生産・集荷面では、
 @13年産生産調整面積は25万t相当分(5万ha程度)拡大して、101万haと過去最大規模で取り組む。
 A豊作等による生産オーバー分は、主食用以外への処理(飼料用向)のほか、13年産では需給調整水田(5万ha)による収穫前調整を実施する。
 B12年産米の集荷は484方t程度で、前年産に比べ数量で12万t増加したが、集荷率では51.0%と0.4%低下した。
 C13年産から農産物検査実施業務が民営化され、条件の整ったJA・県連から順次スタートする。
 次に、販売・消費面では、
 @自主流通米の販売数量と価格は、「平成12年緊急総合米対策」(以下、「総合米対策」という)の実効により徐々に回復している。
 A景気低迷と量販店等の価格形成主導などから、販売業者の経営が悪化し、業界の再編と二極化が進行している。
 B4月から改正JAS法にもとづく精米表示に制度が変更される。
 CMA米が国内産米需要を徐々に侵食している。
 D米の消費量は、引き続き減少しているものの、近年は鈍化傾向にある。

◆13年産米集荷にあたって「もっと近くに。」を合い言葉

 こうした情勢認識をふまえ、13年産米集荷にあたっては、「もっと近くに。」を合い言葉に、生産者に接近した集荷を行います。
 このため、次のことを重点に取り組み、集荷率を反転させます。
(1)集荷場所(基準値)を生産者の庭先とし、フットワークのある集荷を展開する。
(2)全体の集荷率を向上させるためには、近年全国平均より集荷率を落としている消費地圏での集荷率をあげる。
(3)今後担い手をより重視した政策が更に推進されることから、集荷対象を大規模農家・生産法人・営農集団等の担い手にも広げる。
(4)全体需給状況を的確に把握するため、計画外流通米を含めた流通実態を明確にするとともに、消費地圏を中心に計画外流通米を含めたJAグループの取り扱いを拡大する。

◆「攻め」の集荷を鮮明化するため、集荷場所を生産者の庭先に

  こうした取り組みを実行するための主な集荷具体策は、次のとおりです。
 まず、生産者に接近した集荷対策の第1は、集荷の基礎となる出荷契約の積み上げと「稲作経営安定対策 (以下「稲経」という)」、「とも補償」、「米需給調整・需要拡大基金」への加入推進に最大限の力を傾注することです。
 計画出荷米の集荷量は「稲経」の加入数量と相関関係が強く、出来秋の集荷も重要ですが、稲経の加入推進を通じて、計画出荷米の申出と出荷契約をいかに多く積み上げるかが集荷を左右するといっても過言ではありません。
 特に、稲経については、12年産米で各産地銘柄のほとんどが、補てん(入札上場銘柄平均で2月入札終了段階試算で60kg当たり1800円程度)を受けることから、計画流通米出荷者のメリットとして積極的に活用していきたい。
 ただし、13年産も12年産同様価格低迷が続くと,銘柄によって資金残高不足が懸念されることから、特に「追加造成コース」(13年産限りの措置)への加入を推進することにします。
 第2は、出来秋時の対応としてのうるち米の仮渡金の支払いです。計画出荷米の集荷数量拡大が、@秩序ある需給調整による計画的な販売と価格の回復・反転のスタート、A需給対策に要する生産者負担の軽減になることをふまえ、集荷に結び付く仮渡金水準の設定が重要です。
 このため、12年産では内金・追加払い方式を基本に、その水準は集荷直前の情勢をふまえ、決定することとしていましたが、実際の集荷をみますと、仮渡金に稲経を考慮した「安定出荷協力金」等の加算を行った県連等では集荷が積み上がったとの評価がありました。
 そこで、13年産では地域の集荷環境やこれまでの経過等も勘案し、@安定出荷協力金等を加味した方式、またはA内金・追加払い方式の2つで、県の実態に即して取り組むことにします。
 第3は、集荷場所(基準地)をJAの検査場所から生産者の庭先に変更することを基本にします。
 これまで食管法時代の名残りで生産者がJAの検査場所まで持ってくるのが当然という考えが支配的でした。
 もちろん、集荷に積極的なJAでは、これまでも生産者の庭先に出向いて集荷をしていますが、その経費はJAの手数料等から捻出しているところがほとんどです。しかし、集荷量が少ないJAでは庭先集荷に取り組もうとしても、なかなか経営的に許されない状況でした。
 そこで、「集荷は生産者の庭先から始まる」ことにし、これにかかる庭先から検査場所までの運搬費等を共計勘定化(検査場所へ持ち込む生産者には運搬費相当額等の支払い)するなどの工夫をし、対応することにします。これにより、生産者に出向く「攻め」の集荷を鮮明化することができます。

資料:表1、計画出荷米の集荷率の推移
資料:表2、地帯別の計画流通米の生産量に対する集荷率の推移
資料:表3、稲作経営安定対策の加入状況(全農系)

