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特集:JAグループ経済事業と担い手対策
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座談会 組合員の切実な願いを取り上げ 農業経営の新たな発展を
大規模農家・生産法人との連携強化を 桐原章 JAそお鹿児島農家対策特別班(TAF)主任 |
◆組合員とJAの間の見えないカーテンを取り外すためにTAFを
稲富 私ども全農では、JAグループと大規模専業農家や農業生産法人の方々との関係があまりうまくいっていないケースが多いということで、全国連でありながら「担い手対応室」を設けて農業生産法人の経営実態を調査し、それをどういう形でJAグループとしてサポートしていくかという取組みをさせていただいています。この2年間で250ほどの農業生産法人や専業農家を訪問してまいりましたが、基本的には融資の関係、販売の強化、生産資材の大口メリットの還元がJAに求められています。 桐原 新しい形の部隊をつくった経過ですが、当時の川井田幸一組合長(現・鹿児島県信連会長)のトップ判断で決まりました。TAFができてから、なぜTAFをつくったのですかと聞きましたら、「営農指導員が大規模農家・専業農家などのニーズに合ったような動きをしていない。それを役員になってから担当部署などに何度も指導したが、いつまで経っても動かなかった。それで別部隊をつくろう」と考えたそうです。 ◆苦情を聞き、個別に応えることで仕事がついてきた 稲富 具体的にはどのようなことをしたのですか。 桐原 1つは、大規模農家の苦情を聞くことです。それは組合員の本音を聞く中で少しずつでてきました。第2に技術指導、経営指導を前面に出した経営コンサルタントです。それにどう応えたかというと、まず青色申告などの税務相談ですね。それから鹿児島県には軽油免税制度というのがあります。これは、県税として軽油を使って公道を走る車に軽油税30数円がかかりますが、トラクターとか農業機械は公道を走りませんから免税されるというものです。その手続きをするのは面倒で煩わしいので、それをJAで事務代行しましょうというところから始めました。この手続きをすると大規模農家だと2カ月分くらいの生活費が戻ってきます。その代わりにJAの給油所を利用してもらうことにしました。
稲富 何件ほど訪ねましたか。 桐原 4年間に8名のメンバーで、のべ3万1513戸ですね。 稲富 どれくらいの成果をあげていますか。 桐原 TAFには「ノルマを持たせるな」ということが条件になっていますから、具体的に実績としてはいえないのですが、私たちが指導員と同行して、個別農家の考え方にもとづいた肥料設計とか、場合によってはその農家向けのプライベート肥料をつくりますといった提案型推進などで受注した購買事業実績は、13年度で3億円程度になります。 稲富 大規模農家の苦情を徹底して受けて、それを個別に協議して回答していくことで、JAと担い手のコミュニケーションを良くする。そのことで後から仕事がついてくる、ということですね。 ◆すべての扉を開き、少しでもJAへ向いてもらうように 稲富 JA山形おきたまでは、「ニューファーマーズプロジェクト」を立ち上げ、その事務局として「農業支援対策室」を設置し、すでに2つの農業生産法人に出資するなど着々と実績を積み上げられてきていますが、櫻井さんからその経過と成果をお伺いしたいと思います。 櫻井 大規模農家がどうしてもJAの方を向いてくれない、それは何に原因があるのかと考えると、園芸の職員は園芸の生産から販売まではプロですが、信用事業についてはよく分かっていない。つまり、生産、販売、信用などの現業が縦割りでバラバラに組合員とお付き合いしてきていることが「JA離れ」の原因の1つではないかと考えたわけです。 ◆営農プランナー・アシスタントを各支店に配置して 稲富 8つの行政に広がる広域JAですから、その点でもご苦労が多いでしょうね。 櫻井 行政単位に代表支店を置いていますが、そこに支援対策室に連動し、経営相談もできるトータル的な「営農プランナー」を置こうと考えています。そして、金融だけという支店も含めて代表支店以外の50くらいの支店には「営農アシスタント」を置こうと考えています。 稲富 営農アシスタントはどういう仕事をするのですか。 櫻井 全組合員をまわって、資金の対応、税務相談などに応えることです。技術相談には別に「技術指導班」を設けて対応しようかなと思っています。 稲富 従来は、営農指導員が組合員対応を全面的に受けますということですが、それと営農プランナーとの関係はどう考えればいいんでしょうか。 櫻井 営農プランナーは、金融や経営相談も含めた組合員に対する総合的なコーディネートをする部署と位置づけたいと思います。そして、営農プランナーに優秀な人材を配置しても解決しきれない問題があるとおもいますから、支援対策室やNFPと直結していきたいと考えています。答えを出せなければ、組合員の信頼は得られませんからね。 稲富 この1年、支援対策室の方々が大規模農家をまわっていたわけですが、人数も少ないから限度があったけれど、営農プランナーを代表支店に配置をして管内の大規模農家をまわって意見を聞き、提案をしていこうというわけですね。 櫻井 兼業農家がJA経営の太宗を担っているのは明白な現実ですから、そうした方々に対して営農アシスタントを配置しようという考えです。 ◆活動する中でJA内での理解が深まる 稲富 全農としていろいろ提案をさせていただいていますが、1番の問題は総合的に対応できる人材だといわれますね。あるいはどういう形でそういう人材を教育するか…。 櫻井 経営相談や資金面も含めた総合的な対応ですから、品目担当の経験者ではなく支店長クラスにと思っています。 稲富 TAFのメンバー構成はどうなっていますか。