農業協同組合新聞 JACOM
   

3年経過し順調に推移する「MY―100」剤
系統農薬事業推進の求心力に成長

JA全農肥料農薬部農薬課に聞く

 JA全農の農薬事業の戦略品目に位置付けられる水稲除草剤「MY―100」が3年を経過し、着実に裾野を広げつつある。3年間の経過と今後の展望をJA全農肥料農薬部農薬課に取材したほか、取扱各社から新農薬年度に向けての抱負をいただいた。また、水稲除草剤の最近の動向を(財)日本植物調節剤研究協会の横山昌雄事務局長にきいた。さらに、優良事例としてJAそうまおよびJA全農福島県本部に取材した。

 「MY―100(オキサジクロメホン」は、低コスト・省力化をめざすJAグループ農薬事業の牽引役として、JA全農が初めて農薬登録を取得し、平成13農薬年度から市場投入された。JA全農にとって農薬事業の戦略品目に位置付けられ、除草剤事業を急旋回させた。
 「MY―100」は、JA全農とアベンティス クロップサイエンス ジャパン(株)(現バイエル クロップサイエンス(株))が共同開発した新規オキサジノン系の除草成分であり、その安定した効果に魅力がある。市場にある「MY―100」含有混合剤は、フロアブル剤、ジャンボ剤、粒剤、豆つぶ剤、顆粒水和剤とバリエーションに富み、農家の幅広いニーズに対応している。
 
◆環境負荷少なく高い除草効果

 「『MY―100』は、当会が海外原体メーカーと本格的に共同開発に取り組んだ初めての農薬です。農家に対して自信を持って提供できる、21世紀に相応しい除草剤としてご利用いただけるものと確信しています」という松尾英章JA全農常務(当時)の平成12年9月の上市記者会見での言葉は、「MY―100」の全体像を端的に表している。
 有効成分のオキサジクロメホンは、ノビエの発生前から2.5葉期までの処理適期幅を持ち、かつ約50日以上の残効を示す優れたヒエ剤であり、しかも、10a当たりの投下薬量は4〜8gと既存のヒエ剤の中でもっとも少ないレベルにある。さらに、土壌吸着力が強いため地下水や河川への流出が少ないなど、環境にやさしい除草剤に仕上がっている。
 こうした高い除草効果と環境への負荷が少ないといった優れた特性から、農林水産省の「新農薬開発促進事業」に除草剤として初めて取り上げられ、21世紀の大型水稲除草剤として国からも大きな期待が寄せられている。

表1 MY-100剤の商品名と取扱会社
剤型 商品名 取扱会社
フロアブル    
ミスターホームラン(L)フロアブル
北興化学
サットフル(L)フロアブル
クミアイ化学
サラブレッドフロアブル
住化武田農薬
サラブレッドRXフロアブル
住化武田農薬
サムライフロアブル(全流通)
日本農薬
ジャンボ    
ミスターホームラン(L)ジャンボ
北興化学
パットフル(A,L)ジャンボ
クミアイ化学
パットフルエース(L)ジャンボ
クミアイ化学
トレディプラスジャンボ
日産化学
サムライジャンボ(全流通)
日本農薬
粒剤    
ホームラン粒剤
北興化学
ミスターホームラン粒剤
北興化学
パットフル(A,L)粒剤
クミアイ化学
トレディプラス粒剤
日産化学
トレディワイド粒剤
日産化学・八洲化学
顆粒水和
トレディ顆粒
日産化学
トレディプラス顆粒
日産化学

◆SU抵抗性雑草対策にも貢献

 オキサジクロメホンは、このように優れた特性をもっているが、その優れた特性を活かし幅広い草種に効果を示すSU(スルホニルウレア)系除草剤との混合剤を中心に、さまざまな特長を持った混合剤が取り揃えられている。さらに、バリエーションに富んだ剤型があり、使用場面によって除草剤を選択できることも大きな魅力となっている。
 こうした中で、このところ北日本を中心にSU抵抗性雑草が問題となっている。ホタルイ、アゼナ類、ミズアオイ、さらに、最近ではこれまで見られなかったコナギでも抵抗性が見られるようになった。
 各県はこの対策として、「有効な成分の入った一発剤の利用、初期剤と中期剤を組み合わせた体系処理を指導」しているところだが、オキサジクロメホン含有混合剤では、クロメプロップ、ブロモブチドなどを混合したSU抵抗性雑草に有効な薬剤を取り揃え対応している。

◆「MY―100」に農薬学会賞

 大型水稲除草剤に成長した「MY―100」の開発期間は6年と、比較的短かった。JAグループの農薬事業の中心となっているのは水稲農薬であり、とりわけ水稲除草剤はその核にある。そのため、JAグループが除草成分であるオキサジクロメホンを保有したことの意味は大きく、系統農薬事業推進の求心力となっている。
 この「MY―100」が、平成15年度日本農薬学会・業績賞(技術)を受賞した。「低コスト、高い除草効果、環境にやさしい」と時代のニーズあった除草剤に仕上がり、大型品目に育ったことが評価されたもので、JA全農農薬研究室、バイエル クロップサイエンス(株)、三菱ウェルファーマ(株)から4名が受賞した。チョットいい話なので、敢えて付記しておきたい。

◆15年度の実績は31万ヘクタール

 「MY―100」の普及は、平成15農薬年度で3年目。普及面積の推移を見ると、初年度の平成13農薬年度は約12万ヘクタールの普及面積で目標をかなり上回った。次年度の平成14農薬年度は、約25万ヘクタールの普及面積で倍増した。3年目の今年、平成15農薬年度は約31万ヘクタールに落ち着いた。着実に農家に定着してきている。
 今年の動向を見ると、普及面積上位5県は、(1)岩手、(2)新潟、(3)秋田、(4)宮城、(5)茨城の順。また、普及率上位5県は、(1)岩手、(2)福岡、(3)富山、(4)島根、(5)広島となっている。
 製品別に上位5位まで見ると、(1)ミスターホームランフロアブル、(2)ミスターホームラン粒剤、(3)サラブレッドフロアブル、(4)パットフルジャンボ、(5)ホームラン粒剤となっている。
 普及面積・率で岩手(約2万2000ヘクタール・37.2%)がトップにあるが、普及面積で新潟(約2万1000ヘクタール)、普及率で福岡(36.2%)が拮抗している。剤型ではフロアブル剤(約41%)に集中し、メーカー別では北興化学工業(株)(約51%)が優位にある。普及が一段落した気配があり、これからが正念場だ。 (2003.12.12)


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