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特集:2003 おんなたちのPOWERで「変革」の風を −第48回JA全国女性大会特集− |
特別インタビュー |
女優の高橋惠子さんは北海道の酪農家で生まれ育った。子どものころ農作業の手伝いもしたことがあるという高橋さんは「農家に生まれてよかったのは、自然には逆らえないことを知ったことで自分自身の基礎になっています」と話す。インタビュアーをお願いした成澤泉さんはJAぐんま女性組織協議会のフレッシュミセス部会副部会長で酪農を営む。朝の搾乳を終えて駆けつけた成澤さんに高橋さんから逆に「休みはあるんですか」との気遣う質問も。消費者においしい食べものを届けたいと語る成澤さんに「食べものは人間をつくるとても大切なもの。誇りをもって活気を生み出してほしい」と高橋さんはエールを送る。 |
◆「助け合い」を実感した子どものころ
生活を楽しむのは女性のアイデア
成澤 高橋さんは酪農家で生まれ育ったそうですね。 成澤 お手伝いもされたわけですか。 高橋 北海道ですから、じゃがいも、にんじん、デントコーン、そのほかにビートも作っていましたし、牧草もありましたから、親にくっついて畑で間引きをしたり、じゃがいもを植えるときは、そのころは全部手作業でしたから、植えては土をかけてということを一緒にやったり、手伝うというよりもほとんど遊びの気持ちで楽しんでました。 成澤 そのころの思い出は大切なものなのでしょうね。 高橋 両親は私が8歳のときに酪農をやめましたが、やはり私自身の基礎を作ってくれたのがそれまでの時期だと思っています。
成澤 それは私たちの農協女性部のはじまりのころのことでしょうか。 高橋 そうなんでしょうね。小学校の1年、2年のころですが、よく記憶に残っています。おそろいの服も作ってましたよ(笑)。 成澤 それは、とても活発な活動ですね。 高橋 年に1回、温泉にも行ってました。阿寒湖や摩周湖が近くですから、そこに行って楽しむということもあったようです。 ◆人と土、人と作物、人と人 成澤 女優になり、その後、母親になってからも女優業を続けてこられたわけですが、そういう忙しい生活のなかで食についてはどんな注意をされてきましたか。 高橋 なるべく人工的な保存料とか着色料などが入っていないものを、自分で作れるものは自分でと考えていました。昔から、味噌汁は煮干しから出汁をとります。今朝も作ってきたんですよ。 成澤 特別に手の込んだ食事じゃなくても、簡単なものでも違うということでしょうね。 高橋 私はおにぎりが大好きで、死ぬとき最後に何が食べたいと聞かれたら、おにぎりって答えるほどですが、それはおにぎりには握る人の気持ちが入るからなんです。そういう食べものを食べると元気になる。でも、誰のためにというのじゃなくて、機械でたくさん作ったようなものは食べてもピンとこないですね。やはり気持ちを込めるということが大事なのかなと思います。 成澤 今は酪農ヘルパー制度というのがありますが、それでも月に1回程度ですね。牛も生き物ですから搾る手が変わるとうまくいかないんです。 高橋 ええ、それは分かります。子どものころ乳を搾ったこともあるんです。気にいらない人が搾るとバーンと蹴飛ばして、せっかく搾った乳がバケツごとひっくり返されたり。牛にも性格があるんですよね。それ以来、搾ったことはありませんが、牛の乳頭は4つ、胃袋も4つ、ということはちゃんと覚えました。(笑)。 成澤 昨日の夜、子牛が生まれたんです。やはりかわいいですし喜びですよね。だから、何とか苦農にはしたくないと思っています。 高橋 日本のなかから農業がなくなったら本当に大変です。これは国に言いたいことです。農業は元ですからね。全部輸入で賄ったらどうなりますか。食べものは、やはりその土地でできたものが、その土地に住んでいる人にはいちばん合うと思います。そういうふうに自然できているはずです。ですから、農業に力を入れて夢のある仕事に変えていくということが大事じゃないかと思います。 成澤 それは残念でした。昨日の夜、産まれたばかりだから今日はお持ちできませんでした。 高橋 本当においしいですし、酪農をやっている方の楽しみでもあると思いますよね。 成澤 冷凍で良ければお送りしますけど。 高橋 いえ、いえ、やっぱりその土地に行って食べないと(笑)。 ◆大変さも素晴らしさも子どもたちに伝えて欲しい 成澤 今のお話にも関係することですが、高橋さんは昨年、100万人のふるさと回帰運動の記念シンポジウムに出席されて、都市と農村との循環の大切さについてお話されていましたが、そのために農村の女性たちに期待されることは何でしょうか。 高橋 たとえば、農村に学びに行く、遊びに行くという企画を考えてもらうことも大事ではないかと思います。やはり都会の人には知らないことが多いと思うんです。それは農業について関わり合いが今までなさ過ぎだからですね。その仕事のすばらしさも大変さもまず分かってもらうことです。そこを分かってもらうことが、将来、その子たちが仕事を選択するときに、農業をやっていこう、とても大事な仕事だから自分はこれを選択しようという人が出てくることにもなると思います。 成澤 先日、私たちフレッシュミセスの全国大会があったんですが、そのときの話し合いのなかで農業の技術や農薬などに対する知識をまず自ら高めようということと、もうひとつは生産者と消費者との関わりを持ちたいという意見がたくさん出ました。これは双方から求められていることだと思っています。 高橋 ものをつくるときに、効率化だけで考えていたのでは、さっき話したおにぎりでもそうですが、気が入らないんです。 ◆曲がったきゅうりは当たり前 成澤 そうですね。おいしいものを食べてもらいたいということはみな考えているんですが、消費者にまだ伝わっていない部分がある感じがしてそこが歯がゆいという気もします。 高橋 曲がったきゅうりでも売れるようにはならないんでしょうか。曲がっているのが本来の姿なのに、人間の便利さのためにまっすぐにさせられているんですよね。 成澤 最後に改めて農業に携わっている女性に向けてメッセージをお願いしたいのですが。 高橋 ある先輩の役者さんが、1本の大根を作るのって大変なんだよ、でも誇りを持って大根を作っている農家の人たちに負けないように、感動してもらえる芝居をやらなきゃいけないんだ、と言われたことがすごく心に残っています。 成澤 今日はありがとうございました。
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