また、総合的な知識の蓄積など教育面はどうしていますか。 桐原 営農指導員はメンバーにはいません。当初、購買事業、販売事業、信用・共済事業にそれぞれ精通しているメンバーを選んでいただきました。年齢的にも全員が30歳代後半でした。これも、上下関係があまり発生しないし、自然と競争意識が生まれるという意味で、これも営業チームをつくるうえでは重要だったと思います。購買には精通しているが金融のことは分からないけれど、金融の相談を受けると、金融に精通しているメンバーに相談する。逆のパターンもありますから、自然といままで専門知識がなかったことにも詳しくなり、レベルが上がってきました。 稲富 TAFの立ち上げ時に営農指導員との間で問題はありませんでしたか。 桐原 TAFそのものがトップダウンで強烈な立ち上がり方をしましたし、人事についてもトップダウンでしたから、軋轢はありました。私たちは指導員が行かない組合員とか、電話1本ですぐ行くため、個人的な苦情を含めて聞いた情報を月1回の組合長・参事ヒヤリングで直接報告しますから、指導員が知らないことがトップに伝わりますので「あいつらはなんだ」「あいつらはスパイだ」と指導員とか部課長からいわれました。 ◆みんなが使える分かりやすいマニュアルづくりも 稲富 作物別に誰に聞いたらいいのか、誰に発注したらいいのか、そして補助金の手続きまで、素人でもすぐ分かるマニュアルを作成されていますね。 桐原 訪問活動のなかで、窓口対応が遅いとかという問題が浮かび上がってきました。合併したのだけれども、傾斜価格が実施されているところとその恩恵を受けていない組合員がいることも分かってきました。これはまずい、合併したからには同じ基準で組合員に接するようにしよう。それからJA窓口で初期段階である程度の答えが伝えられるようにしよう、ということで、自分たちで文書にしたものです。防除暦とか専門的技術的なことは指導員とか普及所、経済連の専門家から資料をもらい、分かりやすく書き直しチェックしてもらいました。 稲富 何種類あるんですか。 桐原 畜産指導員用、農産関係指導員用、購買窓口担当者用と3種類つくってあります。 稲富 ずいぶんきめ細かくつくられていますね。 ◆個別ニーズに対応できる販売専任部署を設置 稲富 生産法人の方と話をしていると、とくにこだわりをもった農産物が、JAの共販や共同出荷になじまないという不満が色濃くでてきています。私は、共選出荷の中に、個別農家の農産物の評価を入れる個選共販とか、JAが瞬間タッチで買取り、販売するという取組みを進められないかと、提案していますが、櫻井さんどうですか。 櫻井 一生懸命つくっても兼業農家のものと一緒に共同計算方式で精算されるのでは、努力が報われないという不満はありますね。そこで14年度から、現状の市場を通して流通する部門と、米や畜産や園芸を網羅し個別に組合員のニーズに対応する販売専任部署の設置、また、こだわりの米をこだわりの米として売っていくための倉庫をつくることも検討しています。 稲富 桐原さんのところでは、畜産、茶で法人経営が多く、TAFができて関係がよくなってきていると聞いていますが、販売面での連携を含めてどう考えていますか。 桐原 茶の組合員の販売、購買のJA利用率が低いんですね。そこでTAFができたときに、一番難しい茶農家を中心に回ろうということにしました。その結果、肥料農薬の利用は当初からすると120%くらいに伸びてきましたし、茶農家の潜在需要量に対するシェアも倍近くになりました。 ◆「ロット拡大 有利販売」の時代は終わった――きめ細かな対応こそ 稲富 JA甘楽富岡では、個別農家ごとの営農計画を提案してそれをJAとして販売していますが、販売の取り組みはどうですか。 桐原 生産面では、土壌診断を含めて個別設計をしていますが、販売面では残念ながらまだ取組みができていません。しかし、販売面での苦情や、良いものをつくっているんだから差別化して売りたいというような相談はきていますので、これからの大きな課題と考えています。 稲富 作物部会を中心とした共販制度ではあき足らないと大規模農家は考えているわけですね。その量は少なくてもいいから、JAが自ら販売し、JAが汗をかいている姿を見せることが大事ではないかと思いますね。そして、食料自給率を45%にするために、自分の地域にJAが自ら販売することはできませんかとご提案しているのですが…。 桐原 TAFとともに営農災害レスキュー隊、そして農家の店「だいこん」が、JAの3大目玉といわれているんですね。「だいこん」は年中無休の資材店で、そこに農産物直販店舗をだしたんですが、大量出荷のノウハウしかないのでうまくいっていませんが、小売ニーズをつかみながら少しずつ進めていこうとしています。 稲富 JA山形おきたまではセブンイレブンを直営されていますね。 櫻井 米沢市役所隣にJAの遊休地があり(1)土地の有効活用、(2)セブンイレブンの経営ノウハウ、(3)コンビニの接客ノウハウ、(4)販売するオニギリの米取引をねらい、3年前に1号店として開店しましたが、いまは日販70万円とコンビニの通常益の2倍を記録しています。これによって、接客態度など小売店のノウハウが分かってきましたから、グリーン店舗職員の研修を行っています。また、30坪の遊休施設を活かしてセブンイレブン2号店とファーマーズマーケットを4月からはじめる計画です。また、4月から販売促進部署を設けて、学校給食や大消費地への対応、地域内小売店への対応、そして宅配に取り組んでいきたいと考えています。 桐原 購買事業でも同じことがいえますね。 稲富 大規模農家や生産法人の方たちとJAグループがタイアップして、その地域でともに営農し農業経営が持続する新たな関係を一緒につくていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。 |