現在、土壌消毒用として臭化メチル(通称=メチルブロマイド)の農薬登録を取得している会社は5社。適用はキュウリ、メロン、スイカ等の野菜類および切り花などの土壌病害虫防除で、まだまだ用途が広いが、従来はもっと適用範囲が広かった。当時は、全面処理といってハウス全体を処理していたが、これは1999年の登録変更で取り除かれ、適用作物も減少した。
これまでの動きを見ると、1999年から25%削減され、2001年には50%、2003年には70%の削減がなされている。この規制により土壌消毒用の臭化メチルは、1994年の約7800トンをピークに減少を続け、2000年には約3900トンと半減している。
2005年1月から臭化メチルは全廃となるが、これに対応するため、代替剤・技術の開発が1995年より始まっている。また、国は都道府県に対して臭化メチルと代替方法の「使用実態調査」を行い、代替方法の普及における問題点を収集している。
代替方法の最大の問題は、除草効果が臭化メチルにおよばないこと、低温期の消毒に時間を要し、特に冬季での作付の時期をのがすことがあげられる。しかしながら、代替方法が導入できるところにはこれを一層進めるため、国は「臭化メチル代替薬剤等地域適用拡大対策事業」を進め、代替薬剤として登録拡大された処理技術を生産現場に普及定着することを目指している。(土壌処理剤の特性比較)
(果菜類の被害)
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●線虫害にあうと、収量の低下、収穫期間の短縮などが起こる。
●こぶは数珠状に連なる。
●症状が進んだ根の部分は腐敗する。 |
主な代替技術を見ると、先ず、クロルピクリンは液剤において臭化メチルの適用範囲とほぼ同等となり、当初の目標を達成している。最有力の代替剤か。これは「ドロクロール」において顕著な動きを示している。CP剤の「クロピクテープ」、「CP錠剤」は安全性の高さに魅力がある。クロルピクリンの封入フィルムが土壌水分に接して溶解し、内部のクロルピクリンが出てくることから、これらの剤を土壌中に配置してから被覆シートをかければ作業者はガスに接触することなく、安全に作業できる。また、ダゾメット剤が挙げられる。「ガスタード」(系統)・「バスアミド」(商系)の商品名で広く親しまれているポスト臭化メチルの土壌消毒剤。微粒剤であることから使い易く、適用範囲も広い。耕起でのガス抜きに配慮したい。
さらに、D-D剤(テロン92・DC油剤)は経済性に魅力があり、殺線虫剤として根強いファンがいる。最近では、クロルピクリン40%とD-D52%を混合した「ソイリーン」、クロルピクリン35%とD-D60%を混合した「ダブルストッパー」が市場投入され成長路線にある。殺菌、殺線虫、除草効果を有し、刺激臭も軽減されている。
カーバム剤の「キルパー」(MITCナトリウム塩)、「NCS」(MITCアンモニウム塩)の2剤は、いずれも水溶性であることから処理方法として点注、土壌混和、灌注チューブ方式など多岐にわたり、大きな期待が寄せられている。十分な水分補給を心がけたい。
この分野で異彩を放っているのが、ホスチアゼート剤の「ネマトリンエース」。粒剤として、幅広い作物に使える。クロルピクリンやダゾメットとの体系防除も実践的技術として注目されており、長期間にわたる殺線虫効果が期待される。
その他の代替技術としては、太陽熱利用、蒸気処理・熱水処理、フラディング(封水)、病害抵抗性台木の利用などがある。また、ヨウ化メチルは登録申請の準備を進めている。
太陽熱・石灰窒素法は有機物の腐熟を促進させ、その結果地温を上昇させ、土壌病害虫を消毒する効果がある。
同協会では、国の事業として臭化メチル代替剤・技術の生産現場での普及定着を図るため現地圃場試験を実施している。その実績は、平成13年7県(11カ所)、平成14年10県(18カ所)に上り、着実に成果をあげている。当面の大きな課題は、臭化メチルの不可欠用途。国はこの1月に土壌伝染性ウィルスの防除のため、不可欠用途として全廃後も臭化メチルを使用できるよう国連環境計画(UNEP)に申請している。関係者はUNEPの決議を見守っている。
(2003.4.23)