◆「道北型」の栽培スタイル
JAきたそらちの13年産米の作況指数が103だからまずまずの良結果である。管内の米作りは例年安定した生産地帯。平成5年のあの大冷害の時でも管内は指数90を保ったくらいだというから、気象条件と品種に合致した「道北型」の栽培スタイルが地に着いているのであろうか。
約100万俵の生産量を誇るなか、毎年数%の縁故米などを除きほぼ100%近い集荷率。それは表をみても一目瞭然である。
13年産は、12月中には1等米として100%目標に、出荷できるように営為努力中だという。
全国的にはJAへの集荷率が低下しているなかで、なぜそんなに集荷率が高いのですかと問うと、農業振興部組合員課の正田課長は「いくつかの要因があると思いますが、1つにはJAと組合員との間にかわすクミカン取引でしょう。道内独自の営農計画書に基づき組合員勘定口座を設定し、年間の生産販売計画を進めます。お米で言いますと、横流し防止のためのペナルティ(1俵・千円)もあります。毎年のことですから、組合員の営農計画書への契約意識はかなり高いものがあります」と説明する。
同時に集荷時期、営農計画書の出荷契約数量が、実際に日々確認作業をする米穀営農担当者(7人)を中心とする1カ月のライスターミナルでの不眠不休の努力は多大なるものがある。
また紺野組合長が「業者の動きもありますが、基本的には農協と組合員との絆が強いのだと思います。根源を辿れば先祖である明治の屯田兵以来の組合員の集落に対する愛着の濃さもあるんでしょうね」と語る点も見逃せない。
◆コープとうきょうとの産地連携も
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紺野勝栄組合長
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さて新ブランド米として期待される「ほしのゆめ」は、13年産で5作目。それでも全体の30%の生産量を占めるまでになった。品種特性は「あきたこまち」に似たタイプで、消費者の受けはいいようだ。生産上は「きらら397」に比べ、いもち病に弱く、もみ割れなどを起こしやすく、結果的に茶米になりやすいなどの弱点を抱えている。
それでも近年はどちらも安定した生産ができるようになり、道内食米としての比率が60%(12年産)前後まで高まった。
ところでJAきたそらちは、合併前の旧イチヤン農協時代から「コープとうきょう」と、20年来(昭和56年から)の米の産直連携を続けてきた。道内農協としては初の試みだったと。政府による全量買い上げというスタート時の状況のなかで、生産者が「キタヒカリ」1俵に付き300円のとも補償までして販売したというから米販売への意欲が伝わってくる。
さて、9月に食糧庁から「米政策・見直し」案が提起され、全国のJA役員や米作り生産者を巻き込んで大きな論議になるなかで、これからの「米作り改革」について紺野組合長に基本的な見解を聞いてみた。
「先般食糧庁にも出向いて、管内の米生産の現状を率直に申しあげましたが、第1には、今日の需要に見合った形で生産調整をすることは、大筋では異論はありません。ただ、この新聞紙面(小紙)でも全中の課長さんが発言されているように、現状の需給調整はJAがやっているわけです。
食糧庁の考え方としては計画流通米と計画外流通米を先々は一本化したいようですが、その場合、問題は商系の業者さんもわれわれと同じ土俵で需給調整をやれるのか、公平性が保たれるのか、と言いたい。
集落内のJA組合員と組合員以外との間に感情的亀裂が入るような制度では納得しがたい。公平感を抱くなかで需給調整に関われないといけないでしょう」と、語ってくれた。
◆来年も食べたい米を作ってこそ
さらに紺野組合長は、米作りと米消費の見通しについて次のように語った。
「お米の価格が市場原理で決まることはやむを得ません。しかし生産現場としては、やはり次の再生産を償える価格の維持、所得保障がほしい。そうでないと、情熱込めて安全で旨いお米を作りたい次代の生産者が育ちません。管内生産者の意欲を支えてきた1つの要因は、これまでのコープとうきょうさんとのお米を仲介とした持続的な交流です。それが血となり肉となり生産者の励みになってきたのです。
今後が期待されるほしのゆめですが、私共としてはあくまで消費者が来年もまた食べたくなるような米を作れば、売れるし買ってもらえるという確信があります。
ですから将来的に、米の流通制度が大きく変わってゆくとしても、重ねて言いますがあくまで再生産が保障される制度・政策であってほしいわけです。そうすれば意欲ある若い担い手も育ってきます。いつの日か国民が自給する食糧生産を再び見直す時代がきますよ」。
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《米作を軸とする管内の生産概況》
北海道道北の北空知管内の深川市を軸とする1市3町(雨竜町・北竜町・幌加内町)の8単協が、平成12年2月に広域合併。「JAきたそらち」が誕生。
耕作地の中心をなす水田1万5000haに「きらら397」70%、「ほしのゆめ」30%、計100万俵の収穫地帯。「水田単作地帯」でありながら同時に何でも栽培できるオールマイティな食料生産地帯でもある。米作付戸数1440戸(13年度)の60%は7ha以上の耕作面積を保有。また、3ha規模以下の17%を含む7ha以下の米作農家が30%余を占め、JAとしては米と施設園芸等との複合経営を推進している。