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特集:あなたの元気が、わたしの元気
    家の光協会「元気キャンペーン」のめざすもの

広域JA時代を迎えて期待される家の光協会の活動
山本昌之(社)家の光協会専務理事に聞く

 本格的な広域JA時代を迎え、地域に果たすJAの役割として、より一層協同組合らしさの発揮が期待されている。その核をなすのが「教育文化活動」だ。(社)家の光協会は、JAの教育文化活動の充実・活性化を支援しているが、今年度から「元気キャンペーン」を展開する。スローガンは「あなたの元気が、わたしの元気」。協同組合の基本的価値のひとつ「他人への配慮」を分かりやすく表現した。キャンペーンの狙いと新年度の事業計画について、山本昌之専務理事に聞いた。

−−家の光協会は、「人が元気・組織が元気・地域が元気」という「元気キャンペーン」を展開していくとのことですが、このキャンペーンを展開するに至った背景についてお聞かせください。

山本昌之氏
 (やまもと まさゆき)昭和19年和歌山県生まれ。京都大学農学部卒業。昭和42年(社)家の光協会入会、平成3年東京第二支所長、平成6年普及局次長、平成7年総合企画局長、平成8年総務局長を経て、平成9年常務理事、平成12年専務理事就任。

 山本 私たちは、平成12年度に「家の光事業基本構想」を策定しました。その年は、ちょうど『家の光』創刊75周年を迎えた年ですが、この伝統と歴史を、ただ充実・改善の方向で継承してゆけばよいというだけではJAグループに果たす役割や期待に応えられない、という問題意識から改めて基本構想を考えたわけです。
 基本構想では家の光協会の「3つの役割」と「大切にしたい5つの考え方」(別掲)を決めています。さらにこれを受けて平成13年度からの中期3カ年計画も策定し4つの事業目標(別掲)を掲げました。

 ところでJA合併の推移をみると、基本構想を策定した平成12年度では、合併構想の達成率は60%台でしたが、この4月には80%を超えましたね。まさにJAといえば大型合併JA、という時代になったといえます。
 こういう状況のなかで、合併して4、5年を経たJAのなかに改めて『家の光』を積極的に活用するなど教育文化活動を重視して、事業、運動を展開しているJAも多く出てきています。大型合併JA時代になったことについて、家の光文化賞の審査委員長をしていただいている東大名誉教授の川野重任先生は、これからのJAは合併のスケールメリットを出すことが求められていると同時に「協同組合の理念を合わせて追求しなければならない」と強調しています。ただ、一方では教育文化活動を重視していただいているJAはまだ多くありません。

 そこで昨年、学識経験者や家の光文化賞受賞JAの組合長さんおよび研究者で構成する「JA教育文化活動活性化委員会」を立ちあげて、今後のJAのあり方について議論しました。委員会の議論では、合併JAの事業推進は大変厳しいという認識になりましたが、そういうなかでも、やはりJAは協同組合であり、人の組織だ、もう一度足もとから見つめ直すべきではないかという方向が打ち出されました。そして最終的にはそのキーワードは教育文化活動ではないかということです。

 今、JAへの結集力、求心力はどうなっているのか、5年先、10年先は大丈夫なのか。たとえば、組合員の平均年齢も5年後にはどうなるのか、それにともなって次世代の組合員へ出資金は引き継がれるのか。
 あるいは、信用事業、共済事業についても、多くの組合員によって多くのシェアが占められればいいわけですが、特定の組合員で多くのシェアを占めている現状があります。その特定の組合員が高齢になって相続するような場合、果たしてそのときそもそも組合員として残るのかという危機意識も持つべきだという議論もありました。

 やはり地域に果たすJAの役割を考えると、准組合員を含めた地域住民にJAに対して関心をもってもらうことが大切になっていると思います。地域の人々に関心をもってもらう求心力をJAがいかに持つか。それが教育文化活動だろうと改めて考えているわけです。

 −−JAの教育文化活動の支援という家の光事業機能の発揮がますます求められている時代になったということですね。

 山本 その事業機能を当協会としては『家の光』をはじめとした3誌と図書で具体的に広めていく役割があるわけですね。ですから、『家の光』は「協同組合の家庭雑誌」としてJAと組合員のコミュニケーションのツールの機能を持つ媒体で、ただの雑誌ではないということです。実際に『家の光』を使ってJAとして元気に事業を展開しているところもあります。つまり、家の光協会の事業を一言でいえば、「元気を出そうよ」という情報発信をしているといえます。
 ですから、今回は、家の光協会とは何をやっているのかと問われたら、まず「元気キャンペーン」を展開しているところだと理解され関心を持ってもらうということですね。それはとりもなおさず家の光事業の求心力を高めようということでもあります。
 こういう考えで「あなたの元気が、わたしの元気」というスローガンのもと「人が元気・組織が元気・地域が元気」キャンペーン(「元気キャンペーン」)を展開していきます。

