|
|||||
特集:第23回JA全国大会特集 改革の風を吹かそう |
インタビュー 田林 聰 JA全農理事長 |
◆JA支援体制構築が改革の基本的な方向 今村 農協のあり方研究会で事業改革の方向が提起され、JA全国大会に向けてその実践の方向をみせていただいていますが、その基本方向の内容はどういうものでしょうか。
田林 第23回JA全国大会は、JAを取り巻く情勢とJAグループの取り組みの現状と課題を明確にした上で、JAグループとして実践する重点実施事項を4つかかげています。その1つは、安全・安心な農産物の提供と地域農業振興、2つ目は経済事業の改革、3つ目は経営の健全化、4つ目として地域の活性化です。 今村 JA全国大会に向けてもその方向でだすわけですか。
田林 経済事業改革における全農の役割は、JA経済事業の支援をする体制をつくること、全農として効率的な事業のシステムをJAに提供するため、現状の事業システムを改革することですが、それを「改革の基本方向」で整理しました。 今村 これは全中とも… 田林 経済事業改革中央本部で協議をし、取りまとめています。 今村 農協のあり方研究会の報告書は「全農改革の断行」として、全農の改革は「農協改革の試金石」であり、全農改革の断行を国民各層に目に見える形で提示することが必要だとして、真剣に全農改革に取り組む体制の確立など、5つの視点をだしましたが、いまのお話をお聞きすると、それらは盛り込まれているわけですね。 田林 今、話したような内容で実践することとしています。 ◆推進は現場に近づけ、全国本部は司令塔に 今村 外部から見て多くの人には、全農の全国本部と県本部、JA、生産者という縦の関係の中で、全国本部と県本部との関係が分かりにくいと言われていますね。統合はしたけれど前と変わりがないのでは…とか。そのあたりの方向性はどうですか。 田林 極力、推進は現場に降ろし、全国本部は、全国レベルでの価格、輸入、開発、代金決済、関連会社管理、コンプライアンスなどに特化していくという方向です。JAや担い手、大型農家への推進とか技術指導は、将来つくる広域ブロックの拠点に移していこうということです。 今村 いうならば全国本部は司令塔になって、情報の収集や経営管理を中心にして全体をどう動かしていくかということをやり、実務的なことは、JAレベル、生産者レベルにできるだけ近づけようということですね。 ◆地域実態に応じた米販売機能の構築 田林 購買事業はそういう方向でやれますが、販売事業はブロック域にはなりにくい側面があります。販売の場合には、県産ブランドが基本ですのでそれを中心にして、市場販売でも相対取引量を多くし、量販店や生協など販売先の顔が見える売り方をめざそうと考えています。ここでは、情報が非常に大事になりますから、園芸では「JAグループ情報センター」をつくり、情報の収集・伝達の集中化をはかり生産者にフィードバックします。米穀では東西に「米穀販売センター」をつくり情報を一元化します。 今村 青果物と米では違いますし、米でも全国ブランドの米と大都市近郊とか、同じ米でも意味が違いますが、東西パールライスに統合しながら販売戦略を立てていこうということですか。 田林 東北・北陸を中心とした主産県。消費地近郊で基本は県内だが一部県外にだしている県。そして完全な消費地県。これらを分けた業務体制をとろうと考えています。主産県については従来の販売を継続していく。消費地近郊県については、県内販売を中心にして県外については機能のスリム化をはかっていく。そして消費地県は、東西のパールライス会社に集荷の機能を持たせて、県段階での集荷機能をこの2つの会社に集約してスリム化していこうと考えています。 ◆全国本部畜産販売事業は会社化で経営力を強化 今村 畜産関係についてはどうですか。 田林 飼料については、ほとんどの地域で地域別飼料会社化ができています。まだご批判はありますが、価格、サービス、指導が充実してきていますから、この路線を完結していこうと考えています。 ◆園芸販売事業はアウトソーシング化で 今村 そういう方向でいくとして経営的な問題はでてきませんか。 田林 いまの県本部を含めた全農の収支の要は、石油事業と肥料農薬、生産資材です。肥料農薬や生産資材は広域化はしますが、米穀や園芸と一緒にした耕種事業本部として組織内に残します。しかし、石油事業を会社化すると、石油事業で補填していた事業を黒字化しなければいけないという問題にたちまち迫られます。 今村 そういう方向でいくとしても部門ごとに収支のデコボコがでてくると思いますが、全体としては全農として連結決算方式でやるわけですね。 