◆消費地圏での集荷向上対策 戦略目標を立て実践を

  次に、消費地圏での集荷率向上対策ですが、この点については、昨年10月から12月にかけて消費地圏9府県連の集荷担当課長を中心に「消費地圏米穀集荷戦略研究会」を3回開催し、各県の現状分析をもとに課題整理を行い、集荷戦略の方向性をとりまとめました。
 それをもとに、13年産では、新たに「消費地圏での取り組み」を加え、集荷率の向上をはかることにしました。
 その第1は、JA別に計画外流通米も含めた流通実態を調査し、現状を的確に把握することからはじめます。次に、JA管内の課題を整理し、打開策を検討し、戦略目標を立て実践していくことにします。その際、県連等も生産・集荷機能が不充分なJAに対して、JA間の調整・連携の推進等も含め補完機能を発揮します。
 全農としても、消費地圏にモデルJA(5JAを予定)を設置し、集荷に係る諸課題について戦略目標を設定し、2年がかりで、JA・県連等・全農一体となって、着実に成果を出す取り組みをします。特に、機動的な集荷手法としての庭先集荷の拡大に挑戦していきます。
 第2は、計画外流通米と競合する出来秋時を重視した集荷・販売対策として、JA卸等での買取集荷等の実施です。
 第3は、やむをえず、計画外流通米等を取り扱う場合は、需給対策に必要な経費の一部を負担してもらい、自主流通米と共計し、公平確保措置を講じることにします。

資料:表4、計画外流通米の検査数量の推移(うるち玄米、1〜3等、2月末現在)
資料:表5、生産者の計画外流通米の販売先別販売割合
資料:グラフ1、自主流通主食うるち米入札価格の推移(全銘柄平均)

◆地域の担い手対策 専任対応部署の設置を

  さらに、地域の担い手対策として、第1に、県連等に専任対応部署を設置し、対応力を強化します。近年県連等で専任対応部署を設置し、担い手に対する営農・購買等での総合的な対応を強化しており、12年産の総括でも、大規模農家に対して県連とJAが同行推進した結果、集荷の積み上げで成果を出したという報告もあります。
 第2は、JAが斡旋して中小規模農家の収穫・乾燥等の作業を大規模農家・生産法人に委託して集荷する、いわゆる刈取集荷を行い、その刈り取った米をJAの施設(カントリーエレベーター・ライスセンター)に搬入し、稼働率の向上をはかることにします。
 また、生産者の高齢化が進むなかで、JA出資による生産法人を設立し、自ら「刈取集荷」に取り組むことも時代の要請になっています。

◆計画外流通米への対応 計画外米も含めたJAグループの集荷実態の明確化を

  最後に、計画外流通米への対応です。第1に、基本姿勢は、計画外米とならないように可能な限り計画流通米へ取り込むことです。
しかし、地域の事情により取込めない計画的生産実施者の米については、12年産から新たに導入した部分業務委託(保管・運送・代金回収等)の受託を行い、JAの利用促進をはかります。
 第2は、全体需給状況を的確に把握し、需給調整を迅速かつ効果的に行うためには、計画流通米に計画外流通米を加えたJAグループの集荷実態も明白にしていくことが必要です。
 このため、13年産以降計画外流通米についてもJA・県連等から定期的に取扱実績をとりまとめ、JAグループの正確な取扱実態を明らかにしていきます。

◆「総合米対策」の実行と整然とした販売を

  販売対策では、JAグループが結束して、「総合米対策」の着実な実行と整然とした販売を行うことにより、需給の改善と価格の回復に努めます。
 主食うるち米では、次のことに取り組みます。
(1)適正な価格形成を実現するため、現行の入札・相対方式を見直す。
 とりわけ、早期米は当年産の全体的な販売・価格に大きな影響を及ぼすことから、円滑な取引と適正な価格形成のあり方について検討する。
(2)需給改善の効果が確実に発揮されるよう、整然とした販売(申出価格の慎重な対応、リベートの廃止)を行う。
(3)過度な産地間競争を排除するため、販売・需給調整の仕組みを構築する。
(4)精米表示の適正化に向け、生産者団体自ら精米分析(DNA鑑定)を実施する。
 もち米については、13米穀年度は思い切った対策を講じる必要があり、特に、次の点に取り組みます。
(1)相当量の供給過剰を改善するため、13年産作付面積を全国5万5000haまで削減し、生産抑制をはかる。このため、仮渡金はうるち米水準とのバランスを考慮し、@もち米生産を抑制できる水準、A持越在庫対策等の財源を十分確保できる水準で設定する。
(2)自主流通もち米の需要を確保するため、需給実勢を反映した適正な価格形成のあり方について検討する。
(3)前年産を含め、販売の長期化が見込まれることから、持越在庫対策を講じる。
 こうした集荷・販売対策を通じて、需給の改善と自主流通米価格の回復、JAグループの米取扱数量・シェアーの拡大をはかります。
 このほか、消費者ニーズに対応したごはん食の推進などにより、国産米の需要・消費拡大にも取り組みます。

資料:表6、自主流通もち米の需給状況(全農分)
資料:表7、3月16日以降の自主流通主食うるち米の販売数量


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