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特集:米穀事業改革 売れるコメづくりをめざして |
現地レポート JA米の確立と売れる米づくりに取り組む産地 品質向上めざし栽培技術のレベルアップと販売促進に取り組む JA新潟西(新潟) |
◆全農家に栽培指針を配布 JA新潟西(本間平八郎代表理事組合長)は、新潟市西部の6JAが平成8年に合併した。管内の耕地面積は2892ヘクタール。うち2130ヘクタールが水田で新潟市内ながら広々とした水田地帯が広がる。
米の生産はコシヒカリが80%を占め、そのほか県推奨銘柄のこしいぶき、雪の精などが作られている。 これまでは新潟コシヒカリの産地として市場からの評価を得ていた。JAの集荷率は95%。14年産では約11万俵(60kg)を集荷・販売している。 ただ、今後の米づくりについては、現在の「新潟コシヒカリ一般」という位置づけに甘んじていては評価されず、より一層の品質向上が不可欠とJAでは考えている。 そのため水稲部会で生産者と検討し、13年産から試験的に有機系肥料を使ったコシヒカリ栽培に取り組み食味向上に努めてきた。 そして15年産からは、コシヒカリとこしいぶきの栽培指針を作成し全農家に配布、生産履歴の記帳運動に取り組んでいる。 栽培指針には、有機系肥料の使用など品質向上のための施肥設計のほか、高温障害を避けるための適切な田植時期、十分に登熟させるための水管理などを改めて明記した。基礎的な技術の大切さを周知徹底してもらうのも狙いだ。 除草や病害虫防除についても標準的な農薬を記載するとともに、使用基準の説明、無登録農薬の使用禁止などを強調した内容になっている。 ◆「産地指定」を目標に掲げ 栽培指針に基づく米づくりと生産履歴記帳の必要性は59ある集落すべてで開催する座談会で生産者に説明した。理由として強調したのが「消費者に喜ばれる米づくりをしなければ生き残れない」である。
管内にはカントリー・エレベーターやライスセンターなど集荷施設はなく、生産者個々が乾燥調製して出荷する地域。地域全体の米づくりのレベルアップといっても「個人のレベルを上げることが最大の課題」と営農経済部の伊藤邦司部長は語る。 そのためJAでは、生産履歴表を米の出荷前にJAに提出してもらうようにした。生産者から提出された生産履歴表を営農指導員がチェック、農薬など不適正な使用がなされていないかなどを点検したうえで集荷する。 生産履歴に問題のある場合や、生産履歴記録が提出されなかった場合も集荷はするが、区分して管理、栽培指針に基づいて作られた米とは扱いを変えることにしている。この方針も集落座談会で生産者に説明した。 また、食味向上のために有機系肥料を使用するコシヒカリづくりもこの栽培指針のなかに示され、15年産では取り組む生産者も増えコシヒカリ生産量の約10%、1万3000俵程度は確保できそうだという。 そのほか早生系品種として食味も良く高温障害にも強いこしいぶきの生産拡大や加工用米への対応もすすめ将来的にはコシヒカリの生産割合を全体の7割程度に抑える方針にしている。 生産履歴記帳への取り組みについて伊藤部長は「履歴を記帳することは当たり前の時代になる。それで価格が上がるといったメリットを期待するのではなく、現在の相場を崩さず確実に販売できる米づくりをする。それを生産者にしっかり理解してもらう必要がある。いずれはJA新潟西のコシヒカリを、と卸から産地指定してもらうことが目標だ」と語る。 ◆JAも販売促進に努力
生産者に品質向上の努力を呼びかける一方、JAとしても管内の米のPRなど販売促進活動を積極的に行っている。 ◆売れる米づくりを担い手育成につなげる
水田の広がる地帯ではあるが、「新潟市内という『都市農業』が実態。兼業化が進み、将来は作業委託などを望む生産者も多い。しかし、その受け手がいない。農地集積できる担い手づくりが大きな課題となっている」と伊藤部長は語る。基盤整備も進んでおらず生産法人など組織的な米づくりはほとんど進まないままで、栽培から収穫、乾燥調製までいわゆる自己完結的な米づくりが行われている地域だという。 こうした構造を変えていくためにも「売れる米づくり」が必要だと考えている。 「食味など品質への評価が高まり、たとえば産地指定が得られるなど産地として信頼されれば生産者に意欲が出てくる。そうなれば担い手として米づくりを行おうと考える生産者も出てくる。売れる米づくりは産地としての構造改革を動き出させる取り組みでもあります」と伊藤部長は強調した。 (2003.9.19) |
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