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特集:21世紀の日本農業を拓くJAの挑戦
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対談 21世紀の日本農業を拓くJAとJA改革 JA全中専務理事 山田俊男氏 日本女子大学教授・東京大学名誉教授 今村奈良臣氏 |
今村教授の提言は多岐にわたり、JAの営農指導と販売事業では、消費者の買物の仕方を具体的に調査した上でのデータによる営農指導を説き、また種子をおろす前に生産者手取りも考えて置くといったマーケティングを提起した。それは青果にも米にも通じる話だった。山田専務は、情報技術(IT)の活用なども含めてJAならではの力を発揮できるようにしていきたいとし、米政策については「組織の創意工夫を集めて決断すべきところはする」と語った。対談はセーフガード、牛海綿状脳症(BSE)、WTOなどの諸問題に及び、さらに女性のJA運営への参画促進も語った。 ◆今年に引き継がれた多くの課題 今村 昨年は農業と農村をめぐる環境の厳しさと同時に、非常にショッキングなことがいっぱい起こりました。始めに、そういうことをどうご認識されているか、お話いただけませんか。
山田 確かに昨年ほど多くの課題が重なってきた年はなかったと思います。年初から農業者年金、農林年金、農協法の改正などで国会対策がありましたし、また参院選があり、それにセーフガードの暫定措置、そしてBSEの発生、WTO対策、それから米対策も総合的、抜本的改革ということで大きな波がきました。このうち、とくにセーフガードの問題は、日中合意はしましたけど実効ある輸入抑制措置は今年に引き継がれました。BSEにしても考えうる対策は打っていただいているわけですが、農家の経営困難、ひいては畜産地帯における農協の経営上の課題が、これから生じてくる可能性があり、それらはみな今年に引き継いだことになります。 ◆地域に根ざした活動で、ピンチをチャンスに
今村 いくつかの課題は今年、解決していかなくてはなりませんし、農協の運動や活動、組織に影響する課題が多いわけです。系統全体として、どういう方向で取り組もうと考えておられますか。 山田 JAグループが抱える問題の1つはデフレによる農畜産物価格の大幅下落にどう対処するかということ。2つには今年も農産物の引き続き輸入が増加する状況。3つにはグローバリゼーションの下でJAが、とりわけ信用・共済事業で外資や、国内の大型金融機関との競争を迫られるということです。 今村 正に同感です。1つにはワラを含めて飼料が国内でまかなえないことや、農畜産物の輸入とかWTO交渉などのグローバリゼーションの問題があります。2つには経済構造が21世紀に、どんな姿になるかが見えてこない問題ですね。今の構造は食料品需要が停滞するなど、いろんな形で農業に影を落としています。3つには農業の高齢化が進み、新しい担い手が育たない、その中で規模拡大した経営の不安定さが増しているといった構造の問題があります。 山田 グローバリゼーションの下での大競争の中で、JAの存在意義の1つは地域にねざしていることです。2つには国民の食料生産を担っていること。3つには協同組合として参加・参画の組織形態になっていること。この3つをどのように生き生きしたものにしていくか。そうした組織・事業活動が求められていると思います。 今村 金融や共済には銀行や保険会社もありますが、農業生産では農協しかありません。ところがある農協の元組合長は「組合員の農協離れというよりも近ごろは農協の組合員離れが進み出した」といいます。組合員の生活向上とか、リストラで帰農しそうな人の組織化など地域に根ざした活動が弱くなっているというのです。私はこの話を深く胸に刻み込みました。 ◆集落営農の法人化政策を推進 山田 JAの存在意義の一番大事なことは、JAが組合員の農業経営にどの程度かかわっているかです。圧倒的に兼業が多いわけですが、農業経営で所得を確保している少数の担い手農家がいます。こうした地域の多様性をまとめているJAとしては、地域農業を背負っている担い手をもっと意識的に大切にし、組織化をすすめるべきです。そうしないと構造改革にもなりません。 今村 私は集落営農をぜひとも法人化していく方向を進めたいと考えています。伝統的に水や農地の資源管理をしてきた集落を新しい時代の皮袋に入れるべきです。 山田 水田農業で考えれば、担い手への土地利用の集積も、その仕組みも十分進み切れていません。農地を資産として活用したいという転用待ちの思いが所有者にあるからです。そこで共益の観点から集落を単位に、場合によっては法人化して集積を進めるということですね。農水省は、集落法人も認定農業者であるという方向を出してきているので、そうした政策をさらに進めてもらいたいと思います。またJAも農地問題にもっと積極的にかかわる必要があります。 ◆地域の農業生産のために経営所得安定対策を 今村 経営所得安定政策をやる上で、透明性がない農業経営には例えば直接所得補償をやれば納税者から反撃が出ます。法人になれば経営内容などの公開が当然求められます。そういう点で、もう1つ認定農業者の家族経営をどう位置づけるかという問題もあります。 山田 昨年は、稲作経営安定対策から副業農家をはずす扱いに我々は大抵抗しましたが、それは稲経は米の計画生産と密接に結びついているからです。米政策をきちんとするには計画生産が一番大事な部分ですから、地域で主業農家と副業農家が一体となって計画生産を実施している実態には手をつけてはいけないという思いがありました。 ◆酪農経営と水田活用の連動で新しい畜産を確立 今村 もう1つ、転作とのかかわりで私はホールクロップサイレージづくりに本腰を入れてほしいと思います。通常の飼料作物生産だけでなく、米を飼料にする筋道をつくりながら同時に生産調整ができるし、自給率も上がります。 山田 ホールクロップサイレージと稲ワラ確保の両面で、酪農経営と水田活用の連動を進めるべきですね。地域合意で団地化し、コスト増による所得不足分は直接支払いをする仕組みをつくり上げればよいと思います。レンタカウはユニークな発想です。一定の基準に従った営農に直接支払いする形態はフランスなどにもあります。こうした仕組みを政策としてつくり上げるべきです。輸入飼料原料の危険性が明らかになったわけですから、反省の中で思い切った政策転換をやってもらわなくてはなりません。新しい畜産確立のためにも必要です。 今村 中山間地域への直接支払いを共益の事業展開に活用している斬新な試みも出ています。それを農協が高い視野から指導するような時代に直面していると思います。新しい路線がでてきつつあるのですからそれをどう実現していくかを農協のリーダーたちは、もっと考えるべきです。 山田 土地政策と農地利用のあり方も問題です。農用地に設定されたのに道路ができて、周囲が転用待ちになるといった実態が多く生じています。そこで、もっときちんと利用区分して社会的規制をかけて農地税制も整えることなどが求められますが、全く十分ではありません。 ◆顔の見える生産と販売の仕組みづくりを 今村 最後に農協の営農指導と販売事業の関係、それから流通面については、いかがですか。 山田 系統の事業方式を大きく転換しなくてはいけないと考えています。情報機器もそろっているのですから市場に出す前にJAグループの力でどう出荷調整をするか。従来のように委託販売、市場分荷の機能だけではない機能強化が求められています。 ◆公平性確保などベースに米対策に取組む 山田 次に米の問題は今年の最大の課題となります。生産調整を30年間続け、転換を迫られながらも、改革の芽が出ていません。そこで組織の創意工夫を集めて決断すべきところは決断していきます。その際大事なのは、主食である米に国がどう関与するか、必要な財源についても確保する、過剰米の処理を計画米だけに負担させない公平性確保の仕組みをつくる、この3つを検討のベースにしていく必要があります。 |