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日本の農業にとって大きな環境の変化に立ち向かわねばならない時代になりました。WTO(世界貿易機関)交渉が農業分野の扱いを巡って紛糾しており、東京会議でモダリティー1次案が議論されましたが、日本にとって非常に厳しい内容で波紋を呼んでいます。
さらに政府の総合規制改革会議でも農業が医療や教育と並んで、競争力の働かない分野とされ、従来の経過を無視した強引な手法も検討されているようです。
また、昨年さまざまな問題から沸き起こった「食」への国民の不安は高まる一方であり、抜本的な対策が求められています。BSE問題や輸入野菜の残留農薬問題などがありましたが、偽装表示に関しては全農チキンフーズおよび八女茶で全農自らが問題を引き起こし、信頼を失墜させてしまったことは心からお詫びを申し上げなければなりません。今後、このような不祥事がないよう役職員あげて取り組んでいるところです。
また、農薬に関しては、無登録農薬が予想を越えて広範に使用されていた実態が明らかになり、使用者罰則を新たに加えた農薬取締法の大幅な改正がなされ、この3月10日から施行されることになっています。
さらに組織整備については、JAの合併が進み、全国のJA数が1000を切るまでになりましたが、経済連と全農の統合も進み、この4月の福島と神奈川の統合により、東京支所管内は17都県がすべて全農の都県本部となります。これまで以上に全国本部と都県本部が一体となった事業運営を遂行する基盤が整いました。
以上のようなさまざまな変化を受けて、全農では中期事業構想を策定しており、さらに平成15事業年度から向こう3カ年を見据えた中期3カ年計画を策定中ですが、その中で特筆すべきは「生産資材コストの引下げ」です。これは農水省の「農協のあり方研究会」においても強く要請の出されている項目であり、WTO交渉への備えという観点からも緊急の課題といえます。
また、昨今、ホームセンター等での一部農薬の安価から、系統価格への不信が噴出しており、この問題への対応も大きな課題です。
全農が従来からコスト低減の手段として取り組んできた、(1)メーカーとの共同開発、(2)海外原体メーカーとの直接購買、(3)特許切れ農薬対策――について今年度も重点推進をします。(1)については、MY―100混合剤が系統組織の理解を得て平成14農薬年度は計画を達成しましたので、今年度は謝恩キャンペーンを軸にさらに実績拡大をめざします。(2)については、ラウンドアップハイロードの大型規格比率をさらに高め、実質価格を下げていきます。また、直接購買品目で低コストにかなった剤の推進に力を入れます。(3)では、組織の期待の大きかったジェイエースがいよいよ登録になりました。今後、組織をあげて推進に取り組みます。
最後に、無登録農薬問題については農家への周知徹底、生産工程管理、記帳指導、マイナー作物対策等、系統組織が行政と一体となって進めないと解決しない課題であり、今後、農水省、全中等の関連部署と連携をとりつつ進めていきます。 (2003.3.14)