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特集:JAグループ経済事業と担い手対策

インタビュー
JAと生産法人が事業取引できる関係づくりを

松尾英章 JA全農常務理事

 JA全農では平成12年から専任チームを設置して担い手や生産法人を直接訪問して、現場の生の声を収集してきている。農協協会の今回のアンケート調査は、それを客観的に裏付けたともいえる。そこで、これらのデータをもとに、JA全農としてどのような担い手、生産法人対応を考えているのかを松尾英章JA全農常務に聞いた。

◆担い手対応室のデータを客観的に裏付けたアンケート調査

 ――農協協会では2月に「生産法人の経営状況とJAグループに対する意識調査」(アンケート)を実施しました。まず、この調査結果をご覧になりどのような感想をもたれましたか。

松尾英章氏

 松尾 全農は平成12年から総合企画部に大規模農家・農業生産法人を対象とした専門推進チーム・DASHチームを設置し、生産法人の方々がJAやJAグループにどのようなご意見や不満をもっておられるのかについての調査活動を1年間行いました。そして昨年1月には、このチームを営農総合対策部に移し、「担い手対応室」としました。
 すでに200以上の生産法人を直接訪ねて、現場の生の声としてのニーズや要望を整理してきています。資金融資の問題、販売面・購買面での優遇措置とか土地集積への期待が高いというアンケート結果がでていますが、担い手対応室の集めたデータでも同じような結果がでているように、今回のアンケート調査結果は、全農が集めた情報が自分たちの一人よがりのものではなく、客観的な事実だという裏づけがされたと考えています。

◆県域の体制を整備――14年度中には32県に

 ――今後、こうしたデータをどう活用されようとお考えになっていますか。

 松尾 担い手対応室を設置したのは、基本的には大規模農家や生産法人の方々にJAの経済活動とどう強い結びつきをもっていただくかということですから、いつまでも調査活動というわけにはいきません。結びつきを強めていくためには、まず、JAの体制の中で担い手への取り組みをキチンと構築してもらい、それを連合会が支援していくことが基本だと考えています。
 ただ、一気にJAの体制づくりが進まない面もありますから、県連・県本部における担い手対応窓口づくりや人の配置について提案しているところです。

 ――県段階の取り組みの進捗状況はどんな状況ですか。

 松尾 3月末までには、北海道、沖縄を除いた全県連・県本部の営農あるいは企画窓口に働きかけて協議をすすめたいと考えています。なお、昨年12月には、8県連・県本部が参加して、担い手推進の意見交換会も行いました。
 すでに専任体制が整備され具体的な活動をしているのが5県、具体的な行動はまだですが窓口が整備されているのが10県、この4月から取組むことが決まっているのが2県と、17県連・県本部で取り組みが始まっています。14年度には、これを32県連・県本部にする目標で取り組んでいます。
 一方で、DASHチーム設置以来の全農としての調査活動をもとに、JAとの事業取引への接点づくりに、連合会として目標を掲げて取り組んでいます。

 ――具体的な成果としてどのようなものがありますか。

 松尾 担い手や生産法人のニーズが高い農薬の大型規格の紹介など、できるところから取り組んでおり、水稲主体型の方に肥料農薬の接点ができたとか、JAグループで取り扱う新しい生産資材をモニター的に使ってもらうことによるキッカケづくりとか、大消費地販売推進部や集配センターと相談して園芸農家の販売ルートを検討する、などという事例がでてきています。
 アンケートでも、営農関係の情報を「業者・メーカーから直接」得ているという方が多かったわけですが、全農の「アピネス/アグリインフォ」の会員になっていただいたり、「グリーンレポート」を購読していただくなど、情報面でもJAグループとの接点をつくっていくといった、できるところから具体化してきています。

 ――調査活動から一歩踏み込んで、事業としての活動に取り組んでいるということですね。

 松尾 そうです。まだ緒についたばかりですが、事業としての関係づくりに力を入れて取り組んでいるということです。

◆個々への対応はJAが基本、連合会は補完
  ――すでに取り組み始めたJAも

松尾英章氏

 ――JAでも担い手対策に積極的に取り組んでいるところがでてきていますね。

 松尾 海外農産物が大量に入ってくるとか、消費者側のニーズが多様化するといった世の中が変化するなかで、生産者も自分の農産物をいかに有利販売するか、販路を拡大したいと考える人が多くなってきています。それに応えて、JAでも、管内のさまざまな階層にきめ細かく対応し、地産地消、契約取引、市場取引など多様な販売に取り組むという問題意識も高まっています。
 JAそお鹿児島、JA甘楽富岡、JA山形おきたまとか、JA自らが体制を整備して階層別組合員対応や生産法人対応に取り組むJAが増えてきています。そうした優良事例を紹介しながら、モデルJAづくりも進めていく考えで、14年度には10JAくらいに拡大していきたいと思います。
 そして、担い手対応室の取り組みで得た成果を県本部やJAに情報として発信していきたいと考えています。

 ――JA自らが担い手対策に取り組まないと進みませんね。

 松尾 担い手や生産法人の個々のニーズに対応するには、現場密着型でJAにがんばってもらうのが基本ですね。連合会は、新しい技術とか新資材など、生産現場に届ける情報を従来以上に充実していかなくてはいけませんが、個々への対応はあくまでもJAが基本であり、連合会はそれを支援・補完することが役割だと考えています。

◆携帯電話による「営農サポートシステム」も稼動を開始

 ――アンケート結果を見ると生産資材での優遇措置をという期待が大きいようですが、この点はどのようにお考えですか。

 松尾 法人ということだけではありませんが、全農としては肥料での車単位での受渡しとか、農薬での大型規格など、機能に応じた価格の整備を打ち出し、実施しています。今後もさらに品目ごとに検討していきますが、こうしたことを有効に活用していただきたいと思います。

 ――JAから情報がこないという意見も多いですね。

 松尾 全農としては、「アピネス/アグリインフォ」によるインターネットで提供する情報内容の充実をはかっています。
 また、JAと組合員との距離が遠くなっているということがよくいわれます。これを補完し、JA営農指導員と農家組合員の接点・結びつきをより強くするための仕組みとして、携帯電話(iモード)を活用した「営農サポートシステム」を開発し、現在、JA兵庫六甲で4月からの本格稼動をめざしています。
 この営農サポートシステムは、営農相談、メールマガジン、出荷予約、生産資材の当用受発注などの機能を取り入れたもので、まずJA兵庫六甲で活用していただきながら、JAに広めていきたいと考えています。

◆集めた情報をJAへフィードバックする体制づくり

 ――最後に、(社)日本農業法人協会など、生産法人や大規模農家の団体がありますが、こうした団体との連携と14年度の取り組みについてお聞かせください。

 松尾 現在も農業法人協会とは密接に情報交換などを行っていますが、今後もこうした関係を維持し、深めていきたいと考えています。
 担い手対応、生産法人への対応は、JA全国大会でも確認されているテーマですし、国も融資や法人設立条件など優遇措置を打ち出しています。JAにがんばってもらうのが基本ですが、まずは全農が個々の担い手や生産法人の情報収集を行ってきました。その情報をJAにフィードバックして事業取引の接点をつくっていこうとしているわけです。そのために、県連・県本部が一定の体制を整備し、JAへの提案をしていこうというのが、14年度の重点的な取り組み課題になっています。


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