企画制作、記事活用・文化活動、普及などの具体的な事業も今年度は「元気キャンペーン」とベクトルを合わせて展開、「食と農」、「協同組合学習」、「小グループ活動」、「子どもとの活動」を軸に多彩な取り組みが計画されている。おもな事業部門の今年度の計画を聞いた。
◆コンセプトは「協同組合の家庭雑誌」
山崎誠 家の光編集部編集長
14年度の事業計画で『家の光』を「協同組合の家庭雑誌」と明確に打ち出した。地域における協同組織・運動の再構築のため、JAと組合員、地域住民との結びつきを強めるコミュニケーション・ツールとしての機能を果たすことをめざす。
そのため元気キャンペーンを目に見える形にする誌面づくりに取り組んでいく。
同キャンペーンの柱のひとつ「食と農」を軸にした企画では、“地産地消”がテーマ。
地域の農産物に焦点をあて、女性部による直売所の活動、消費者との交流、国内農産物を使った料理記事などで、家族の健康への配慮、地域資源の再発見というテーマを読者に訴え、人、地域の元気づくりにつなげる方針だ。ファーマーズマーケットなどの紹介では男女共同参画社会も視野に入れた記事づくりを心がけるという。
また、家庭園芸記事であっても、自分で作る喜びや直売所で売る楽しみを伝えると同時に、「農」の活性化につながる企画として捉えて編集する。
昨年12月からJAの組合長へのロングインタビュー「新・協同のこころ」がスタートしている。
取材には2〜3日とじっくり時間をかけ、掲載ページ数も毎回、6ページと同誌としてこれまでにない企画だ。この企画は「協同組合学習」を軸にした元気づくりに即したもの。
「JAトップに取材し、協同組合人としてどう生きてきたか。そして今の時代の“協同”についてどう考えているのかなど描いていきたい」と山崎誠編集長は語る。
「小グループ活動」を軸とする元気づくりもテーマだが、これについては同誌の基本的な特徴、「実用・活用・読者参加」に即した企画として打ち出す。
たとえば、食の安全性と表示問題を考える企画では特集「ラベルママになろう」(5月号)と実用記事のスタイルで作成。単なる解説記事ではなく、食品表示の知識が実際に身につくようイラストも多用するなど工夫も凝らしている。環境問題を考えてもらう企画も「ゴミ・ダイエット」という実用的な視点から語る。そのほか、限られた時間に仲間が集まって活動できるよう「60分でハンドメイド」といった切り口で料理や手芸の記事を編集したり、「Aコープマーク商品を使った料理教室」など、読者が「活用」する現場に役立つ企画を心がけ、仲間と学び合う文化活動を支援する。
また、次世代の子どもをめぐる企画では、同誌は読者の子育ての悩みに応える企画を連載している。教育専門家が寄稿する「親と子の事件簿」やJA共済の「健康・介護ほっとライン」に寄せられた相談を紹介する「すこやかほっとライン」などのページがある。
さらに「グリーンジャーナル」では、JAグループの事業を分かりやすく紹介するコーナーも設けており、5月号では新年度から新たなにスタートした「JA共済しあわせ夢くらぶ」の解説を行っている。ペイオフ解禁前には、新たなJAバンクシステムについても解説した。
山崎編集長は「JAグループの事業の解説など組合員とJAの職員の会話のきっかけになる記事も心がけている。コミュニケーション・ツールとしての役割を発揮していきたい」と話している。
◆仲間づくりのネットワーク化を支援
前田俊昭 文化センター文化部長
元気キャンペーンに対応する記事活用・文化活動の取り組みでは「気のあった仲間とのつながりを支援したい。元気が出るネットワークをつくるための提案活動に力を入れる」と前田俊昭部長は話す。
具体的には、家の光専門講師活動の活性化をあげる。家の光協会の事業計画を十分に理解しているJAの生活指導員のOBなどに依頼して研究会を立ち上げ、現場を活性化させる講師活動のあり方を検討する。
また、従来から実施してきた「JAライフプラン&家計簿記帳セミナー」も開催内容を改めて検討する。今後の検討課題としているのが、JAのFP(ファナンシャル・プランナー)を中心にしたライフプランの提案を考えており、JA全中と連携してモデルケースづくりを行う予定だ。
