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特集:未来の架け橋を築くために ―― 21世紀の農業を考える
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生産現場からの提言 土を元気にする取り組みが 生産者・地域住民の元気創出に 中嶋 好夫 (株)げんきの郷・参与(JAあいち知多前専務理事) |
私たちの地域の土をもう一度、素晴らしい土に戻して次世代に贈らなければならない‐‐。農業者にはこの使命があるとの思いが、今、私の最も基本にある気持ちである。
地域の土が悲鳴を上げていることに気づき、私たちは大きなショックを受けると同時に土に対する関心も高まった。そのため私たちは新たな土づくりへ挑戦してきた。
昭和1桁代の生産者のリタイアが待ったなしの状況で進行し、不耕作地が加速度的に拡大してきた。 70歳を超えてから150アールもの畑でタマネギやキャベツの生産などとても続けられないとの声が聞かれた。従って、そうした農地を認定農業者など若い生産者にどう集積するかが課題となったのである。 もうひとつの問題は、今後も単品生産で地域農業を守っていけるのかということだった。これまでは大根、白菜、にんじんなど、大面積で単品を生産し市場に出荷する形態が中心だった。しかし、高齢化によって重量野菜の生産が難しくなる農家が多くなるなか、今後は、多品目少量生産に転換し地域の消費者に販売することが地域農業の振興になると考えた。 さらにこの構想は消費者との信頼関係の確立もめざしている。その一つが徹底した情報公開である。減化学肥料、減農薬など特別栽培農産物に取り組む生産者も増えてきたが、それをしっかり区別して販売していくなど、消費者への的確な情報伝達が今後は大切である。 また、消費者の農業体験も計画しており、とくに来年からは学校が週5日制になるため、それを踏まえて親子で農業体験する食農教育の機会提供など幅広い交流の場をつくろうと構想している。 具体的には、平成11年にこの構想の核となる「げんきの郷」にファーマーズ・マーケットを建設し、翌年には天然温泉施設と地域食材加工施設を建設した。休日には1万人を超える人でにぎわうようになっている。また、今年度は、農業教育のための農業塾、パソコン教室などを開くアグリカレッジやふれあいの杜の建設を進めている。
私たちの地域では、このような構想のもとで地域農業振興を図っているが、今後の課題も少なくない。ひとつは高齢化による耕作放棄地の拡大は予想以上の早さで進むことが考えられるが、それに対する法的な整備も含めて対策は極めて遅れているということである。 JAあいち知多には、アグリサービスという協同会社がある。この会社はもともと農作業を受託している意欲的な生産者のオペレーター業務を補完するのを目的としたものだったが今やオペレーターも高齢化したため、彼らが請け負っていた農地の受委託作業を会社に依頼し、自らは会社のオペレーターとして働くことを希望するケースも出てきた。つまり、オペレーターが農協に結集し、そのことで農協がかなりの農地を転作も含めて計画的に利用できる環境にあるともいえるのである。 こうした動きを考えると、農地集積のための法的な整備と合わせ農協による農業経営の仕組み開発も急務だと考えている。 また、たとえば、多品種少量生産に転換しようと呼びかけても、今のところJAには生産者への助成や特別融資などの支援策がないが、今後はこうした取り組みも重要になる。 同時にこのような具体的な取り組みを通じて行政が描く地域農業振興計画に参画することも農協にとって大きな役割だ。また、今後は、農産物の販売面ではJA同士の連携も大切になる。農協組織はこれまで縦系列であった。もちろん金融・共済では縦系列を強めることによって組合員利用者の信頼を高めなければならないが、農産物の販売など経済事業の一部は近隣農協と手を携えて消費者のニーズに応えていかなくてはならない。 「げんきの郷」では、今、1本100円のにんじんより、200円のもののほうが先に売れてしまうということがよくある。安ければいいと思っている消費者ばかりではないことに生産者が勇気づけられいるのがこの取り組みの成果のひとつでもある。また、生産者名を記したシールを取っておき、そのシールを持って再び買いにきてくれる人もいる。土を元気にする取り組みが生産者をはじめ地域の人々の元気創出になってきたと感じている。 |