 先行きが不透明で不安な時代ですから、本当に家庭から元気を起こして、女性部もJAも元気になろうと。そして、JAは地域の核ですからJAが元気になれば地域も元気になる、地域が元気になれば、また一人ひとりも元気になっていく。こういう元気のスパイラルを巻き起こしていこうじゃないかということです。
 ただ、この元気キャンペーンを展開するうえで思ったのは、カラ元気で終わってはいけない、ということです。そこで、カラ元気にならないように家の光協会のすべての発行物をこのキャンペーンのベクトルに合わせようと考えました。それから、JAや地域で『家の光』の記事活用や文化活動が行われていますが、地域で元気な活動をしていくためのフォローアップにも取り組んでいきます。

 さらに、元気キャンペーンを発信する家の光協会の役職員も一人ひとりが元気を出す仕組みをつくるために、「元気キャンペーン推進本部」を設置し、日々の仕事がこのキャンペーンを推進しているのかどうかを検証していきます。また、現場レベルでも元気キャンペーン推進委員を設置して、職場からも元気を起こし、本当にカラ元気で終わらないようにしていこうと考えています。
 やはりこれだけのキャンペーンを展開する限り役職員が一丸となって、元気な情報、元気な姿勢、元気な心を持った対応をしていかなければならないということです。発信元がそうなればわれわれとふれあっていただく方にも元気を感じていただけるのではないでしょうか。


◆「ニーズに応える」から「ニーズを超える対応」へ
  −−14年度事業計画と今後の教育文化活動の展開

 −−「元気キャンペーン」とベクトルを合わせるという14年度の事業計画のポイントをお聞かせください。

全国家の光大会
第44回全国家の光大会は
福岡県で開かれた

 山本 おもな事業の課題としては、まず広域JAを中心に長期読者拡大運動への取り組みがあります。『家の光』4月号までの長期読者拡大部数は223JAで約2万8000部を達成しました。JAの大規模化で1000部以上増部JAが6JAあるなど、1JAあたりの増部数は増えています。
 ただ、一方で減部もあり、4月号でみると全国平均の普及率は16.1%となっています。中期計画で掲げた普及目標「全JAで20%以上」を目標に取り組みを強化していかなければならないと考えています。
 それから、記事活用・文化活動の点では、記事活用ミニグループの育成を平成7年に呼びかけましたが、今や全国で2300グループほどもできています。読者のみなさんが4、5人から10人程度集まったグループですが、家の光記事を活用して自分たちの暮らしをよくしていこうという芽が出てきているということですね。こういう芽を大切にしていくことが課題です。

 今年2月、福岡で開催した第44回全国家の光大会の記事活用体験発表では、本大会に残った発表者6人は48歳から51歳でした。やはり40代から50代という女性部のなかでも、また地域でも本当に中核となる層が活躍しているわけで、われわれとしてもこの層に活用される、この層にがんばってもらえるJA運動が大切ではないかなと思っています。
 それは一方では、もっとも危機意識を持つべきなのは、先ほども指摘したように組合員次世代対策だということを示しているともいえます。そのため、この層の人たちに向けた協同組合学習のための新たな資材開発も今年度の重点事業にしています。
 それからもう一つの課題として、広域JA時代にあってはトップ対策が重要だということです。

 これまでもトップフォーラムなどを開催しており参加者は増えているんですが、もっと参加してもらうためにわれわれが実施してきたトップフォーラムなど教育文化活動の理解を促すような研修会、イベントのあり方を総点検しようと考えています。たとえば、研修会のタイトルも「広域合併JAを成功させるには」といったテーマにするなど、トップ層の関心を集められる形態も工夫できないかと思っています。

 −−今後の教育文化活動と家の光事業の方向についてどう考えておられますか。

 山本 最初に紹介した「JA教育文化活動活性化委員会」では、本格的な広域JA時代を迎えて、協同組合らしさに根ざした事業経営・組織運営の方式を確立し実践する「新しいJAづくりの時代」になったとの認識を強調しています。

 そこで、私も含めて常勤役員はできるだけJAの現場に足を運んでいます。広域JAの現場に学ぶことを重視し、また、JAが抱えている課題解決にわれわれがどれだけお手伝いできるか、それに現場で答え、それを積み上げていく取り組みも大切だと考えています。
 こういう取り組みのなかでとくに教えられたキーワードは、今は、「ニーズに応える時代ではない」、「ニーズを超える対応をしなければならない」ということです。JAの組合員のニーズは多様化していますから、しばしば「ニーズに応えなければならない」と言われてきましたね。しかし、そうではなく、組合員から「そう、そういう対応をJAにしてほしかったんだ」と言われるような対応こそが今、求められているわけです。

 JAがそのような対応を考えたとき、われわれは全国のさまざまな事例を持っていますから、JAに情報伝達してお手伝いすることができるわけです。
 全国家の光大会の記事活用体験発表は、本番では6人しか選ばれません。しかし、そのバックにJAレベルで大会前の1年間に980名ほどの方が体験発表をしています。こういう積み上げの結果なんですね、全国大会は。

 こういう動きを見ていると私自身も先輩から言われてきましたが、協同組合とはつねに組織化の過程にあるものということを改めて思い起こします。毎年、組織化していくために『家の光』を使っていく、と考えてもらえればいいと思います。つまり、JAの教育文化活動とは広域JA時代における新しいJAづくりのため、JA全体を活性化させる取り組みだと考えています。


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