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特集:シンポジウム「21世紀の福祉を考える」 −別府リハビリテーションセンター創立30周年 |
ふれあい たすけあい 明日にはばたく リハビリ医療の充実と福祉社会実現に努力―創立30周年記念式典― |
記念行事は、創立30周年記念式典、公開シンポジウム「21世紀の福祉を考える」、祝賀パーティーの3部で構成され、大分県、別府市の行政関係者、大分県内福祉事務所、大分医科大をはじめ関係医療機関、地元JA関係者、看護学校など学校関係者、JA共済連関係者、BRC職員など300余名が参集した。
続いて、広瀬勝貞大分県知事(代理)、浜田博別府市長、武下靜夫JA大分中央会長、前田千尋JA共済連理事長が来賓として祝辞を述べた。前田理事長は祝辞の中で「大きな成果をあげているBRCは、設立に携わったJA共済の誇りであり、協同組合運動の一つの結実した成果であるとも考えております」と30年の歴史のなかで築き上げてきた成果を讃えた。 式典はその後、長年にわたってBRCに協力してきた歯科医師や皮工芸、竹工芸の職能講師、地域のふれあいサークルに感謝状を贈呈。スライドで30年の歴史を振り返り閉会した。 ◆時宜にかなった好企画 ――シンポジウム「21世紀の福祉を考える」 記念式典後に開催された公開シンポジウム「21世紀の福祉を考える」では、長期リハビリの経験をもつジャーナリスト村田幸子氏(NHK解説委員)が基調講演(別掲)を行った。 そして平塚良子大分大学大学院教授が、かつて共同体の精神的紐帯であった老人が、生産力、科学・技術の高度化した段階で、老知(老人の知恵・知識)が活かされない若者・壮年男性中心の社会になったと、老人の社会的な位置付けについての歴史的変遷を分析し、これからは老知を活かしす1人1役運動を提起。 自らも障害を持つ齋場三十四佐賀医科大学教授が、ノーマリゼーションの展開を阻むものを、障害者の立場から、羽田空港の歩く歩道など、具体的な事例を豊富にあげて問題点を鋭く指摘した。 そして、阿部誠大分大学教授が、経済学的な立場から高齢社会の生活保障について語った。 その後、4氏によるパネルディスカッションが行われ、これからの福祉のあり方について、多角的に論議された。やや難解な部分もあったが、集まった300人を超える聴衆は最後まで熱心にパネリストの話に聞き入っており、福祉への関心の高さを改めて感じさせられた。 福祉については、さまざまな論議があり、JAグループでもさまざまな取り組みがされているが、これからの福祉のあり方を考えるこのシンポジウムのような機会がもっともたれる必要があるのではないだろうか。そういう意味では、時宜にかなった好企画だといえるだろう。 高齢者・障害者の自立を支援すること シンポジウム「21世紀の福祉を考える」基調講演(要旨)―村田 幸子氏 ◆至れり尽くせりの「お世話主義」からの脱却 これまでの福祉は、身寄りがないとか、所得が少ないといった限られた人たちに対して「何々をしてあげる」という感じで福祉サービスの提供が行われいた。しかし、21世紀はこういう考えを脱して、一部の人たちだけではなくて、いろいろな解決すべき課題を抱えている人すべてに対して、その課題を解決するために提供されるもの、その課題を解決するためにどうしたらいいかという施策が福祉施策である、というように考えられるようになった。 そのキーワードは「自立支援」だ。自立支援とは身体的な面での自立と考えられがちだが、もう一つ大事なことがある。それは自分の暮らしのありよう、自分はこういう生活をしたいという思いを実現させるために支援していくこと。つまり、自らの生活のありようは自分自身で決めることができるような支援を行うことだ。 いままで、高齢者や障害を持った人たちは、概ね自らの暮らしのありようは自分で決められなかった。家族、周りの専門職の人、行政の人や地域社会の人たちの「あなたはこういうことはできないんだから、こうしたほうがいい」という思惑に左右されて、「本当は私はこういうことがしたいのに」と思いつつも、そのことが言い出せず、あるいはそのことが実現不可能だという諦めのもとに、自らの人生を選び取らなければならなかった。 しかしこれからは、例えば3欠けた人がいれば、その欠けた部分だけを補ってあげ、後のできることは自分でやる。そしてその人が、自分の暮らしはこうしたい、こういう人生をおくりたいという思いが実現できるように周りの人たちが支援する。あるいは自立したいという意欲がもてるように支援するのが福祉である。 それは、何かできなくなると施設に入れて至れり尽くせりのお世話をする「お世話主義」からの脱皮といいかえてもいいと思う。至れり尽くせりのお世話から脱皮をして、その人ができることは自分でやってもらう、できないことはどうしたらいいか周りで支援する仕組みをつくる。それをやっていこうというのが21世紀の福祉の基本的な考え方だと思っている。 ◆障害者像・高齢者像の変化 なぜ、こうした考えに変わってきたのか。 一つは、いままでの福祉施策は、財源を行政が握り、誰に、どんなサービスを提供するかを行政がすべて決め、一部の限定された人を対象とするる措置制度であった。サービスを提供する側と受ける側の関係は、上下関係になる。その根底には「お恵み」「施し」「救貧」という考え方がある。したがって、提供されるものは「タダ」とか低廉で、「福祉はタダ」という考えが一般的になった。そのために「私はお世話を受けなくても大丈夫」と肩肘を張り頑張ってしまう人もいた。また、行政が認めた事業者に委託をしてサービス提供をしてきた「競争のない社会」であったために、そこそこのサービスで事足れりとしていた。しかし、この方法論では、これからの時代、限界があり、見直しが行われた。その背景にはみんなが80〜90歳まで生きられる高齢社会の到来がある。 もう一つは、いままで福祉を必要とする人は、ほとんどが明治・大正生まれで、自分の意思を殺して、施設や病院での生活を選択し、嫁や息子には迷惑をかけないという「我慢の世代」といえる。したがって、これまでの福祉施設や病院は、家族のために存在し、高齢者や障害を持つ人の幸せのためにあったとはいえない。しかしこれからは、豊かな時代を享受した昭和生まれの人が高齢者軍団を形成する。この人たちは高学歴で、自立思考が強いので、障害者像、高齢者像は大きく変わる。そのときの福祉のあり方を考えなければいけなくなった。 ◆キーワードは地域住民の参加 そのため、小手先ではなく、社会福祉の基礎構造を根本から変えようという議論が行われてきた。その考え方を表す制度として介護保険制度や障害者への支援制度が実現している。 その大きな特徴は、提供する側の論理から、利用者の思いを活かしていく仕組み。上下関係から対等な関係で利用する仕組みへという「利用者本位」にある。 対等な関係を実現するカギは、地域住民が福祉に関心を持ち、参加する。トップダウンから現場に近いところから問題を掘り起こし提起するボトムアップなど「住民参加」だ。そのことで、行政が提供する公平・平等・画一的サービスの上に、一人ひとりの価値観に見合ったものをどれだけ提供でき、高齢者や障害者の生活の質を高めることができるかである。これからの福祉の舞台は地域社会だ。 (2003.6.13) |
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