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特集:米穀事業改革 売れるコメづくりをめざして |
福田 晋 九州大学大学院農学研究院助教授 |
◆構造改革 コメだけでは課題解決できず 「米づくりの本来あるべき姿」にむけて米政策が動き出した。
しかし、米づくりの本来あるべき姿が、「農業構造の展望」等で掲げられた効率的安定的な農業経営が太宗を占めているという点には、大いに疑問が残る。農業構造の改革は、米問題のみで解決できない複雑な要因が絡んでおり、まさに、麦、大豆、飼料作の本作化や地域の特性を活かした多様な水田農業が展開していく中で、そのような構造に到達するか否かが見えてくるであろう。そのような構造改革の実現と今回の米改革の1つの柱となる地域水田農業ビジョンの作成には、まだギャップがあるように思えてならない。基本的課題である。 ところで、地域水田農業ビジョンの作成は、今回の改革の1つの目玉である「産地づくり推進交
◆耕畜連携 宮崎・国富町 契約グループが多数 宮崎県国富町では、日本一の葉タバコ生産の土壌クリーニング効果と転作消化及び畜産飼料増産に対する期待が契機となり、飼料稲に取り組み2001年で231ヘクタール、転作面積の28.6%を占め、転作達成率120.7%に貢献している。耕種農家と畜産農家同士あるいは農家集団同士で生産利用の契約をし、耕種農家は耕起、移植、収穫前の管理までを行って無償で供給し、収穫、乾燥調整を畜産農家が行っている。このような農家間、農家集団間の契約グループは13年度で120グループに及ぶ。飼料作物を作付けして経営確立助成に参加している農家は、畜産農家189戸(全畜産農家322戸の約59%、零細繁殖農家や17戸の肥育農家は参加していない)、無家畜農家386戸、合計575戸で全農家数の32%にあたる。 ◆戦略作目定め交付金の傾斜配分を しかしながら、現在の生産力とシステムを前提とした筆者の試算によると、
ここで注目すべきは、今般の米改革の1つの柱となる産地づくり推進交付金における産地づくり対策である。この対策は、従来の転作作物に対する補助金でないことを理解すべきであり、当該地域の水田農業をどのように推進するかという点と深く関わっている。稲発酵粗飼料を重点的に推進するならば、例え総額としての助成金水準が減額された場合でも、稲発酵粗飼料について上述の助成金水準を確保すべきである。これは他の作目の助成金水準を引き下げることを意味する。 国富町の場合、他の転作作物である施設野菜や葉タバコなどは、収益性の面から見ても水稲に明らかな比較優位を持っており、すでに主体的・合理的に定着した作物というべきである。つまり、これらの品目に対する助成金の減額は、「新たな産地づくり」のための戦略作目への資源配分という点からは、一定の妥当性がある。むしろ、飼料稲を今後伸ばすべきであるが、現状では生産力の低い幼稚産業であるために、一定の助成を必要とし、一定期間内に生産力をあげて産地形成をするためにも、産地づくり対策の傾斜配分を行うべきである。 ◆ビジョン作成に必要な飼料稲供給システムの構築 また、米価下落影響緩和対策と産地づくり対策の資金は、
さらに、国富町では「担い手」の位置づけが重要になる。現在の耕種農家と畜産農家の協定が農家及び農家集団レベルで120グループ存在するという形態は、町の生産振興会等における合意形成の賜物であり、耕種農家、畜産農家ともに顔の見える地域内での調整システムが合理的に働いた結果ともいえる。しかしながら、高齢化、後継者不足を考慮すると、平成20年にこれらのグループすべてが現状のまま推移するとは思えない。すなわち、将来的に飼料稲を供給しうるシステムを構築してビジョンを作成しておく必要がある。自立した産地形成のためには、低コスト化や高品質サイレージの供給は必須の課題であり、そのための飼料稲を供給できる主体が形成されなければならない。実際の収穫作業や運搬作業が効率的に行えるコントラクターのような組織が必要になる。その意味では、すでにコントラクター等が飼料稲供給の主体になっている地域は、逆説的ではあるが、ビジョン構築の先行事例ともいえるのである。 (2003.9.18) |
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