昨年11月に農水省が決めた「米政策の見直しと当面の需給安定のための取組について」には、「安全性に関する取組の強化と消費拡大の促進」が盛り込まれている。
消費者の安全性に関する関心の高まりに応え、国としても、米の安全性確保策の強化とともに、安全性が確認できる体制づくりや、品質表示基準の明確化と適正表示の確保などを図っていく方針だ。
これらの課題について、今後、どう具体化されるのか、食糧庁計画流通部消費改善課の吉田竹志課長補佐に考え方などを聞いた。
◆残留農薬調査 サンプル数倍増へ
食糧庁としては、生産段階の安全性は「生産者と生産者団体自らの責任で確保するのが基本」との考えだ。その考えに立って、これまでに米の安全性確保のための取り組みとして残留農薬調査を実施してきている。生産現場が農薬の使用基準を守っているかどうかを調査するもので、毎年、約1000点を対象に行っている。
分析対象農薬は食品衛生法で成分規格が定められ国内登録されたもの。これまでの調査では、食品衛生法違反に該当する例はなく「国産の米は安全といえる」結果となっている。
また、カドミウム調査も調査対象生産者などの了解や要請に基づいて実施されている。基準値(1.0ppm、食品衛生法で販売が禁止)以上が検出された場合は、全量出庫留保され焼却処分されるほか、0.4ppm〜1.0ppm未満検出された米についても生産者からの申し込みに応じ食糧庁が買い入れ非食用に処理している。
さらにこうした検査結果を土壌改良、営農対策につなげるよう県、関係機関と連携に努める方針で、その後の調査でカドミウムが検出されなければ対象から除外される。13年産では1.0ppm以上が2点検出されている。
今後の取り組みとしては、残留農薬とカドミウムの調査点数を倍増させる方針だという。残留農薬調査は約2000点、カドミウム調査は約1000点とする計画だ。
生産段階の安全性確保はこのような取り組みによって行われているが、吉田課長補佐は「消費者に安全性が確保されていることをどう伝えるかが課題」と話す。安全性について、消費者に「より安心感を与える情報伝達のあり方」をどう構築するかが今後の焦点のひとつになるようだ。
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一方、精米表示の適正化については、昨年4月の改正JAS法施行以来、食糧事務所を中心に販売業者への巡回点検、店頭販売品のDNA分析による品種判別、表示義務違反のある業者への立ち入り検査を実施している。
今年1月までに、巡回点検した業者数は延べ約8万6000。立ち入り検査を実施したのは延べ約1100となっている。
このうち不適正表示業者は約1万5000あった。不適正表示については改善を指導する指示書が出されているが、今年1月までに農林水産大臣、都道府県知事の指示書を合わせて61業者に発出されている。
この巡回検査の実施は、改正JAS法の周知を図ることも目的で、昨年4月〜7月の期間では、不適正率は25%に達していたが、8月〜11月の期間では10%まで低下するなど成果も上がっている。
また、計画外流通米を消費者に直接販売する生産者や法人を対象にした調査も昨年11月から12月にかけて行った。その結果、調査対象201のうち、57の生産者、法人で不適正な表示がされていた。直接販売する生産者にも、米の検査を受けたうえで産地、品種、産年の表示が必要だが、その認識がまだ浸透していないと食糧庁ではみており、今後も指導を強化する方針だ。
そのほか、店頭精米価格が表示銘柄から考えて原価割れしていると思われるものについての調査も実施しており、疑わしい商品については立ち入り調査やDNA分析による品種鑑別を行うことにしている。
こうした表示適正化の取り組みに加え、現在、食糧庁では精米表示基準の一部改正にも着手している。
改正案は、(1)使用割合が50%未満の原料米について、その産地、品種、産年を強調して表示することを禁止、(2)「ブレンド」の文字を産地、品種などを表す文字よりも小さく表示することを禁止、の2点。
改正案の背景には、たとえば、魚沼産コシヒカリが10%しか含まれていない商品で“ブレンド”という文字を意図的に小さく表示し、消費者に誤認させようというケースを防ぐ狙いがある。また、当初改正が提案されていた一定の品質を満たす精米に、「粒ぞろい」との表示を認める改正案については、3月28日のJAS調査会総会において削除された上で了承されたことから、今回は見送られることとなった。食糧庁は本年9月1日から適用したい考えだ。
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米の安全性については、「安全性確認に必要な体制」も課題となっている。この点については、全農安心システム米のような栽培履歴などが遡って確認できるトレーサビリティシステムの確立が期待されている。
食糧庁としては生産者団体自らの取り組みを基本にして、今後、具体策の実現に必要な支援をする方針だという。生産者と生産者団体が消費者との間でどのような信頼関係をつくるのか、自主的なシステムの構築こそ安全性の確保にとって大切な視点だと吉田課長補佐は強調している。