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特集
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座談会
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米政策の見直しに向けて11月はひとつのヤマ場となる。食糧庁が示した見直し案をめぐって10月の下旬には農水省の意見交換会や自民党の委員会でJA組合長や青年・女性農業者などが意見を表明したが、性急な見直し姿勢への反発や、稲作経営安定対策から副業農家を除外するなどの農村の実態を無視した内容に強い異論が相次いだ。
JAグループや生産者も現行の政策のままでいいとの主張ではないが、なぜ見直すのか、何のために改革するのかという点が十分に議論されなければならない。また、需給調整に努力している生産者、JAグループは、不公平感の是正が最大の課題だとしている。梶井功前東京農工大学長、森島賢立正大学教授とJA全中・馬場利彦水田農業対策課長、JA全農・中山正敏水田営農対策室長に問題点を話し合ってもらった。 ◆ 副業農家の除外は担い手にも反対論
森島 先日、食糧庁案をめぐって各地でJAや生産者との意見交換会が行われましたが、今日の議論を始めるにあたってまず現場の意見の概要を紹介していただけますか。 馬場 生産者やJAがもっとも問題にしているのは、やはり稲作経営安定対策での副業農家の扱いでした。副業農家の除外はけっして認められないということですね。実施すれば、水路の管理など集落機能が低下するだけでなく、生産調整の達成も困難になるという指摘も多い。この除外問題は各地で最大の反発を招いている点です。 中山 副業農家の扱いについては、担い手からも、集落のなかでの担い手はせいぜい2、3人、その他は副業農家で、その人たちが生産調整をしなくなると自分たちも困るとし、集落営農が維持できないという意見もありました。
森島 では、まず前回に続いて大きな問題になっている稲経と副業農家の扱いについて改めて話をしたいと思いますが、たとえば、副業農家をすべて除外するのではなくて、一定の生産者を選んで助成するという案が今後出てきた場合はどう対応しますか。 馬場 そういう論理も認められません。たとえ1俵であろうとも生産調整を実施している人に差を設けて、あなたの出した計画流通米は稲経の対象ではありません、ということは言えないですね。 森島 つまり、前回も指摘が出た点ですが、1階部分の切り崩しにつながる見直しはJAグループとしてはまったく認められないということですね。梶井先生はこの点についてどうお考えですか。 梶井 私は、今回考えなければならないのは、そもそも土台である1階の部分、つまり、稲経がグラグラしているからそれをどうするか、だと思っています。土台がしっかりしていないのに2階は建てようがないではないかと。 馬場 われわれも問題にしているのは、現行の米政策の不備です。具体的な現場の大きな課題は、生産調整を実施している人と未実施者、計画流通米として出荷し飼料用処理などの負担をしている人とそうでない人、その不公平感が蔓延していることなんです。このことがあるために、生産調整を実施し需給調整をはかろうということにつながっていかない。限界感に加えて不公平感があることが最大の課題なんですね。 中山 生産調整の未実施と実施者との不公平感および需給調整コストを計画外米のみで負担しているという不公平は渦巻いているのに、食糧庁案にはそれに対処する施策がまったく出てきていません。米政策の見直しよる制度等の変更にあたっての前提は公平性の確保措置と考えます。 梶井 逆に食糧庁案はその不公平を是認したうえで需給調整策を考えようとしているのではないかとも思えます。 馬場 少なくとも不公平感の是正のための答えは書いてありませんね。その答えが何もなくて改革の方向は出てこないと思います。
