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特集:低コストで確かな効果をあげる水稲除草剤 |
低コスト・省力生産を実現する水稲除草剤 |
コメをめぐってさまざまな論議がある。しかし、国民の主食であるコメを生産する水稲作は、日本農業の根幹であることに変わりはない。品質が良くおいしいコメを生産するには、除草作業が不可欠だ。かつて人力で10a当り50時間余かかっていた除草作業は、いわゆる一発剤の開発で2時間弱にまで短縮されている。最近は、数多くの薬剤が開発され、地域ごとのニーズや散布方法に合わせた薬剤の選択ができるようになった。 そこで、14農薬年度における水稲除草剤の動向とこれからの課題を横山昌雄(財)日本植物調節剤研究協会事務局長に聞いた。 |
◆ジャンボ、フロアブル剤中心に昨年比1%アップ ――14農薬年度の水稲除草剤を概況するとどういう状況でしょうか。 横山 14農薬年度の水稲除草剤トータルの推定使用面積は288万6630ヘクタール(6月末集計)で、昨年同月比101%と微増しています。1ヘクタールあたりの投下量は18.7キロで、もっとも投下量の多かった1974年(61.4キロ)と比べると70%も減っています。 ――省力製剤が思ったより増えないということですが、その原因についてはどう分析されていますか。 横山 いろいろな人に意見を聞くと「まだ、省力製剤を知らない」という人が多いですね。フロアブルはうまく定着したようですが、生産者から「ジャンボ剤ってなに?」と聞かれると言います。ジャンボ剤の製造は手間がかかるために、まだ、メーカーの製造ラインが大量生産できる体制にないことも影響しているのではないかと思いますね。それから、ジャンボ剤として大きなシェアをもっている剤が、SU抵抗性対策がされていないために東北などで伸び悩んでいることもあると思います。 ――コストを下げて価格がもう少し安くなれば、もう少し違ってくるかもしれませんね。 横山 そういう可能性はあるでしょうね。 ――従来は、ジャンボ剤を含めて10万ヘクタールを超える剤が5剤ありましたが、14年度はどうですか。 横山 今年は2剤ですね。ますます平均化してきていますね。一つの要因は、MY―100(オキサジクロメホン)混合剤が伸びて上位にあった剤がくわれていることもあるでしょうね。 ◆MY―100、フェントラザミドが伸展 ――成分でみると昨年と比べて変化はありますか。 横山 表1が主な成分別の使用面積ですが、ヒエ剤では、プレチラクロールが微減していますが67万5000ヘクタールでトップですね。そのほかで目立ったのは、フェントラザミドが3万8000ヘクタールから12万5000ヘクタールへ、オキサジクロメホン(MY―100)が10万7000ヘクタールから24万4000ヘクタールへ増えているのが目立ちますね。 ――シハロホップブチルは、3葉期剤や2.5葉期剤に必要ですから、初・中期一発剤として3葉期まで狙える剤として使われているのでしょうね。 横山 そうでしょうね。私のところでは来年からは、初期とか初・中期という分け方をやめて、「一発剤」としようと考えています。多年生がないようなところで一発剤的な作用をする剤として「1年生持続型除草剤」がありますが、これも一発剤としてみたほうがいいと考えています。つまり、初期、初・中期と区分するよりも、一発剤のなかにそれぞれの性能をもった剤があるということになります。 ――1有効成分で複数の雑草に効くという剤の開発がされているようですが、それは本当に可能なんでしょうか? 横山 あまり高望みしなければ可能だと思いますね。いま一発剤といわれているものは、特殊雑草にもけっこう幅広く効きますが、この剤がそこまで効くかというとそうではないと思います。一発剤の最低限度の水準はカバーしていますが、プラスをどうするかでしょうね。 ◆ローテーションの確立でSU抵抗性対策を ――完璧を求めるのか、ある程度は許容するのか今後、分かれていく可能性があるわけですね。 横山 流通がこれからどうなるか分かりませんが、毎年毎年同じ剤を使うのではなくて、ある程度、剤を変えていくことを指導していかないといけないと思いますね。例えば、SU抵抗性雑草もそうですが、他の雑草も含めてその変遷を長期間にわたってみていると、ある雑草に有効な剤が出て効果をあげると、いままで見たこともない雑草が出てきてそれを叩く剤が出る。そうするとまた違う雑草が出てくるという繰り返しなわけです。つまり、一発剤をずっと使い続けてきた結果として問題が出てくるわけです。だから、流通のところで剤を変えていくとかという工夫をする必要があると思います。 ――SU抵抗性雑草も連用をしたので、種を保存するために出てきたわけですからね。 横山 それはもちろんありますが、いろいろ調べてみると抵抗性雑草は、漏水が大きいとか、砂状土とかもともと除草剤が効きにくいほ場に残るようです。こうしたほ場では完全に除草し切れないために種が残り、その内にそういう雑草がどんどん増えていくという感じがしますね。そしてそれが、風や水、あるいはトラクターに付着して運ばれたりして離れたほ場で突然発生したりしています。 |