農業協同組合新聞 JACOM
 
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特集:決意新たに。経済事業改革のめざすこと


いち早くコールドチェーンを確立
全農の首都圏青果センター

 JA全農は東京生鮮食品集配センターを埼玉県戸田市美女木向田1141に移転して最新鋭施設を建設。昨年11月に稼働し、全館の温度管理で入荷から納品までのコールドチェーンを確立した。取引先からの信頼とともに、24時間荷受け体制の実現で産地の都合に合わせた搬入もできるようになった。産地情報と、取引先からの発注情報をマッチングさせ、それを自動倉庫システムに連動させる物流情報管理システムなどでも業界の話題を呼んでいる。同センターは今年4月に大和生鮮食品集配センター(神奈川県)との管理部門統合で名称を「首都圏青果センター」に変更した。

 野菜や果物の鮮度を保つコールドチェーンの確立は卸売市場改革の重点課題だが、それを先取りする形でJA全農の「首都圏青果センター」が昨年11月から稼働。ビジネスモデルとして見学者が相次ぎ、海外組では韓国農協中央会などからも来た。また卸と仲卸の機能を兼ねた運営でも業界の注目を集めている。

◆動線を一方通行に

フォークリフトは電動式で騒音・排ガスが無い
フォークリフトは電動式で騒音・排ガスが無い

 本社は埼玉県戸田市にある。元の名は東京生鮮食品集配センター。施設は倉庫をはじめ荷さばき場なども含め全体がいわば巨大な冷蔵庫。
 関東では別名が“やっちゃ場”の青果卸売市場は活気が身上。作業員らが入り乱れての人海戦術で、フォークリフトが走り回る。しかし、それは動線の不統一を表す。
 それに比べ、ここには喧噪がない。フォークリフトが音もなく滑る。すべて電動式なのだ。構内全体が電化され、従来型のようにガスや重油を使わない。クリーンな環境を実現した。
 何よりも優れた点は整然とした一方通行の動線だ。全国の産地から冷蔵車で運ばれた青果物を倉庫で冷蔵し、配送車に積むまで、その流れは製造業大手のライン作業とよく似ている。
 勢い場内物流のロスがなくなり、作業には熟練者がいらなくなるなどでコストダウンとなった。もちろんコールドチェーンだから品質ロスも大幅軽減だ。
 「全農がコールドチェーンのシステムにトライしたのは、新鮮な農産物を食卓に届けたいという生産者の思いを何とか実現したかったから」と園芸販売部の江郷明部長は語る。部長の前職はセンターの場長だ。
 「以前は追熟を想定して収穫していた農家も今は完熟品を出荷できるようになった」効果なども挙げた。
 さらにロスを省いた余力を「営業力強化に振り向けて新センターは営業拠点ともなった」という。

◆営業スタイルを一変

 取引先は生協、量販店、食品加工業、外食・中食産業など。そこへ企画書を持ち込むなどの提案型営業へとスタイルを変えた。
青果物の利他委保冷倉庫
青果物の立体保冷倉庫
 しかも品物がセンターに入荷する前に取引を成立させる事前営業を展開している。以前は早朝に届いた現物を販売するために7時出勤だったが、今は9時出勤だ。営業マンたちが産地回りをするゆとりも増えた。
 「事前営業のねらいは小売店の売場を先に確保すること。輸入品に攻められっ放しではダメだから。また加工実需への対応もある。とにかく全体として全農35県本部と県連が産地リレーしながら年間を通じて国産青果物の安定的な供給責任を果たしていく」とのことだ。
 事前営業には相場の影響をもろに受けないようにする利点もある。さらに欠品や欠量が減っている。こうしたことから仕入れ先をセンターに変えたいという量販店も増えてきている。
 センターの品物は「店頭での日持ちがよい」「品質がしっかりしている」などコールドチェーンのねらい通り取引先から好評だ。
 取引は産地の出荷情報を前もって電算システムに入力し、そして取引先の発注を入力して結びつけ、荷さばきデータをつくるといった形で進め、入荷後24時間以内に販売している。
 営業マンは約50人。全農青果サービス(株)(森口俊社長)に営業を委託した要員も含まれている。構内作業の要員は約100人で、ほとんどが外部委託だ。

◆電算システムで回転

 施設は全館が温度管理され、荷さばき作業場は15度C、倉庫内は5度Cから15度C。また鮮度保持力を高めるためエチレン除去設備もある。
 倉庫は3階ぶち抜きの立体構造で品物を載せたパレットが4752棚。その棚の1つひとつがコンピューター制御で前後左右上下に動くスタッカークレーンによって品物を出し入れする。収容能力は約1400トン。業界では初めての自動ラック倉庫と呼ばれる。
温度管理された青果物の搬出入も効率的に
温度管理された青果物の搬出入も効率的に
 
 「何時にどこへ、どの品物を配送するか時間刻みで品物を倉庫から出すために複雑な電算システムで回転率を上げている」とセンター事業管理部の中村俊哉部長は説明する。
 配送における冷蔵車の比率はまだ高くないが、トラックバースでは車の尻を構内の出荷荷さばき場に並ぶドアにくっつけて荷を積み込む。
 構内には包装加工場もあり、納品先の要望でパック詰めもしている。

◆見学者引きも切らず

 センターには見学者が多く、中には産地JAから大型バスで40人50人といった団体がくることもあり、その応対にも忙しい。
 今後の課題としては「配送システムの整備」を江郷部長は挙げた。
 なおセンターの敷地面積は24605平方メートル、荷さばき場14813平方メートル、冷蔵庫3955平方メートル、その他となっている。 (2003.8.27)


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