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特集:未来の架け橋を築くために ―― 21世紀の農業を考える
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インタビュー 生活者が関われば日本農業も変わる 農業は循環型社会の「要」 大河原 雅子 東京・生活者ネットワーク代表委員 東京都議会議員 インタビュアー:坂田 正通 氏(農政ジャーナリストの会会員) |
坂田 生活クラブ生協の活動を始められたきっかけは何ですか。 大河原 子どもに安全なものを食べさせたいという思いからです。母親は妊娠の段階から母体として何を食べたらよいのかと気になります。 坂田 生活者の立場で都政を変えようと6月の都議選ではローカル・パーティ(地域政党)の「東京・生活者ネットワーク」に所属して3選を果たされました。小泉人気の中で、いかがでしたか。 大河原 具体性のない「改革」ではなく、私たちは都民から汲み上げた具体的な提案をし、「東京を生活のまちにします」と訴えました。 坂田 現状は、だれのための街だという認識ですか。 大河原 以前の鈴木俊一都知事は「世界都市」を目ざし、次の青島幸男知事は「生活都市」でしたが、今の石原慎太郎知事は「先客万来の世界都市」をうたって鈴木型に戻り、開発・土建屋型というか、オフィスや道路ばかりを増やすようなまちづくりになっているのが現状ではないでしょうか。 ◆『食べる人』の声をもっと聞いて 坂田 日本農業は安全性の確保でがんばっていると思いませんか。
8年前の話ですが、中央卸売市場の視察で、有機野菜の取り扱いが少ないと指摘したところ、「形よりも安全性を優先させるとか、有機栽培を求めるような消費者はごく少数ですよ」と、しごく冷淡でした。 しかし私たちは、形が悪くても安全だったら良いとする消費者が多いことを体験で知っていました。結局今ではスーパーでも有機野菜の販売が増え、レストランでも有機のサラダが目玉になったりしています。 坂田 自然なものが自然な形で店頭に出回れば値段のほうも、もっと安くできると思います。
大河原
例えば、曲がっていないキュウリを作る手間だけでも大変だと聞きました。規格にしても、1箱の本数を同数にするためにダイコンの大きさをそろえたりで、コストのかかる農業になっています。 ◆東京を変えれば国の政策も変わる 坂田 一方では、消費者運動の長い歴史がありますが。
大河原
そうですね。ふり返れば私たちは89年に食品安全の条例をつくらせるために、55万人の署名を集めて都に直接請求しました。 坂田 都市農業は消費者と直結できますが、その点はいかがですか。
大河原
思い出しますが、私の初めての本会議の質問で「東京の農業は…」と切り出した時に議場が少しざわめきました。東京は農業をやるところではないという通念を揺るがせたようでした。それまでは地産地消とか農業振興といった質問はなかったのでしょう。農家の資産管理とか税制をめぐる質問はありましたけど。 坂田 農のあるまちづくりということもありますしね。 大河原 私はずっと前から、消費者が関われば農業は変わる、農業を守り、育てることができるという確信を持っていました。だから、きょうは、農協新聞の取材を受けて大変喜んでいます(笑い)。 ◆作り置きした冷凍物を外国から持ち込むのは疑問です 坂田 最近の問題としては、JRの米国産冷凍弁当の輸入販売があります。どう思いますか。
輸入品の中には、大きなニンジンを小さく切って成形したものがありスーパーは1袋100円で売っていますが、消費者はそれをベビーキャロットのイメージで買っています。 加工日の表示がないため輸入業者に聞いたところ、店頭に並ぶまでには最低でも2週間かかっているとのことでした。皮をむいてから2週間も経った野菜を食べてどうなのか。 カット野菜の分類に入っていないから加工日を表示しなくてもよいとのことでした。こうして法律の狭間をくぐってくる輸入品は、JR弁当のほかにも多いと見ています。一面からいえば、日本の農家は見くびられているのではないかと思います。 坂田 国産の農産物は、もっと安心・安全を売りにすべきですね。 大河原 東京都は有機野菜の認証制度をつくりましたが、この4月から国の基準に吸収された形です。東京には消費者ニーズを地方の農業者に発信する仕組みができていると思います。それにしても有機農産物はまだまだ少ないですね。 ◆食教育をきちんとすることが日本農業を守る第一歩 坂田 ネギなどのセーフガードについてはいかがですか。 大河原 日本でできるものは外国から買わないようにする、というのは単純過ぎますか(笑い)。しかし日本人がみなサラリーマンになってしまって、農業者がいなくなったらどうしますか。中国だって人口が増えて日本に食料を売らないという危機的状況にならないとも限りません。 坂田 そこで食料自給率の向上ということになりますが。
大河原
おコメの生産量からすれば大したことがないかも知れませんが、米飯給食を週3回から4、5回へと増やすべきだという母親が多いですね。子どももパンのおかずよりご飯のおかずが好きです。親の試食会では「私はサバの味噌煮を食べたことがないのですが、子どもには食べさせたい」という母親もいました。 ◆柔軟な発想で就農できる制度をつくることが必要 坂田 最後に農家の後継者問題についてはいかがですか。
大河原
小泉首相は構造改革で失業者が出るが、半分くらいは再就職できるといいます。しかし再就職先が、その人の職能・技術とマッチしなかったらどうするのか。 坂田 減反などで遊休農地がいっぱいあるのですからね。
大河原
世田谷には園芸高校があります。普通科を志望していた女の子が、そこを見て「ここで勉強したい」と決心。3年間、遠くから通学して今年卒業しました。私はその子の話を聞き、偏差値教育の中では珍しいケースだと感心しました。 坂田 市街地区域の中の農業政策も重要ですね。
大河原
その点で私たちは、東京都は都市農業の先進自治体だと行政をほめており、自信を持ってリーダーシップをとってほしいと思っています。
坂田
では、どうも貴重なお話をありがとうございました。
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