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私たち、環境創造型農業の実現を目指します あるJAの挑戦 農でつなぐ、いのちと未来 千葉県・JA山武郡市 |
◆産地、産物、人を伝える
JA山武郡市の地域農業振興計画の柱となるのは2つの宣言だ。 計画のもう一つの柱が「農のある地域づくり宣言」だ。 ◆食べることは命につながっている
将来、就農することを決めたのは高校の担任の一言。「おまえがやらなくてだれが農業をやるんだ」。それが背中を押すきっかけとはなったが、農業が大好き、趣味は仕事と断言する父の姿をずっと見てきて「受け継ぐのはその思い」と考えていた。大学で食品経済学を学んだ後、ドイツへ農業研修に出かけたり、国内でも各地に研修に出かけ仲間を増やした。ホームページも作成していて、全国の同世代の農業者が情報交換する場となっている。 最近、今関家の農業で変わったのは直売所やインショップに出荷するようになったこと。収穫作業のほか、シール貼りや出荷準備に百合さんは忙しい毎日を送る。直売所で消費者からの声を聞くようになって家族の会話も増えたという。母は加工品づくりに励むようになり、家族で作付ける品目もバラエティーに富むようになった。 市場出荷一辺倒だった経営から多様な売り方へと変わってきたが、それには直売所の設置などJAの役割が大きいと話す。 「JAは生産者がつくった組織。自分たちがアイデア、意見をどんどん出して自分たちの組織にしていくべき」。 直売所への出荷は経営面へのプラスだけではなく、新たな夢も与えてくれた。今後は食農教育に力を入れたいと語る。「食べることは命につながっている。農業について聞く耳を持つ食べる人を育ていかないと、日本の農業は支えられないと思う。それを伝える活動ができれば」。 ◆家族中でアイデア出す農業を続ける
直売の試みは和代さんが始めた。最初はバザー感覚で子ども連れで朝市への出荷を始めたが「お客さんと対話で学ぶことが多かった」という。消費者が望んでいるものや対話のなかで、こんな加工品を作れば売れるのでは、といったアドバイスももらったりした。一方、この地域が大根の指定産地になっていても地元の消費者は「そんな代表産地であるなんて知らなかったことに驚いた」。 そうした消費者と生産者のギャップを埋めるために販売する農産物1点1点にメッセージカードを入れることにした。どうやってこの野菜を作ったのか、どう料理すればおいしく食べられるのかなどを記した。 また、加工品づくりにも力を入れた。形の良くないサツマイモをスイートポテトにしたり、春菊の茎をドーナツの生地に入れたり、米の未熟粒を粉にしてイモ、ユズ、カボチャなどと合わせて彩り豊かな餅を作ったりした。 「原材料をわざわざ仕入れるのではなく、自分たちで生産したものから家族中で知恵を絞って加工品をつくる。農家の生活そのものからヒントを得るということだと思います」と和代さん。こうした地域の食文化を伝えるには女性の力がますます大事になると語った。 ◆農のある安らぎの地域をつくっていきたい
就農して25年。かつての単品大量生産から、花など品目も増やしてきたが、さらに今年からは環境創造型農業での米づくりをめざす。JAが呼びかける千葉県の特別栽培基準を満たす栽培に取り組むことを決めた。品種はコシヒカリ。石井さんは「自分のつくった農産物が正当に評価されることを期待して」のことだという。それだけにJAによる販売の拡大に期待を寄せる。 地域農業振興計画を内外に公表して以降、青年部も各支所で説明会、勉強会を持つ予定だ。「環境に配慮した農業、と思ってもどうやればいいか分からなかった。この宣言で意識が広まってきた」と語る。 一方で三人の子どもの親として次世代に地域をバトンタッチすることも課題になる年齢でもある。「環境創造型農業」もそのために大切な目標だと考えているが、もうひとつの柱である「農のある地域づくり宣言」には、自分の親たちも含めここで暮らし農業をしてきたさまざまな高齢者が心豊かに暮らせる地域、というイメージも浮かんだ。 「この宣言の実現にはさまざま人々の交流が大事だと思う。人々にとって安らぎのある地域にしていきたいと私は思います」。 ◆私たちの農業のすばらしさ 地域の人々に知らせていきたい
当時、地域では慣行農法から有機農業への転換をしなくては生き残れないという悩みがあったのだろうという。たとえば、単品の大量生産がもたらす連作障害などだ。ただ彼女たちは「嫁に来てすぐに有機農業へ。草取りに追われる日々でした」と笑って話す。JAで有機部会を設立し東京都内の生協や産直グループとの取引を拡大してきた。 もちろんすべて無農薬栽培では供給できない。農薬を使わなければまともに収穫できない農産物もある。そのことを夫たちやその仲間とともに都会に出かけていって説明して理解をしてもらってきた。 都会の関係者には支持者も増え、都心の幼稚園児などさえも農業体験にやってくるようになった。今では第三者の有機認証による格づけも得る生産者組織となった。 しかし、地域に開設された直売所に出荷してみると、安い野菜のほうがいいという消費者の声に触れた。今まで都会の消費者をターゲットにしてきたことは間違いではなかったが、地域の人々が自分たちの実践を知らなかったことに気づいた。 「その点で地域の生活者を地域農業づくりに巻き込んでしまうという発想はいいと思いました。自分たちの農業を自分たちの地域に知ってもらう、それが地域づくりにもなると考えています」と2人は話す。 ◆女性が伝統の食文化を受け継ぐ役割担いたい
きっかけは農産物価格が低迷するなか、少しでも付加価値をつけて収入を上げられないか、だった。味噌づくりから始めた試みは地域の研修所で女性たちに指導することにもなった。なかには自分の小遣い程度になればという参加者もいたが、直売所での販売で今では「自分の夫に小遣いをあげる人までいます」という。 加工品は多彩だ。イモと米を合わせたイモかきもち、赤飯など米農家ならではもののほか、タマネギが大量に穫れるためそれを利用した焼き肉のタレも好評だし、トマトを使ったソース、ケチャップまで作った。 今回の地域農業振興計画には、地産地消や文化の継承などが目標にあるが、自分たちが消費者との交流を進めてきた経験で感じるのは「お互いの気持ちが満足するかどうかだと思います」。今後それをさらに地域に広めようとするには、「農協という組織の大切さを改めて理解できた」と話す。そのためにも「JAは生産者の身近にいてほしい」。これは地域の夢が実現するキーワードかもしれない。女性の立場からは農村に伝わる伝統的な食文化を地域に伝えていくことも役割と考えている。 (2004.1.14) |
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