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特集:満足度・利用度No.1をめざして 挑戦するJA共済事業 |
対 談 |
JAの総合事業を通じたJA共済の発展を考えるとき、それは当然、これからの農業・農村の動向が深くかかわってくる。梶井功東京農工大名誉教授は、その観点からJA共済の現状と課題を問いかけた。新井昌一JA共済連会長は、4年連続で推進目標を達成したJA共済の前年度実績を説明。そこには相互扶助の精神が今も息づいているという原点を指摘した。そして「人と人との絆」を深めているライフアドバイザー(LA)の活躍を高く評価し、その役割の重要性を強調した。一方▽保有契約高の純増への転換▽次世代対策▽地域住民への普及などの課題を挙げた。対談は農政課題から米国の新農業法にも及んだ。 ◆共済事業の原点は、共同社会に生きているということ
梶井 JA経営は共済事業への依存度を強めていますが、果たして、それでよいのか。その問いかけは同時に21世紀の日本の食料と農業をどうするのかという問題にかかわってきます。JAの総合事業のありかたといった観点から会長のご意見をおうかがいしたいと思いますが、まずは平成13年度のJA共済の実績からお話下さい。 新井 私としては「連合会の統合2年目である」という点を気にかけてきました。それに不況の中、BSE問題が発生したりして厳しい環境でした。また生保・損保の合従連衡もありました。そうした中で役職員がこうした時こそJA共済の保障が必要だと切実に認識し、一丸となって取組んだ結果、4年連続で推進目標を達成しました。これは、やはりJA共済が組合員・利用者に信頼されているということでありますし、共済事業の中身が非常にオープンであることも信頼の要因だと思います。何にでも長所短所がありますが、競争激化の中でJAが総合事業の活動を進める中で折りにふれ組合員とよく話し合って、そうした長所短所なども組合員に心から理解されていると思います。 梶井 共同社会に生きている、その中でこそ農業が営めるのだという原点がJA共済を支え、また、その辺が、ほかの保険などとは性格を異にしているというわけですね。 新井 サービスなら例えば掛金が安ければよいのですが、奉仕は違います。災害に遭った場合は共に泣き、共に対策を立てる。そうした精神が根底になければJA共済は信頼を確保できません。梶井 LAの方々も、そういう理念でもって活動しているのですか。LAの育成に力を入れておられると聞いていますが。 新井 個別訪問では組合員の悩みや意見に心から対応し、相談にのり、またJAの考え方を説明したりしています。 梶井 JA合併で管理者と組合員の距離が遠くなったことも一因で組合員のJA離れが問題になっていますが、その対策にもなっていますか。 新井 その点でLAは全体としてよく勉強しています。保険のことはもとより、税務や新しい生産資材のこととか、高齢者福祉とか介護問題とか、多面的に相談にのり、また組合員の要求や情報をつかんできます。 ◆人と人との絆を強め、地域に広がりを 梶井 そこのところは組合員とのつながりで非常に大事ですね。では前年度の実績内容を、さらにお聞かせ下さい。 新井 長期共済の新契約は目標を達成しましたが、残念ながら保有契約高が減り、収入も若干減りました。しかし決算では、経営合理化が寄与し、まずまずの内容となる予想です。合理化は統合メリットの一つです。 梶井 共済連で出した「JA共済における高齢社会対応に関する調査研究報告書」の中に、高齢に向かう40代、50代の「向高齢者」に注目すべきだと問題提起していましたが、面白い着眼点だと思いました。向高齢者は様々な問題で地域住民とつながり、連携がある。そこへの対応は今まで盲点だったんじゃないかと思いますが、どうですか。 新井 たしかに向高齢者が農村社会の一員として大きな存在になるでしょうね。向高齢者が本当に望む保障というものも、よく調べていく必要があります。 梶井 向高齢者を通じる方法もありますが、全面的な進め方として地域住民にJA共済をどう広げていきますか。 新井 地域に開かれた協同組合としてこれはぜひやらなければいけません。 梶井 地震の時は建更の加入契約が非常に増えて成績が上がると聞いています。 新井 日ごろから万一の時のために保障の必要性を訴え続けることが大切でしょうね。起こってからでは遅いのですから。また、素早い対応としては、鳥取西部地震の時は全共連から専務と常務に自ら現地に飛んでもらい、つぶさに農家の要望を聞きました。あとで感謝されたのがとてもうれしかったですね。 ◆基本は「農」。農地を耕す精神を子孫に伝えること
