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特集:稲作経営安定と集荷向上をめざして

  多様な可能性をもった新形質米

 銀座のお米ギャラリーへ行くと量販店などではみられないコメが並んでいて、普段私たちが食べているウルチ米だけがコメではないことを教えられる。形、大きさ、色、香り、でん粉(アミロース)・たん白質・脂質の成分などで、従来にない特徴=形質をもつコメを「新形質米」という。

食味良く加工用にも適した低アミロース米

 最近、量販店の店頭でもみかけるようになった「ミルキークイーン」も「低アミロース米」(アミロース含量5〜15%)に分類される新形質米だ。飯米は食味が良く、粘りが強く、冷えても硬くなりにくいという特徴がある。アミロースが6〜9%と低い「スノーパール」は冷飯での食味が良い(耐老化性に優れる)からチルド寿司に最適だとされている。アミロースが10〜12%で玄米は透明でうるちに近い「ソフト158」は冷えても軟らかで、おにぎりや炊き込みご飯、弁当に向いている。さらに他のコメとブレンドすると炊飯米の粘りが増し食味評価が向上するという特性もある。反対に、アミロースが25%以上で飯米にすると粘りがなく、冷えると硬くなる「高アミロース米」は、ピラフやカレー、ビーフンなどに向いたコメだ。

医療用に期待されるたん白質変異米

 アトピー性皮膚炎など米麦でアレルギーを起す人が増えている。この原因といわれるたん白質分子(アレルゲン)を低減化した「AFTライス」など「低アレルゲン米」、腎臓病病態食として開発されている「低グルテリン米」は「たん白質変異米」に分類される新形質米の仲間だ。
 多様な用途、加工適正がある低アミロース、高アミロース米、医療用などへの利用が期待されるたん白質変異米のほかにも、胚芽が通常の2〜3倍ある「巨大胚米」。紫黒米、赤米などの「色素米」。香りの主成分であるアセチルピロリン含量が高く、独特の香りが強く古米に混ぜて炊飯すると古米臭が消えるという「香り米」。さらに大粒米・小粒米、超多収米なども開発されている。

食卓を華やかにする色素米

 銀座のお米ギャラリーへ取材に訪れた日に「黒米が欲しかったんだけど、もう売り切れなんだって…」という中年夫婦の会話が聞こえたが、ここでいま人気なのは黒米・赤米など色素米だ。色素米にはアントシアン系色素を含む紫黒米と、タンニン色素を含む赤米がある。いずれも各種ビタミン類やミネラルを含んでいるので、健康に良いということ。白米に少量の黒米を混ぜて炊飯すると全体が薄いピンク色になり、食卓が華やかになると若い人たちにも受け入れられていると神長暉所長。しかし、栽培面積が少ないので、よく売り切れ状態になるという。

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 コメ消費を拡大するためには、家庭用需要だけではなく、外食、中食、冷凍米飯やインスタント食品、黒米のようなお洒落な感覚など、多様な消費側のニーズに的確に応えていくことも重要だ。香り米・色素米は中山間地に適しているといわれているし、特殊用途向けは大きな栽培面積を必要としないので中山間地農業振興に活用できる。的確なマーケティングで販売先を確保すれば、従来とは違うコメ事業の展開が考えられるのではないだろうか。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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