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特集:第23回JA全国大会特集 改革の風を吹かそう |
インタビュー JAグループに期待すること 永田 宏 三井物産(株)代表取締役副社長 |
◆農業を早く変えようとは考えていないEU諸国
坂田 欧州三井物産(株)の社長をされておられましたが、ヨーロッパ全体をみておられたのですか。 永田 西欧、中欧そしてアフリカの地域をみていました。 坂田 ヨーロッパの農業をご覧になった印象はどうですか。 永田 一言でEUといっても国ごとに特色があります。例えば英国では、製造業はGDPの20%を切っています。農業に関しては、気候が良くないこともあって、牧草地が多く、牧畜業に根強いものがありますね。その他、小麦、養鶏も多いですね。 坂田 フランスが平気でアメリカの方針を批判できるのは、農業基盤がしっかりしているからではないかと思いますね。 永田 フランスは農業だけではなく、工業品を含めて自給自足率が高いですね。食料品では大豆とかなたねなど油脂原料の輸入をしていますが、フランスパンを作るには自国の小麦が一番だと思っているように、自国産の農産物を大事にしますね。 坂田 ドイツはどうですか。 永田 気候的な問題もあって加工食品は輸入が多いですね。小麦と馬鈴薯が基本的な作物で南のほうでブドウやリンゴなどの果樹をつくっていますね。 坂田 ヨーロッパは、ゆっくりしている感じですね。 永田 農業に関しては早く変えようとか、特産品を努力をしてつくっていこうという考えはないんですね。いい意味で旧態依然としていることを良いこととしているわけです。 坂田 そこに人が集まってくるわけですね。 ◆日本人の優れた味覚がある間は日本の農業はなくならない 坂田 日本から農業がなくなると困るんじゃありませんか。 永田 マクロでみると、日本が経済成長を続けていっても、現在の日本の人口は増えません。それにあわせて変わっていける農業ということで価値がでてくると思います。工業も発展途上国に比べればコストが高いので、汎用品は海外から取り入れたうえで付加価値の高いものをつくっていかざるをえない。そして第3次産業がどんどん増えてくる。第3次産業とは何かといえば、外食とか掃除の産業だったり、老人介護サービスだったりするわけです。そこに何を求めているのかといえば、自分自身がやるよりも安くて手に入れられるものということでもあります。そこに日本がいま直面している問題があると思いますね。 ◆農業を守るには、食文化にもとづく消費者教育が 坂田 フランスなどではどうなんでしょうね。 永田 フランスはものすごく頑固で、この国のこの産地でとれたものが世界で一番いいものだといいますよ。そしてこれを食べるからシーズン性があるとか、カチッとした食文化の枠組みを持っていますね。 坂田 最近の日本はどこに行っても同じ料理が出てきたりしますね。 永田 日本の農業を守るには日本の消費者を教育していかなければいけないんですね。消費者教育は、消費者が安ければなんでもいいとか、健康にいいからといって食べるのではなく、日本の持っている食文化は違うんだという考え方。そして、この地方に行って初めて味わうことができる。味わうためにそこに行く、ということが育っていく文化が必要だと思いますね。 坂田 JAが消費者教育するには難しい面もありますよ。 永田 組織全体でやるのは難しいかもしれませんが、個々のJAがここにくればこういうモノがあるということを前面にだせば一つのいい動きになるんじゃないですか。そのJAに対抗して篤農家が仲間と特産品をつくって出していくことがあってもいいですね。互いに刺激になりますしね。 ◆ボトムベースでは満足度は低くなる 坂田 JAの経済事業改革についてはどうみておられますか。
永田 組合員がJAに栽培指導を受けたいと希望しているのか、資材を買いに来るのか、トータルで来るのか、人によって違うと思います。そのときに、全農を含めてJAグループがどういう機能を売りにするのかですが、いろいろいる組合員に均質に対応するために、弱者に視線を落として経営されていると思います。 坂田 これからの農業の姿といいますかあり方についてはどう考えておられますか。 永田 農業と環境がいままでは全然違うものとして論じられてきましたが、環境を守るために農業が果たす役割はものすごく大きなものがあります。環境がクリエイトしていく需要は、これから大きく世界を変えていくと思います。そのときに農業が環境に対して果たせる役割がいろいろとでてきます。21世紀は水の時代といわれていますが、日本はこれまで完璧に治水をやってきましたが、治水と農業がいかに環境に貢献できるかとか、地域と水とか、空気もそうですね。そういうものをすべて有効利用して観光・農業・自然がパッケージになってくるべきと思いますね。 坂田 グリーンツーリズムですね。 永田 ヨーロッパでは盛んですね。 ◆経済大国として譲るべき点を明確にしないと進まないWTO交渉 坂田 今回のWTO交渉についてどうお考えですか。 永田 国の文化とか産業構造を国が変えようという意識がないと、自分にデメリットのあるものはやらないでいこうという保身主義になります。発展途上国はそういうことがないから、攻めまくればいいわけですよ。WTOもFTAもその構造のなかで進められているわけです。 坂田 たくさん開いてきているんじゃないですか。 永田 これ以上開かなくてもいいというなら、守らなければいけない2、3点に絞って具体的にいわないと進まないと思いますよ。 ◆農業を立ち上げたい若い人を支援する仕組みづくりを 坂田 最後に、商社の立場からJAグループに期待することはなんでしょうか。 永田 農業人口が減り高齢化するなかで、企業家としての農業を立ち上げたい若い人に、農業を魅力あるものにしていって欲しいですね。これは商人ではできないことですから…。そして、そういう人を農業ベンチャーとして、どうヘルプしサポートしていくか。国、地方自治体そしてJAが仕組みづくりに力を貸してもらいたいと思います。 坂田 お忙しいなか、ありがとうございました。
(2003.10.3) |
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