JA全農は3月に14年産米の集荷・販売対策を決めた。前年産を上回る集荷率を達成するため、県・JA段階で具体的な集荷目標を定めることや、集荷の基礎となる出荷契約の積み上げなどに「最大限の力を傾注する」ことなどが柱だ。同対策についてJA全農米穀販売部の森川喜郎部長に解説してもらった。
平成14年産米情勢認識
平成14年産米集荷・販売対策の策定にあたっては、次の情勢認識を押さえておく必要があります。
◆生産・集荷
生産・集荷面では、
(1)13年度に引続き、全国で101万haの生産調整に取組む。
(2)生産オーバー分の配合飼料用処理・緊急需給調整対策、超過達成への新たな助成を活用した需給調整に取組む。
(3)需要に応じた米・麦・大豆等の生産と耕畜連携による水田利用の向上をはかる。
(4)13年産計画出荷米の集荷数量は446万トン程度で前年産より36万トン減少し、集荷率は50%を切る状況である。
(5)良質米生産振興や作柄の低下等の影響から、13年産米ではふるい目下の数量が60万トン程度発生(前年:40万トン程度)している。
(6)13年産から農産物検査実施業務が民営化されたが、14年産では検査数量の35%程度が実施される見込みである。
(資料)○計画出荷米の集荷の推移
○地帯別の計画流通米の生産量に対する集荷率の推移
◆販売・消費
次に、販売・消費面では、
(1)自主流通米価格の維持、回復をはかるため、13年産米の販売環境改善に向け飼料用処理、調整保管に取組んでいる。
(2)産地銘柄を推進する販売と並行して、品質・用途・価格帯別需要など、新たな切り口での販売推進や需要の掘り起こしの取組みを拡大することが求められている。
(3)販売業者は、取扱数量の減少、景気低迷による消費者の低価格志向、量販店等の価格主導などにより経営が悪化し、業界の再編と二極化がさらに進行している。
(4)米の消費量は12年度一時的に回復したが、13年度再び減少している。
(5)消費者の食品の安全性に関する関心が高まっている。
(6)国は、米の消費拡大のため、官民を通じて思い切った予算措置を図り、テレビを活用した積極的な運動を展開することとしている。
◆農政
また、農政面では、
(1)国は、可能な限り、15年度実施に向け、生産調整の見直しと公平性の確保等について、研究会を設置し、検討をすすめている。
(2)国は、計画流通制度に代わる安定供給体制整備の検討をすすめている。
(3)国は、農業生産形態の変化に対応した「経営を単位とした農業経営所得安定対策」の検討など、担い手を重視した施策を推進している。
(4)国は、米の安全性の取組みを強化するとともに、安全性確認に必要な体制を早期に確立することとしている。
こうした情勢をふまえ、14年産米集荷・販売にあたっては、13年産の集荷率が50%を切る危機的状況となっていること、計画出荷米生産者の需給対策に係る経費の負担軽減が緊急の課題となっていること、農畜産物の安全性に対する関心が高まっていること、などをふまえ、以下の対策に組織の総力をあげて取組み、JAグループの米取扱数量・シェアの拡大につとめることとします。
集荷対策
集荷対策としては、つぎのことを重点的に取組みます。
第1は、各県・各JAにおいて、前年産を上回る集荷率を達成するため、具体的な集荷目標数量を設定し、集荷運動を展開します。
第2は、集荷の基礎となる出荷契約の積上げと「稲作経営安定対策(以下「稲経」という)」、「とも補償」、「米需給調整・需要拡大基金」への加入推進に最大限の力を傾注することです。
計画出荷米の集荷数量は「稲経」の加入数量と相関関係が強く、計画出荷米の申出をいかに多く積上げるかが集荷を左右するといっても過言ではありません。
特に、稲経の加入にあたっては、銘柄毎の資金残高不足解消のため、「追加造成コース」の加入推進と出荷可能数量での積上げを推進します。
第3は、フットワークを駆使した集荷を行うため、つぎのことに取組みます。
