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特集:JAグループ経済事業と担い手対策


2年目に入る中期事業構想にあたって

JA全農 三宅次雄生産資材部部長


◆一つ一つの取り組みを着実に

 ―― 4月から中期事業構想の2年目を迎えるわけですが、2年目にあたり、取り組みの考え方をお聞かせください。

三宅次雄氏

 三宅 今年の1月に生産資材部に着任いたしました。それまでは、支所の次長職という立場で生産資材を含め、全体をみる立場にいました。これから、本格的に生産資材事業に取り組んでまいるわけですが、今までの支所での部門を離れた視点からの経験を踏まえて、現在進めている5か年の中期事業構想を基本に、進めてまいりたいと考えます。
 取り扱い品目は、段ボール、ハウス、農機、施設等と幅広く、対象作物は、お米、野菜、果樹と多岐に渡っております。農業環境の厳しさが増すなかで、様々な農家の要望に応えていくことは大変ですが、それが使命だと思っています。平成13年から5か年の中期事業構想の実現が重要であり、低コスト資材の開発・普及、流通コストの削減、それぞれの品目ごとの事業推進力、さらには環境と調和した農業の推進に、取り組みを強化してまいりたいと考えます。

◆すすむ段ボールの茶色箱化

――全農は生産資材コストの低減を平成13年から17年の中期事業構想の中で、大きな柱の一つと位置付けております。段ボールから・・・。

 三宅 段ボール箱は、青果物を産地から市場や量販店まで届ける際、青果物の品質保持、取り扱いやすさなどの点から、現状では最も適した輸送容器です。ですから大半の青果物は段ボールに詰められて輸送されています。
 表地が白色やカラーの段ボール箱から、地色を活かした茶色箱に切り替えることによって、約5〜7%のコスト低減効果が見込めることから、全農では青果物用段ボールの「茶色箱化」をすすめてきています。平成7年度から取り組んできましたが、現在では、ほぼ全県で検討が進み、平成13年度末の見込みでは全農が取り扱っている10億ケースの約45%が茶色箱といえるところまでにきました。
 また、段ボール箱を構成している紙自体のコストを下げることも重要です。全農では、単に安い紙を使うのではなく、青果物を中に詰めて輸送する際の水分による劣化を最小限に抑え、かつ低価格の段ボール原紙をメーカーと共同開発しました。この青果物用低コスト原紙を使用した段ボール箱について、全国各地で実証のための輸送試験を実施しており、試験結果をふまえて、全国のJAでの利用をすすめていきたいと考えています。

◆低コスト耐候性ハウスの普及

――園芸施設の低コスト耐候性ハウスはどうですか。

 三宅 園芸用ハウスについては、鉄骨ハウス並の耐風強度があり、かつ廉価な「低コスト耐候性ハウス」があります。これまで農水省を中心に普及・実証の取り組みがされてきましたが、全農においても経済連や関係機関と連携し、「低コスト耐候性ハウス」の本格的な普及・取り扱いを計画しています。

◆HELP農機の普及拡大と広域部品センター

 三宅 また、従来型式に比べて単品で1〜2割安価なHELP農機は、195型式となり、トラクター・田植機・コンバインの本会取扱台数の53%となりました。引き続き、普及に努めてまいります。13年度は野菜移植機でHELP農機を設定しました。今後は大型機械での検討が必要になっています。
 また、広域部品センターは、山陰で稼働し、2年が経過しました。EOS発注率(Electronic,Ordering,System)も年々向上し、即納体制やサービス面でもJAから評価を得ています。

◆廃プラ対策の取り組み

――環境と調和した取り組みで、廃プラ対策はどのように考えますか。

 三宅 産地で使用された農ビや農ポリなどの使用済みプラスチックの適正処理については、JAグループとして各地域の「使用済プラスチック適正処理推進協議会」や行政と連携して、生産者が事業者としての責任を果たせるような仕組みづくりに取り組んできました。全農では「農ビ農ポリ等再生処理研究会」を設けて、再生処理技術の現状と課題や再生処理施設の運営の仕方などについて調査し、取りまとめました。今後は回収の適正化、再生処理施設の運営改善などについて、研修会等を通じて広く普及していきます。
 また、排出量の抑制も重要になってきます。このためには、展張期間を伸ばして張り替え頻度を少なくできる「中長期展張フィルム」の導入や、使用後には土中にすきこむことで微生物に分解される「生分解性プラスチックマルチフィルム」の開発・普及などの取り組みを進めていきたいと考えています。

◆新たなニーズへの対応

――施設事業については・・・。

 三宅 昨今のJA合併の進展と経営の厳しさからJAの投資意欲は大幅に減退したこともあって、補助事業のみならず事務所、店舗等の事業関連施設の計画も縮小・中止傾向にあり、まさに事業的には真冬といった状況です。ただしJAにとっては、固定資産管理にかかる費用は膨大ですし、補修、改修することは当然必要ですから、その費用も増えることはあっても減ることは無いといえるでしょう。つまりJAの経営管理や収支改善をはかる上で、固定資産管理について合理的でかつ専門的な提案活動が私たちに求められる機能であると考えています。
 このことから、全農が開発したJA−SKSの普及と診断・調査・提案を実施してまいります。このシステムは農業施設はもちろんのこと、JAの所有するすべての施設を調査・診断しデータ化します。そして、老朽化の進み具合や危険度を勘案したうえで補改修計画や諸施設の統廃合プラン策定等、まさにJAの経営計画に直接反映できるものです。自信作ですので、将来は全JAに導入願いたいと思っております。

――JAグリーン事業については。

 三宅 JAでは、合併が進むなかで、支所購買店舗をどうするのかということが大きな課題となっています。JAグリーン店舗では地域の実情に合わせて、生産資材ばかりでなく、野菜や花きの取り扱いをおこない、農家ばかりでなく地域の皆さんにも好評を得ています。全農には、基本的なノウハウが備わってきたと思っています。あとは地域の状況を加味していただければと考えています。JAと一体となって店舗設置を検討していきたいと思います。

――農住事業については。

 三宅 大都市圏の市街化区域内農地の都市的活用をはかり、組合員の資産保全を目的とした事業ですが、一方で、都市住民に快適な住環境を提供するという社会的意義のある事業と思っています。
 賃貸住宅の過剰感の中で、事業は低迷していますが、農家の賃貸住宅経営の支援強化を中心に取り組みを進めていきたいと思います。

◆JAと一体となって、農家を支援

――最後に今後の抱負をお願いします。

 三宅 厳しい農業環境のなかで、少しでも、事業を通じて農家を支援していきたい。農業機械も農業施設も、園芸資材、段ボールも、全て農家にとって無くてはならいものばかりです。全国のJAと一体となって、取り組みを強化していきたいと思います。


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