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経済事業改革のめざすこと 現地ルポ JAはが野(栃木県) 誰かに言われたからではなく組合員の目線で考え、それしかないから実践 |
◆日本一のイチゴ生産地
JAはが野(武田周三郎組合長)は、関東平野の北東、栃木県の東南部、真岡市・二宮町・益子町・茂木町・市貝町・芳賀町の1市5町からなる郡単位の広域合併JAとして、平成9年3月1日に誕生した。正組合員1万8442名(1万5363戸)、准組合員3526名(3258戸)。経済事業の規模は、販売事業が206億4000万円、購買事業が77億5000万円。販売事業の約4割強にあたる83億円がイチゴで、栃木県全体のイチゴ販売高の3分の1強を占め、単協レベルでは日本一の出荷高だ。コメが30%弱の約60億円あり、この2品目で販売事業の7割強を占めている。その他、ナス、ナシ、花などが主要な生産品目となっている。購買事業では、生産資材関係が53億4000万円、生活葬祭事業などが24億1000万円となっている。このほかに燃料や自動車事業を行うJA100%出資の協同会社がある。 ◆共計共販確立で合併 メリットを目に見える形に JAはが野では、第23回JA全国大会の議案討議が始まる以前から、「広域合併したメリットを組合員に目に見える形で出す」ために、JAの経済事業改革に取り組んできている。まず、「広域営農指導員体制」を構築(本所に8名)し、平成10年後半ころから「同じ品物を作っているんだから、同じ価格で売れなくては」と、JA全体としての共計共販体制の確立をめざした販売事業の改革に取り組む。 ◆JA経済事業の経営基盤を強化する県域物流
販売面では合併の実をあげることができたが、生産資材など購買面ではまだ目に見える形でメリットを示すことができなかった。そこで14年11月から栃木県JAグループが進めている物流改革・県域物流を導入し、購買事業における事業改革に取り組むことにした。 ◆年間8000万円 物流コストを削減 JAはが野が県域物流を導入して1年が過ぎた。本当に物流コストは削減され、生産資材価格で効果がでてきたのだろうか。 これを項目別にみると、物流業務に携わる人員が、導入前の正・臨時合わせて92名から70名へと22名削減されたことで、人件費が約1億円強削減された。そのことで、物流コストに占める人件費率は、71%から59%と12%も圧縮された。物流コストを削減するためには、人件費の削減を確実に行うことがポイントだということがよく分かる。 ◆JAの仕入機能を強化する「共同協議方式」 しかし、こうした物流改革がすんなりと実現できたわけではない。県域物流への移行は、物流の仕事をしていたJA職員から仕事を奪うことでもあるし、配送委託などで「地域に落としていた金が落ちなくなる」ことでもある。「全農に仕事を、金を取られる」と反対する意見は当然でてくる。また、従来からの慣習で「いますぐに欲しい」と電話がくれば、例え農薬一つ、醤油一本でも即届けるのが「組合員サービス」だと考えている人たちの意識改革も必要だ。 ◆「JAは高い」という風評を断ち切るために 物流改革と仕入機能の強化によるメリット還元として、JAでは、年間50万円以上JAを利用する大口利用農家を3つにランク分けし、0.5〜1.5%の値引率を設定し「即値引きによる組合員価格の引き下げ」に取り組んでいる。そのために、JAの手数料も品目によって異なるが平均0.5〜1%ダウンさせたという。これは経営的には大きな数字だが「実際にはほとんどの品目で商系には負けていないが、商系の目玉品目価格との比較だけで“JAは高い”という“風評”がある。これを断ち切り、シェアを高める」ためだ。 ◆はが野の農業を振興する「ACSHチーム」 全農とJA、JAと組合員とくに大規模生産者との間には、それぞれ壁(溝)があるとよくいわれる。共同協議方式の実現で全農(県本部)とJAはともに「組合員の目線で考える」ことで信頼関係が強まった。JAと組合員の関係も共計共販の確立や物流改革のメリット還元で信頼関係は改善されてきているが、広域JAになったことで「ふれあい」が少なくなり「個別指導が難しくなっている」など課題は多い。先に見た大口利用者は約1900名で購買品(飼料を除く)供給高の75%を占めている。その中の200名前後の組合員が向こうを向いているか、向こうを向きがちの人たちがいる。その人たちをこちらに向ければシェアは高まる」。「急激にではなくていいが、熱くJAを見てもらう」ために、庭先やほ場に出かけ、生産資材から信用・共済さらに青色申告まで総合的に組合員が何を考え、何を求めているのかを知り、相談にのれるようにするために15年3月に「農業相談支援チーム(ACSH・アクシュ)」(営農経済渉外員制度)を設置した。ACSHは「はが野の農業を振興する」というメンバーの熱い思いを込めて、Agriculture・農業、Consulting・相談、Suppoter・支援、Haganoの頭文字をとってネーミングされた。 ◆常勤役員も同行し組合員から熱い視線が 現在、8名のメンバーが先の1900名を分担して月2回訪問することを目標に活動している。彼らは推進目標(金額)をもたない。「従来の推進のイメージ、見方を変えてもらい、本当に農業を支援し考えるというJAの推進の姿勢転換を組合員にアピール」したいからだという。そして月に1回必ず武田組合長が同行し訪問することになっている。最近は、常勤の専務や常務理事も自ら申し出てメンバーと同行している。時には「座敷に上がって半日話し込む」こともあり組合員から好評だ。同行する役員も「直接、組合員から話が聞けて勉強になる」という。 |
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