梶井 ところで以前は共済と信用事業の両方でJAの経営を支えていましたが、ここ数年前からは共済が主役になってJAの経営を支えています。その辺が気になるのですが……。 新井 それは、やはり農業生産が上がらなかったら共済も信用もありません。将来の生活設計を考えると基本は「農」です。土地には財産という価値もありますけれど、農業を営むのが原点ですから、これを子孫に伝えて農地を耕す精神だけは絶対に忘れさせないようにしたい。 梶井 途切れたときの対策は必要ですが、それを惧れるあまり、偽装問題が起きました。私は、農産物は自然条件に左右されますから、途切れることがあるということを消費者にわかってもらう努力をする必要もあると思います。 ◆ウソを言わないことが農協の生命 新井 全農チキンフーズ問題の教訓もそうです。 梶井 私たちが協同組合の模範としてきたロッジデールの組合の名前は公正開拓者組合でした。よその商品と同じであっても、うちの商品は、品質でも価格でも「ごまかしがありません」ということが中心でした。これが協同組合の原点ですよ。 新井 それがね。生協との間でごまかしが生じてしまったわけですから。生協との関係は商品の取引だけではなく、人的交流や肌のふれあいがなければいけません。残念です。 梶井 協同組合の販売・購買事業はふつうの商行為ではないということがポイントだと思います。法規以前の問題ですよ。 新井 ウソをいわないということが農協の生命です。その精神がなけりゃ信頼されません。共済事業だけでなくトータルで農協は信頼を得るべきです。 梶井 今度の問題について系統全体で反省すべき点は、そこだと思います。 新井 内部ではいろいろ論議をしています。そうしたことから系統組織におけるリーダーシップがますます重要になってきています。 梶井 組合員に対する教育がロッジデール以来の協同組合の原則でした。しかし今度の農協法改正の中で「教育」という言葉が消えてしまいました。 新井 なんでもかんでも効率性優先でね。理念というものが薄れてきたという気がします。組合員と農協の関係でも、農協の経営についてもね。 梶井 私は、そこが大変な問題だと思っています。 新井 効率性、生産性だけを問いますからね。消費者に安いものを供給するのは当然ですが、それよりも価値のあるものを正当に評価して、相互理解で売れるような立場にならないといけません。そうしたことを生協さんとも、もっと深く話し合っていく必要があります。私たちが模範とし、理想としていた農協までが問題を起こしたのですから、そうした思いは本当に切実です。 ◆WTO交渉で政府は将来を見据えた毅然とした姿勢を 梶井 私は最近、必要があって農産物販売総額に占めるJAのシェアを調べました。農水省の農業の経済計算、昔は社会勘定といっていた統計をもとにしました。実をいうと農産物ごとに販売総額を押さえているのは、それしかないんです。それで見ると、JAのシェアは意外に落ち込んでいません。 新井 WTO農業交渉が進む中で、ああいう農業法を打ち出してきたのは、米国のエゴイズムもあると思うのですけれど、農業をどうするかではね。やはりね。我が政府も将来の食料問題を考え、毅然とした姿勢をとる必要があるのではないでしょうか。 梶井 WTOへの日本提案の中で、例えば、農業保護削減が猶予されている青の政策は、貿易歪曲度が低いから継続を主張するといっています。しかし、それを主張するんだったら、その裏づけとなる国内政策をきちんととってほしいと思います。 新井 この辺のところはいろいろ心配がある。語るには一日あっても足りないくらい…。 ◆合理化・効率性も協同組合の原点に返ってもう一度考える 新井 最初にお話のあった農協事業のあり方についてですが、これは私が、かつて取り組んだ話ですが、農家は高齢化しているし、兼業も増えている、では農協をどうやって守るか、と考えました。
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