農業協同組合新聞 JACOM
   
特集:シンポジウム「21世紀の福祉を考える」
    −別府リハビリテーションセンター創立30周年

21世紀の福祉をめざして 大きくはばたくBRC


身障者用教習車
身障者用教習車
 農協共済別府リハビリテーションセンター(BRC)は、温泉の街として全国的に名高い別府市の郊外、鉄輪(かんなわ)温泉に近く、扇山を背にセンター内のどこからでも別府湾が眺望できる閑静な景勝の地にある。センターのメイン道路には設立時に植えられたという桜並木が続き、満開のころには地域の人たちとの「ふれあいフェスタ」が開催され、多くの人が来場する。
 BRCには、整形外科・脳神経外科・内科・歯科があり、治療にあわせて理学療法・作業療法・言語療法を行う診療施設〈病院〉。
園芸療法・洋蘭栽培
園芸療法・洋蘭栽培
 身体障害者が入所し、種々の訓練によって機能の維持増強をはかるとともに、残存能力の活用をはかることで社会復帰を支援する重度身体障害者更生援護施設〈にじ〉。働く意欲がありながら雇用の機会に恵まれない身体障害者に、就労と自活の場を提供する身体障害者入所授産施設〈みのり〉。身体障害者福祉ホーム〈のぞみ〉。身体障害者デイサービスセンター〈ふれあい〉。各種相談や情報提供を行う障害者生活支援センターなどの施設・事業がある。

◆市場でも高く評価されるミニトマトの生産

授産作業・ミニトマトの収穫 授産作業・ミニトマトの収穫
授産作業・ミニトマトの収穫
 そうしたなかで、全国のリハビリ施設でも珍しい特筆すべき施設がここにはある。それは身体障害者のための自動車教習所とミニトマトを生産・販売する栽培温室だ。昭和49年に設置された自動車教習所は施設改修工事の関係で取材できなかったが、障害者が社会復帰するためには大変に重要な施設だといえる。
 栽培温室は、1000平方メートルの広さを持つ温室が3棟あり、水起耕栽培によるミニトマトが1棟あたり年間8〜10トン生産されJA別府市を通じて市場出荷されている。1棟ごとに定植時期をずらすことで、ほぼ年間を通して安定的に供給しているという。別府市内ではミニトマトを生産する農家がないこと、鮮度・品質がよいため、安定的な需要があるという。
 定植から栽培・収穫、さらに収穫後の選別・箱詰めまで、すべての作業は入所者が行い、その収益はすべて入所者に分配される。そして、農業をすることがリハビリにもなっているという。これこそ、農協組織にふさわしいリハビリ施設だといえるだろう。
 
◆さらなる機能の充実みょうばんクリニック新設

身障者用教習車
身障者用教習車
 BRCは昭和48年の開設以来、施設・事業の充実を着々とはかってきたが、その機能をさらに充実させるために、1万4189平方メートルの敷地のなかに延べ床面積3787平方メートルの鉄筋コンクリート2階建ての「BRCみょうばんクリニック」を建設中だ。ここに、19名の入院施設と40名定員の通所リハビリテーション事業、地域交流センターを併設する。地域交流センターは、障害を持ち在宅で生活する人と地域住民との交流拠点として、短期宿泊施設・コミュニティーホール・ボランティアセンター・グランドゴルフ場などを地域に開放するとともに、相談支援事業などを設けることにしている。完成は、今年12月の予定で、21世紀の福祉の拠点としてBRCはさらに大きくはばたこうとしている。 (2003.6.13)

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