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特集:未来の架け橋を築くために ―― 21世紀の農業を考える
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インタビュー 農業は「生命総合産業」 若いベンチャーの輩出に期待 坂本 多旦 (社)日本農業法人協会 会長に聞く インタビュアー:木南 章 東京大学大学院農学生命科学研究科 助教授 |
山口県には、坂本さんを塾長とする「尊農塾」という農業研修の場がある。昨春開設した。農業経営のリスクに挑戦するベンチャー精神を重視するだけに、どちらかといえば若者向けだが、塾生には会社役員や商社マンOBなど年配者も多い。講義と現場研修が月2回で、郷土の先輩吉田松陰の松下村塾を見習ったロマンのある人づくりを目ざしている。坂本会長の話は情熱的だった。木南助教授は▽消費者の動向▽6次産業としての農業▽循環型社会▽農業経営者の育成 ―― と坂本会長の話題を次々に発展させていった。 ◆農業経営のリスクに挑戦する ―― 人材養成に努める
木南
日本農業の抱える課題は数多いと思いますが、全体として、どのような点に活路とか明るい展望を見出すことができるのか、といったお話をうかがえればと思います。
それは、農地改革で小作農が農家となり、農の「家」であるために農業の継承が相続という概念にとらわれてしまったからです。農地改革はすばらしいことでしたが、後継者問題では困ったことが起きるんじゃないかと当時、私は考えました。 35年前になりますか、そこを入口にして、農業基盤のない青年を農村に受け入れるシステムづくりを課題として追求しました。今では、私どもの農場への就職希望者が増え、年間約70人が面接試験にきます。 私は、都市と農村は切り離せるものじゃないと考えます。しかし都市住民が払った税金が地方へ流れているという問題から、対立構造を持ち出す議論は理解できます。 地方の税収は少ない、票数も少ない、だが予算配分は相対的に多い、といった対立論的な疑問は、民主主義は多数決ですから、当然起こります。そうした感情論や疑問をどういうふうに克服していくかは、今後の大きな課題だと思います。 木南 都市住民には変化している部分と、一方では、不変の部分もあるんだ、という見方もありますが。 坂本 そうですね。新人類といわれるような若い人たちでも食に対する生理は、もちろん不変です。また食べるからには、おいしいものを安全に安定的に求めるというニーズ、これもまた続いていくと思います。 ところが、そのニーズと、生産者が供給する農畜産物との間に、どうもミスマッチが生じてしまうんですね。ここに農政も含めた生産面の問題の原点があるように思います。 木南 消費者は「物」ではなく、物に乗っている「何か」を求めているのだと思いますが。 坂本 いろんなものを食べてみたいという消費者の多様な需要動向に流通のみなさんは、ものすごいスピードで対応されています。しかし、それは国際化の中で、当然のことだと思いますが、輸入品による品ぞろえという対応になっています。自給率からすると、不幸なことです。 木南 国内の生産者は、ニーズの多様化に対応できていないわけですね。 坂本 そうです。昭和45年におコメの生産調整が始まった時に、それまでの食糧難時代の農業から、いち早く変化すべきだったのに、それができなかった。それは、農地改革で小作が地主になり、例えば、規模拡大をする経営者に農地を貸したりしなかったためです。そういうこともあって画一的な生産と流通を続けてしまったんですね。その辺がミスマッチの原因だと思っています。
◆需要動向で考えられる3つのパターン
坂本
3つのパターンを考えています。1つは値段の高いブランド商品クラスの流通が2割ほど、2つ目は中間的な良質品が3割程度、3つ目は低価格の大衆食品が5割です。この辺に着目した農業生産の取り組みが必要だと思います。 木南 衣類なども同じですね。外国のブランド品に殺到する消費者がユニクロも着たり、それでも消費者として矛盾はなく、筋が通っているといえるのですよ。 坂本 だから私は農業の可能性は大きいと思いますよ。よその産地を見た上で、3つのパターンを組み立てれば、もう少し自給率も上がるのではないかと。その辺でJAさんにも大きな期待を寄せています。 ◆6次産業という発想、「生命総合産業」と命名して 木南 日本農業法人協会と坂本さんは「6次産業」を提唱されていますが、これは生産システムづくりにとって重要な考え方だと思います。
坂本
従来は流通や販売を2、3次産業にお任せするというルールで分配システムも機能していましたがそれが国際化で難しくなりました。 木南 次に、循環型社会に向けた農業の役割ですが、有機農業とリサイクルについてはいかがですか。
坂本
苦い思い出があるんです。私は昭和44年から仲間5人と、国際化に対しては選択的拡大だと、牛1000頭を目ざし、父の意見と対立しました。父は「昔から、米を作れ、牛を飼え、ということわざが、この地域にあるが、牛ばかり飼えという教えはない」というのです。
木南
面白い発想ですね。私も学生の時に大学の食堂の生ゴミをたい肥にして学園祭で売ったら植木用とか家庭菜園用によく売れました。 坂本 1都市と農村の大きな循環と農業を生命総合産業の立場でとらえれば、そこにベンチャー企業もたくさん出てくると思います。 ◆日本農業に可能性は「十分ある」 木南 そうした可能性を求める新しい動きについて、経営者の育成などを含めて、最後になりますが、おうかがいしたいと思います。
木南 どうも、可能性に満ちたお話をありがとうございました。
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