| |||
特集:安心・安全で環境に優しい畜産をめざして ――JA全農畜産事業の挑戦 |
|
消費者ニーズに応えた新たな畜産酪農政策の確立を |
畜産は日本農業の総産出額の28%を占める基幹部門だ。しかし、輸入畜産物の増加による価格低迷などによる経営圧迫、生産者の高齢化・担い手不足、安心・安全への取組強化、環境対策など、課題もあり、現状と課題を概観してみた。 和子牛生産の強化が課題―肉用牛 肉用牛の生産量は、平成8年以降部分肉ベースで38万〜36万トンで推移していたが、13年9月のBSE発生による国内消費量の激減、価格の暴落など甚大な影響を生産者はこうむった。その後の全頭検査体制の導入をはじめとするBSE関連対策がとられたことで、消費は徐々に回復し、最近はほぼBSE発生前の水準に回復してきている。 消費者の「安心・安全」への関心の高まり BSEの発生によって、消費者の「安心・安全」への関心が高まり、「トレーサビリティ」という言葉はごく日常的な言葉として使われるようになった。BSE対策特別措置法にもとづいて、牛の生年月日、移動履歴などを追跡できるように牛への耳標の装着とデータ入力が進められ、10月からはインターネットを通じて一般公開されている。今後さらに、固体識別を生産から流通・消費にいたる各段階で義務づけるトレーサビリティ法案についての検討が進められている。また、トレーサビリティのJAS規格についても検討が進められており、15年度からJAS規格にもとづく表示が導入される見通しになっている。 生産基盤の維持強化対策を―養 豚 豚肉については、平成2年以降、生産者の高齢化と担い手不足、環境問題などから国内生産量は減少傾向にある。2年に4万戸余あった生産農家は、最近は減少が鈍化しているものの、小規模層を中心に年10%前後減少し、現在は1万戸となっている。 進む大規模集中化―鶏肉・鶏卵 ブロイラー(鶏肉)についても、口蹄疫やBSEの影響から、牛肉代替需要が高まり、価格も堅調に推移している。国内生産量は、昭和63年以降減少傾向で推移しており、その分輸入が増加してきている。生産農家も小規模農家を中心に年3%前後減少しているが、1戸あたり飼養頭数は増え、確実に大規模化が進み、10万羽以上飼養する生産者のシェアは、ほぼ88%(13年度)となっている。 生乳の需要安定対策を―酪 農 酪農については、生乳生産が13年7月以降、副産物収入の低下を生乳生産増でカバーしたこと、都府県向更新牛の滞留により北海道での生産が高まったこと、都府県でのBSEによる廃用予定牛の滞留などから、生産の減少に歯止めがかかった状態となり、全体として増産傾向にある。また14年度から後継牛確保のための対策が措置され、さらに増産傾向となることが想定されている。 土地基盤に立脚した経営育成を 食料・農業・農村基本法を受けて、自給率向上の観点から、現在、94万haの飼料作物作付面積を平成22年に110万haに拡大することを目標に、自給飼料増産運動が展開されている。また、コメの生産調整対策として、ホールクロップサイレージの積極的に取り組み地域があり、14年計画では3300haが見込まれている。さらに国産稲わら利用の取り組みも推進されている。 |