全国で6番目の地域別飼料会社としてJA東日本くみあい飼料(株)が誕生した。全工場ISO9001認証取得、牛専用製造・配送体制の確立など、時代のニーズに応えた同社は、これからの飼料事業の進むべき方向性を明確に示しているといえる。
|
◆年間150万トン供給する最大の地域別飼料会社
今年4月1日、東日本くみあい飼料、栃木くみあい飼料、関東くみあい化成工業、信越くみあい飼料の4会社が合併して「JA東日本くみあい飼料株式会社」(新井昌一会長、五味渕明社長)が誕生した。同社は、飼料事業の合理的事業方式として提起された地域別飼料会社構想の一環として取り組まれ、JAの広域合併や経済連と全農との統合など組織整備が進む中で、実現したものだ。
|
東日本のhをモチーフに、農家経営に貢献するヒューマンな企業として、人が躍動するイメージと飛躍・発展を表現した社章
|
地域別飼料会社としては、10年の北日本くみあい飼料、13年のジェイエイ東海くみあい飼料、ジェイエイ西日本くみあい飼料、ジェイエイ四国くみあい飼料、14年のジェイエイ北九州くみあい飼料に次いで全国で6番目の地域別飼料会社だ。
同社は、先行する地域別会社とは異なり、当初からJA全農全国本部の配合飼料事業が移管され、製造と営業が一体化された体制
|
本社の外観
|
でスタートし、16年4月にはJA全農の都県本部の飼料事業が移管され、製造から営業・販売までの一貫した地域別飼料会社となる予定になっている。
そして供給エリアは、茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・長野・新潟の関東信越地区8都県におよび、約4000戸の畜産農家に年間約150万トンの配合飼料を供給する地域別飼料会社としては最大規模の会社が誕生したことになる。
◆全工場でISO9001認証取得、牛専用製造・配送体制を確立
|
赤城工場
|
しかし同社の特徴は規模の大きさだけではない。
同社の基本的なポリシーは「畜産経営への貢献」と「食の安全に対するニーズへの対応」だと五味渕社長はいう。それを実現するために、合併前から地域内の飼料製造工場を見直し、5工場(別に肥料工場が1ヶ所ある)体制に整理。その上で、より安全で高品質な飼料製造体制を整えるために14年中に全5工場が
ISO9001認証を取得。さらに15年2月からは、牛用飼料専用工場(小山、群馬)と
|
群馬工場
|
鶏豚用飼料専用工場(鹿島、赤城、新潟)体制を業界に先駆けて確立した。
牛用飼料は工場の分離だけではなく、工場・中継基地・生産者までの配送用トラックも牛用専門トラックを配置するなど、鶏豚飼料と一切混入しない徹底した体制を整えた。
五味渕社長はBSE問題発生以前から、21世紀のキーワードは「環境と安全」だと語っていたが、現在の状況はその言葉を裏付けているといえるだろう。
◆餌は食卓につながっている
――食品産業という認識で
|
新潟工場
|
供給する配合飼料は、畜種別にみても乳牛用、肉牛用、豚用、ブロイラー用、採卵用があるが、それぞれに生産者、消費者からの注文があり製造する配合飼料は延べ500アイテムに達するという。そのどれであっても小さなクレームが大きな事故につながる可能性があるといえる。「餌は食卓につながっている」のだから、飼料工場といえどもこれからは「食品産業だという認識をもたなければいけない」。だからISOの認証取得も牛専用工場から徹底した分別配送も実施した。そのことで、生産者と消費者に安心・安全を届けることができるのだとも。
◆しっかり仕事をすれば可能性は無限にある
|
大間々肥料工場
|
どこでもそうだが合併会社で一番の問題は、どうやって全社員の意識を統一するかだといえる。今回合併した栃木くみあい飼料は昭和25年、関東くみあい化成工業は昭和26年、東日本くみあい飼料は昭和45年の創立と長い歴史を持っている(信越くみあい飼料は昭和60年)。当然、企業風土も習慣も異なる会社だといえる。だが「各社とも何回か合併を繰り返して今日に至った経過があるので、その点の心配はそれほどではない」という。
|
小山工場
|
しかし、それぞれ特定の地域で生きてきたわけで、例えば鹿島工場の社員は当然だが新潟工場の社員とほとんど面識はなく、誰が工場長か知る由もないのが現実だ。そうした社員の意識を統一するためにVTRを製作し全社員に配布、家族にも観てもらうようにしたという。VTRでは会社の考え方はもちろんだが、全役員出席する会議の模様が撮影され、役員の顔が分かるような工夫がされている。さらに全工場長がこれからの抱負を語り、生産者やJA組合長、生協など消費者が同社へ寄せる期待を語っている。このVTRで訴えたかったのは「新会社の姿と一人ひとりが持ち場・役割を考えてシッカリ仕事をすれば、可能性は無限にある」(五味渕社長)ということだ。
|
鹿島工場
|
JA東日本くみあい飼料は生まれたばかりの会社だが、これからの畜産経営に貢献し、食の安全ニーズにシッカリと応えることができる時代の要請に、確実に応えていく会社だといえるのではないだろうか。
(2003.8.26)