森島 不公平感が生まれているのは、生産調整実施者と計画米出荷者だけが需給調整の負担を負わされているからですが、そうなると食糧法施行からこれまでをミニマムアクセスを含めてどう総括するかも重要な視点ですね。 梶井 食糧法で計画流通制度をつくり、流通の大宗は計画流通米、とした。若干の縁故米が出ることはやむを得ないとしても、計画外流通は少量にとどまる、それが建前だったわけです。 馬場 根幹が崩れ、結局、計画流通米は5割しかないという状況です。5割のなかでそれこそ豊作対応をしたり、在庫処理を背負っているわけですね。そこに矛盾があるわけです。 中山 登録するのは計画流通米を扱う業者だけですから、販売業者のレベルで計画外流通米を捕捉する手段は今のところないんですよね。 梶井 そこを手当てしてこなかったことは欠陥ですよ。それと調整保管を団体の責任にしたことに制度上の無理がもともとあった。制度の見直しを考えるなら、そのへんの手当てをまず考えるのが筋ではないかと思いますね。 中山 計画流通米では、過剰分の飼料用処理コストとして1俵あたり300円程度負担しているわけです。さらに調整保管コストもあります。しかし、計画外流通米はその負担がなく需給バランスの効果の恩恵だけは受けている。だから、われわれは最初からハンディを負って競争させられているようなものです。この構図がなくならない限り、新しい制度をつくっても同じだと思うんですね。 森島 調整保管のコストや飼料用処理のコストは全額国が負担すべき、というのが前回の議論だったと思いますが、百歩ゆずってその一部を生産者が負担するにしても、だれにどう負担させるのか、計画外流通米の実態がつかめていないのではどうしようもないですね。 梶井 安定供給は国の責任なのですから、そうしたコストは本来財政で負担すべきもの、それを食糧庁は逃げたのです。今になっては、計画外流通の実態がつかめないから負担のさせようもないのだという話にすらなってしまっているのではないか。 馬場 今の制度としては、需給調整は計画流通米で行うことになっていて、それは結局、生産者団体の自主的取り組みだという話に置き換えられてしまった。いうなれば団体の責任ということになっていますから、国は需給調整コストを徴収する義務はないということになっている。 梶井 見方をかえれば、国民の主食に関わる大問題を農協組織の自主運営に任せるという姿勢でいいのかということです。こういう問題も含めて制度的な改正を行うべきです。 馬場 今度の食糧庁案では計画流通制度を見直して、新たな制度にするとしています。具体的な制度はまだ示されていませんが、われわれとしては米を扱う業者は全業者を登録し、そのうえで農協のような安定供給を担うところは、現在の計画流通米のような枠を持つ、そういうイメージで新たな制度をつくるべきだと考えています。 梶井 そうですね。食糧法自体の欠陥を問題にしなければ抜本的な改革にならないんじゃないかと思います。 ◆ 稲経の根本的な欠陥も改めるべき 森島 土台をどう立て直すのかという問題では稲経の充実も重要ですね。ところが、補てん基準価格の固定措置を外すという方針になっています。これについてはどう考えますか。 梶井 この問題で指摘したいのは米国では今、96年農業法の不足払い制度を復活させようとしていることです。しかも以前は作付け制限とリンクしていた制度だったのに、今回は生産調整を要件にしていません。これは明らかに生産刺激的な政策ですよ。下院はもう通過している。市場メカニズムにまかせることを言っているアメリカですら、WTOで削減すべしということになっている黄色政策の強化に向かおうとしているんです。 森島 補てん基準価格を市場価格だけで決めているのが問題だと思いますね。生産コストを勘案し再生産を保証するという観点も求める必要がありますね。 梶井 前3カ年の市場価格平均で補てん基準価格を決めるということに欠陥がある。というのも備蓄米を翌年放出するという仕組みが一方であるから、生産調整を100%達成し平年作であれば当年産としては需給バランスがとれるはずなのに、必ず古米が市場に出て価格引き下げ効果を持つことになる。このメカニズムであれば必ず価格は下がる。ここが基本的に欠陥です。 中山 備蓄運営の問題でいえば、やはり棚上げ部分を認めるべきだと思いますね。今の方法だと常に全量がいつかは市場に出てくるという感じを業界に与えていますから、どうしても価格引き下げにつながってしまう。だから、ある程度棚上げ部分を固定して市場に影響を及ぼさないという仕組みが求められると思います。
森島 食糧庁案は盛んに構造改革の必要性を言っていますが。最後に水田農業の構造改革をどう考えるべきか、梶井先生からお話しいただけますか。 梶井 基本的には、たとえば稲経がきちんと機能していれば構造改善は進むということを認識する必要があると思っています。 ――どうもありがとうございました。(この企画は今後も行う予定です)
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