JAレベルで家の光大会が開催されているが、今年度は広域JAでの開催を積極的に呼びかけていくという。これまでに開催された全国の事例を収集、分析し、JAの家の光大会としていくつかのメニューに整理し提案していく事業を展開する。
同時に、家の光の記事活用を前提にした新たな教養文化講座の開発にも力を入れる。狙いは、女性部、フレッシュミズなど地域のリーダー的な女性の育成にもあり、この講座によって新しい活動が生まれることも促進したいという。
「JA家の光クッキングフェスタ」の拡充にも取り組む。同フェスタは、料理研究家が各地を訪れ、1泊2日などの日程で女性部員などに指導するもの。女性部には従来から期待されているイベントだ。13年度は15JAでの開催にとどまったが、今年度は都道府県から各1JA、計47JAでの開催を目標にしている。また、「家の光」7月号の付録をメイン教材にしたJAでの料理教室も積極的に呼びかけることにしている。
家の光協会では、記事活用小グループづくりを平成7年から呼びかけてきており、現在、全国で2100グループほど誕生しているという。4、5人から多くても10人程度のグループで共通の興味から記事活用し、自分たちの暮らしに役立てようという取り組みだ。現在、この小グループの活動を紹介した冊子「楽しい予感」を発行し情報提供を行っているが、今後は県内やJA管内で小グループ同士の交流会が活発化するような支援策を打ち出して元気な活動を促進する方針も掲げている。
また、記事活用については新たに記事活用の「手法」の研究も行う。モニターを選んで検討を委嘱、毎月、「家の光」を精読してもらい記事活用のアイデアを出してもらい、いずれはその意見を集約して情報発信していく予定にしている。
来年2月の「全国家の光大会」は45回を迎えた記念大会となる。その成功に向けた活動も大きな課題。全国大会で記事活用体験発表するのは6人だが、JAレベルでの発表者は13年度では900人以上になるという。全国大会はこうした積み重ねの上に開催されていることになる。まさに記事活用グループの育成など、「元気づくりの取り組みが記念大会の成功をもたらすことになる」と前田部長は話している。
◆JAへの結集力高めるバックアップ体制をつくり提案活動展開
大竹裕之 教育文化活動活性化プロジェクト事務局長
昨年までの広域JAプロジェクトが新年度からは「教育文化活動活性化プロジェクト」として新たな活動を展開する。
昨年、JAトップや教育文化活動担当者、学識経験者、家の光協会役員などから構成された「JA教育文化活動活性化委員会」の報告では、本格的な広域JA時代を迎えて、スケールメリットを生かしつつ、協同組合らしさに根ざした事業経営・組織運営の方式を確立し、実践することが求められている新たなJAづくりの時代に入ったと提言した。
しかし、一方でJAを取り巻く問題点として、「組合員の結集力の弱まり」を指摘し、このまま放置すれば事業経営も組織運営も困難さが増すとした。
そのうえで結集力を強化するための3要素として
(1)JAの事業・活動の魅力、
(2)参加・参画度、帰属意識の向上、
(3)教育文化活動による学習活動、
を上げ、これらを実現するには「教育文化活動の活性化が必要」だとしている。
その活性化に向けた取り組みの方向としては、「教育文化活動の理念の確立」、「先進事例の学習」、「女性組織や青年組織の中核的リーダー養成や組合員次世代対策」、「幅広い層の結集を促す楽しくてためになる生活文化活動の開発」、「協同組合学習資材の普及活用戦略の確立」などと整理された。
同プロジェクトはこのような提言をもとに「JAに向けて具体的な提案活動を行っていくこと」が目的だと大竹裕之事務局長は話す。
プロジェクトの構成メンバーは、局長、部長、編集委員、文化委員など家の光協会のトップクラスの職員14名。家の光事業に携わってきた豊富な経験をもとに、元気キャンペーンに即して「食と農」、「協同組合学習」、「子どもとの活動」などの具体策のプランニングや普及文化活動などの支援を普及局と協力しあいながら、バックアップする。
プロジェクトのメンバーがJAに直接出向き、相談や意見交換などを積極的に行う方針である。
とくにJAトップ層を中心に「広域JAにとって協同組合らしい事業展開を図ることの重要性を訴えていきたい。家の光協会のすべての事業機能を発揮し、教育文化活動の活性化に向けた提案活動に力を入れていきたい」と大竹事務局長は意気込む。