◆ 県内耕作面積の92%が水田という穀倉地帯・滋賀
日本列島のほぼ中央部、東日本と西日本、日本海側と太平洋側を結ぶ接点ともいえる位置に日本一大きな湖・琵琶湖で知られる滋賀県はある。古くは淡海とよばれた琵琶湖周辺には、古代から東海道・中山道・北国道が通り、その脇道・里道が湖から山々へと縦横に通じながら発達し、中世以降の商業活動や市場の形成に大きな役割を果たしてきた。また、西暦645年に蘇我入鹿を倒して「大化の改新」をなしとげた中大兄皇子が、668年に即位して天智天皇となり、日本で最初の法律「近江令」を制定したのが大津京(大津市)であったように、日本の歴史に深く関わっている地域でもある。
滋賀県は県内面積の1/6を占める琵琶湖を中心に、緑豊かな鈴鹿、伊吹、比叡の山々が県境連なり、その間に山々から琵琶湖に注ぎ込む大小約460本の河川によってつくられた肥沃な平野部が広がっている。こうした恵まれた自然環境によって、古くから稲作を中心とする農業が営まれ、京阪神への食料供給基地としての役割を果たしてきた。
滋賀県の農業は近江牛などで畜産も知られているが、県内耕作面積の92%が水田、農業粗生産額の64.5%がコメというように稲作が中心となっている。いま滋賀県では、行政とJAグループを中心に「近江米ECOライス戦略」に取組んでいる。
ECOとは、Ecology(エコロジー)Cost-down(コストダウン)Oishii(おいしい)のことで、「土づくりにもとづく良食味米づくりを行い、徹底して食味を重視した環境調和型稲作に取組むこと」だと、近江米振興協会の総括指導員・山本良三さん。
目指すのは、タンパク質6.5%・水分15%・整粒歩合80%の「ピュア80」で、近江米振興協会は、良食味米栽培指針、CEや農業倉庫での保管管理を含めた品質チェックの徹底、良食味米・ピュア80の認証制度の実施など、良食味米づくりを支援している。
◆ CEとRCで県産米の半分を処理
環境に配慮した稲作としては、省化学肥料栽培の普及啓発、緩行性肥料の利用促進、農業系流出排水の削減に向けた流出防止装置の普及に取組んでいるが、肥料の流出を軽減する施肥田植機の普及率はすでに50%を超え全国のトップクラスだという。また、独自の防除基準にもとづく防除、農薬の適正使用の指導によって、10aあたり農薬費は全国平均の80%にまで削減されている。
そしてCE、低温倉庫など大型施設を充実させ、バラ出荷による低コスト流通の実現にも積極的に取組んでいる。CEは地図のように県内45施設・9万6910t(サイロ容量)もあり、ライスセンター(RC)を含めた乾燥調整能力は県内産米の半分を処理することができる。またバラ流通は総流通量の35%と全国平均を上回っている。
◆ CEの環境美化コンクールで意識を向上
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全量集荷し農家の飯米は今摺り米「湖国そだち」として渡している。
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近江米振興協会では、CEが県産米の生産・流通の拠点として大きな役割を担っていること、特に良品質で安定した高品位米を求める消費者が増えており、CEの使命はより重要性を増していること。県内CEの能力は、旧A型施設から除湿乾燥方式まで相当に差があり、しかも作期が同じキヌヒカリ、コシヒカリの作付けが70%に達しオペレーターの技術向上が求められていること。さらにCEは食品を扱う工場であること、などから適正な運営管理と環境美化の徹底、作業の安全と品質事故防止をはかるために昨年から「CE運営管理改善・環境美化コンクール」を県内全CEを対象に実施している。
山本さんコンクールを通じて「すべてのCEで”売れるコメづくり”への意気込みを感じた」という。そして「施設が総じて見違えるほど美しくなった」とも。
◆ 西日本最初のCE――稲枝第1号CE
三重県との県境に広がる鈴鹿山脈を背に、愛知(えち)川、犬上川、宇曽川といった一級河川が琵琶湖に注ぐ琵琶湖東岸の彦根市・愛知川町・秦荘町・多賀町・甲良町・豊郷町の1市5町を管内とするJA東びわこは、農家戸数6829戸、耕作面積は5707.6haだがその96%が水田で、JAの販売取扱高の75%を米が占めるという稲作地帯のJAだ。
とくに、彦根市の西南に位置する稲枝地区は、その名が示すとおり稲作を中心として発展してきたところだが、自己完結型農家が多く、機械投資が過剰となり、生産費の増大が大きな課題となっていた。このため、地域ぐるみで土地利用計画をたて、中核的担い手農家や集落生産組織を育成し、水田の有効利用と農業機械の共同利用・効率利用を推進し、地区の特色を活かした土地利用型農業の確立をめざして、昭和42年に西日本で最初のCEを設置した。