(1)「集荷マニュアル」による自己点検活動を実施する。
(2)庭先集荷の強化・充実をはかるため、取組みの実態を把握し、取組み事例を紹介・普及する。
(3)CE等を核とした施設集荷の積極的な取組みにより、集荷数量の拡大をはかる。
(4)全農全国本部は13年度に引続き、消費地圏にモデルJAを設置し、集荷率向上に取組む。また、各県においても、集荷率が低下しているJAをモデルJAとして設置し、実態の分析や原因究明を行い、対策を構築する。
第4は、効果的な仮渡金等の支払いです。
出荷契約金については、出荷契約に対する役割が希薄化してきていることから、これまでの統一的な対応ではなく、地域の集荷実態に応じて支出することとします。
うるち米の仮渡金については、流通経費を削減して集荷に結び付く水準で設定することが重要です。
このため、地域の集荷環境やこれまでの経過等を勘案し、安定出荷協力金等を加味した方式、または、内金・追加払い方式とします。
また、経費見通しをできるだけ早く行い、生産者に対して追加仮渡を実施することにより、翌年産米のJAへの出荷を促進します。
第5は、計画外流通米との競争に負けない生産者手取りを確保するため、流通経費の削減につとめることです。
◆安心・安全・信頼を確保するための取組み
消費者・取引先の安心・安全な食料に対するニーズに応えるため、栽培履歴(トレーサビリティ)、検査・認証、品質管理を明確にした「全農安心システム米」の取扱いを拡大します。生産者・JAに対し、「全農安心システム米」の必要性や取扱い方法等を啓発・普及するため、推進ビデオを作製し生産拡大する取組みを推進します。
また、農畜産物の安全性に対する関心の高まり、国内産米に対する消費拡大の観点から、地方行政・食糧事務所が行う安全検査の積極的な活用を推進するとともに、消費者からの残留農薬などの情報開示の要求に対応するため、各県産米の栽培ごよみ・栽培履歴等の情報整理を行うよう推進したいと考えています。
販売対策
主食うるち米については、今までの需給と価格の安定のための、適正な価格形成、計画的な販売、需給調整対策などの取組みに加え、消費者・実需者の品質・用途・価格帯別の多様な需要に対応した販売に取組みます。
そのため、入札取引・相対取引について、需要に応じた米の計画的生産につながる仕組みを検討します。
また、緊急需給調整対策を実施してもなお、豊作等による予期せぬ過剰米や持越しが見込まれる場合には、別途対策を構築することとします。
なお、引続き、真の銘柄別需要を把握するため、精米表示の監視強化を国に要請するとともに、生産者団体自らの取組みとして、精米分析(DNA鑑定)を強化します。
もち米については、供給過剰となっていることから、13年産米に引続き生産抑制対策に取組み、需給環境を整備する必要があります。
このため、仮渡金についてはうるち米水準とのバランスを考慮し、
(1)もち米生産を抑制できる水準、
(2)16米穀年度への持越しを勘案し、諸経費を織込んだ水準で設定することとします。
また、自主流通もち米の生産と供給の安定を目的として、もち米生産団地で生産される一定の数量と需要者を事前に結びつける「播種前契約」に取組みたいと考えています。
なお、試験的に自主流通米の需要を確保するため、需給実勢を反映した価格形成方法についても検討します。
(資料)○入札指標価格の推移
消費拡大対策
最後に、国産米の消費拡大対策ですが、週5日実現をめざす「米飯学校給食5・5運動」や「朝ごはん推進キャンペーン」、「TV宣伝活動」など国・全中等の米消費拡大運動と連携した取組みをすすめます。
また、全農安心システム米、無洗米、低アレルゲン加工米飯「AFTライス」などの販路開拓に引続き取組むとともに、消費者に接近した事業として、本年2月より発売している「全農ぴゅあ弁当」の拡販をはかります。
さらに、カレーショップの設置についても検討したいと考えています。