田林 会社も含めてグループ全体が成り立っていることを示していかないと信用がなくなりますし、決算内容の情報開示も当然必要になってきますね。 今村 そうなると、実需者や消費者にも分かりやすくなりますね。そのうえで、消費者には安全な食料を供給します。生産者には可能な限り所得があがるように資材を提供し、それをもとに単位農協は全力をあげて生産し、担い手をシッカリつくりあげ、地域農業の改革を進め、活力をもたせていく、という筋立てになるわけですね。 ◆JAと一緒に実践する事業改革と大切な人材育成 今村 そうした経済事業改革を進めるためには、人材の育成が非常に大事だと思いますが、その点はどうですか。 田林 人材育成では、とりわけマーケティングできる専任者がJAでも少ないので、そのための教育をどうするか。これは営農事業ということになりますが、全農として必ずしも統一されていなくて、県別に開きがあります。これをどうするかは大きな課題です。 今村 私は「農協ほど人材を必要とする組織はない」といっています。どういう人材かというと、農協のあり方研究会報告書の核心でもある(1)マーケティング機能の充実(2)コンサルティング機能の充実(3)マネージメント機能の充実のための人材です。順番もこの順番です。つまり、自分たちが作ったものを売らなければお金が入ってこない。そのためにどういうものを作ったらいいか、どういう作り方をするかというコンサルティング、つまり営農指導・企画です。そしてJAならびに地域農業全体のマネージメントができなければいけないということです。しかし、そのための人材が不足している。 田林 研修会・講習会などももちろん開催しますが、年々参加者が減ってきています。マーケティングなどは短期間での習得は難しいので、長期に参加できる基盤をつくってもらわないと難しいですね。 今村 組合長に「1ヶ月時間をやるから小売でも生協でも市場でも好きな所へ行って勉強して来い」といわないとダメだとよく言うのですが、出せるところとそうでないJAがあり、格差がますます開きますね。それが心配ですね。 田林 JA間の格差はあると思いますが、人づくりの大切さはJA役員も十分理解していると思います。例えば、JAから全農や先進JAへの研修生の派遣などを検討することも必要ですね。経営環境が厳しくなるなかで、よりいっそう人材育成に取り組み、事業競争力の強化をはかってもらいたいと思います。また、全中や全農としても支援が必要です。 今村 全農の場合には県本部と一体になりましたから、縦横自由に人事交流ができるわけですから。そのことを活かしていかないといけないですね。 田林 全農の場合には、160名くらいの交流人事を行っています。140名ほどが県本部から全国本部へきて、20名が全国本部から県本部へ異動しています。来年春には支所を廃止しますから、県本部によりいっそう人事異動をしていくことになると思います。これにより、お互いの業務に精通し一体感が生まれてきます。 今村 人材だけは、おいそれと簡単にできるわけではありませんから、できるところからやっていく必要がありますね。 ◆やりがいのある経済事業改革 今村 消費者への教育も大切ですね。 田林 いま全農では「ふれあい懇談会」を開催していますが、なぜ農業や食料についての教育をしないのかという意見が多くあります。農業・農村へ関心を持つ人をつくっていくことも大切ですね。 今村 JAの正・准組合員数に日本の平均標準世帯人数2.6人を掛けると2400万人になります。JA傘下にこれだけの宝の山があるわけですから、まず自分たちの地域で消費してもらえるものを作り、同じものを消費者に届ける精神をもたないといけないと思います。これを膨らませていく発想をもってもらうと意識が変わり、新しい交流の路線が生まれて来ると思いますね。それだけ農協には潜在的組織力があるということを、自覚した方がいいと考えますね。 田林 JA米や全農安心システムなど、JAブランドの確立が大切です。また、安全・安心の裏づけをもって組織的に供給できるのは、JAグループだけだと確信しています。このことにもっと自信をもって訴えていくことだと思います。 今村 今日はありがとうございました。
(2003.10.9) |
特集企画
| 検証・時の話題 | 論説
| ニュース | アグリビジネス情報
| 新製品情報 | 催しもの 人事速報 | 訃報 | シリーズ | man・人・woman | コメ関連情報 | 農薬関連情報 |
||
社団法人 農協協会 | ||
|