この第1号CEの施設能力は米900t・麦524tだが、利用量が増大し、米が施設能力の162%・1460t、麦が同115%・600tに達し、このままでは生産者に対して荷受け待ち時間が長くなったり、荷受け制限をせざるをえない事態が発生したこと、施設の老朽化進んでおり、品質を落としかねないと考え、第2号CEを平成元年から2年にかけて建設した。老朽化した第1号CEは現在稼動しておらず、第2号CEが稲枝地区の地域農業総合センターの一環として稼動している。センターには、平成9年に建設された低温貯蔵タンクと低温倉庫をあわせて1800tの貯蔵能力をもつライスステーションがあり、CEと連結一体化され、販売出荷状況にあわせた調整作業ができる体制になっている。
◆ JA内の施設利用料金を統一
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村田榮組合長
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稲枝CEは、地区農業の振興と経営安定に大きく貢献するだけではなく、「第1回優良カントリーエレベーター表彰」(全国農協CE協議会主催)や近江米振興協会の「CE運営管理改善・環境美化コンクール」で優秀賞を受賞するなど、管理運営面でもすぐれた実績をあげ、稼働率も90%以上というCEだ。
CE運営上の力点としては、操作性の向上による時間短縮などによって乾燥能力をアップし、荷受待ち時間をできるだけつくらないようにしている。また、利用料金についても平成10年から水分16.9%以下は1kg18円、17%以上の場合には、ほぼ1%ごとに1円アップの料金体系にJAとして統一。他のJAでみられるようなCEごとに料金が異なるとか、銘柄別料金、土日加算・平日割引を一切廃止した。
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下見調査をもとに刈取・荷受日を設定――早朝刈取も制限
品質管理と荷受集中対策としては、高水分籾を少しでも低くしてから刈り取るように、CEの荷受開始時間をコシヒカリ、キヌヒカリは午前10時30分から午後8時まで、日本晴は午前9時から午後7時までに決めている。つまり早朝の刈り取りはするなということだ。刈取りについては、品質事故防止の観点からも、各圃場を稲枝地域センターの西澤一敏営農販売課長はじめセンターの職員が下見調査し、適正水分での刈取・荷受日を設定し、集落代表者に通達し徹底することを実施している。こうした指導で一時は水分31〜32%が当たり前という状況から、いまは平均26%という状況になった。
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大規模農家との協力体制を確立――バラ集荷が50%以上
兼業農家が多いためにどうしても日曜・祭日の夕方に荷受が集中するので、集落営農ビジョン(県がすすめている集落営農を中心とした組織経営体)には、平日の刈り取りを要請して集中緩和をはかっている。
また、品質事故防止対策として乾燥能力に応じた荷受体制を守るために、近隣の大型農家とCEの荷受協力体制をつくっている。具体的には、全量飯米農家のコメやCEにはいれられないコメの処理を、大型乾燥施設を持っている農家に委託して処理してもらっている。
個袋ではなくバラ集荷が多いのも稲枝CEの大きな特徴だといえる。生産者は軽トラックなどの荷台に枠をつくりそこに籾をバラ積しCEのダンプ式ホッパーでその荷台を傾けて籾を投入するという方法だ。特定品種であるびわみのりについてはカケ米として全量バラ出荷とし、個人での個袋は一切受けていないが、一般銘柄でも個袋出荷は50%を切ったという。
また農家規模にかかわらずすべての籾を出荷する全量集荷体制をとっているが、農家の飯米については今摺り米13.5kg袋で渡している。なぜ13.5kgなのかというと、30kgの籾を精米すると10%重量が減るからで、2袋でちょうど27kgになり、生産者にも分かりやすいからだと西澤さん。
◆ 広域JAの利点活かし施設の相互利用も実現
もう1つここでユニークなことがる。JA東びわこは平成9年に合併し4年が経過しているが、JAとして施設の利用料金を統一(コメ・麦・大豆・育苗)したことによって、利用農家の地理的利便性と施設の稼動調整による品質事故防止・運営経費の削減、均質ロットの拡大によるバラ集荷・流通による有利販売を念頭に、一定の制限はあるが、地域センター(旧農協)の地域を越えて施設を相互利用・乗り入れを実施していることだ。例えば、稲枝地域で生産された麦類は、稲枝CEではなく彦根のライスセンターに搬入される。多賀地域に近い彦根の生産者は日本晴だけだが、多賀と一緒の方が有利販売しやすいということも多賀のライスセンターに搬入する。こうした例はまだあ
まり聞かないが、広域合併したメリットを生産者に実感させる事例だといえる。
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