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輸入農産物の急増など日本農業をめぐる環境はいっそう厳しさを増し、安定した農業経営を維持していくためには生産資材コストの削減も重要な柱の1つとなっている。JA全農では、「目に見える生産資材価格の引き下げ」を実現するために、購買機能の強化や配送拠点の整備など物流の合理化を大幅に進め、最大20%の生産資材コストの削減を目指している。本紙では農薬事業に焦点を当て、「ジェイエース」など生産資材コストの削減に貢献する各種農薬およびこれを下支えする大型規格品の平成15農薬年度の進捗状況などを見ることにした。 |
ハンディを背負いながらも健闘した「ジェイエース」 JA全農は、生産資材事業において、機能・規模に応じた価格対応など担い手への対応強化を進めるとともに、低価格資材や省力化に向けた栽培技術の開発・普及などを行い、さらに、物流拠点の集約・再配置などにより、もっとも効率的な物流体系を整備していこうとしている。 ◆「ペンコゼブ」に続くジェネリックの第2弾 医薬業界では、当たり前ともなっているジェネリック(特許切れ)。農薬では、登録制度の簡素化など、ジェネリックへの環境整備を待たなければならないが、ジェネリックが特許により独占的に守られている農薬価格の引き下げを実現するための有力な手段の一つとなっていることも事実である。 ◆初年度のジェイエース 小型規格に顕著な動き それでは、今年の実績はどうだったのか。出荷は、製造の遅れにより3月下旬からと、予約期に間に合わず、実際には当用期(需要期)からの出荷となっている。現時点の実績については、「出荷の開始が当初想定した時期よりも遅れたわりには、まずまず順調な滑り出しを見せたのではないか」(JA全農肥料農薬部農薬推進企画課)という。 ◆適用作物の拡大が普及推進の鍵に 「ジェイエース」の普及推進上のネックの一つに、先行剤と比較して適用作物で農薬登録の範囲が狭かったことがあげられる。 ラウンドアップとジェイエースで共同推進を実施 JA全農の農薬事業で、非選択性茎葉処理除草剤「ラウンドアップハイロード」、JAグループが開発した新規園芸用殺虫剤「ジェイエース」、水稲用除草剤「MY―100(オキサジクロメホン)」が重点推進品目の3本柱となっているが、このうち「ラウンドアップハイロード」と「ジェイエース」で共同推進が実施されている。 ◆軌道に乗った2003年のJA POP甲子園 共同推進の内容は、概ね次の3点に絞られる。 ◆新発想のネックタグ推進補助制度も導入 2つ目は、「ラウンドアップハイロード」のネックタグの裏面に「ジェイエース」の宣伝広告を入れたことであり、新しい発想として高く評価できよう。 JAグループの農薬事業を牽引 順調に推移する「MY―100」 「MY―100(オキサジクロメホン)」は、低コスト・省力化を目指すJAグループ農薬事業の牽引役として、JA全農が初めて農薬登録を取得し、平成13農薬年度から市場投入された。その普及面積は平成13農薬年度約12万ヘクタール、平成14農薬年度約25万ヘクタール、平成15農薬年度約31万ヘクタールと順調に推移している。 ◆優れた除草効果と環境にもやさしい 有効成分であるオキサジクロメホンは、ノビエの発生前から2.5葉期までの処理適期幅をもち、かつ約50日以上の残効を示す優れたヒエ剤として登場した。しかも、10アール当たりの投下薬量は4〜8グラムと、既存のヒエ剤の中でもっとも少ないレベルにある。 ◆期待の「MY―100」これからが正念場 この「MY―100」が、平成15年度日本農薬学会・業績賞(技術)を受賞した。「低コスト、高い除草効果、環境にやさしい」と時代のニーズにあった除草剤に仕上がり、大型品目に成長したことが評価の対象となった。改めて、JAグループが除草成分であるオキサジクロメホンを保有したことの意味は大きい。 ◆茎葉処理型除草剤が大型規格品の中心に 農業生産の低コスト化に貢献しているのが、農薬の大型規格品であり、急成長している。大型規格品は、「ラウンドアップ」で先行したが、最近、急激にアイテムを増やしてきた。農業生産法人、大規模生産農家など担い手農家対応にも一役かっている。 ◆低コスト・省力化に貢献農家直送で担い手対応も このように、大型規格品は、低コスト・省力化に大きく貢献しているが、一方で、着実に農業生産法人、大規模生産農家の農業経営に寄与し、現在その地歩を固めつつある。 ラウンドアップハイロード 本格普及の5リットル規格 これまで見てきた通り、大型規格品は「ラウンドアップハイロード」が先行した。平成9年3月の2リットルボトルを皮切りに、翌年の平成10年には5リットルボトルが加わった。これに、園芸・畑作除草剤の「バスタ」2.2リットル、「プリグロックスL」5リットル、「ゴーゴーサン」10キログラム・2リットル、さらに水稲用除草剤の「トレディ顆粒」400グラムなどが追加され、よりラインアップの充実がはかられた。 ◆無登録農薬問題が茎葉処理除草剤市場に影響 「ラウンドアップハイロード」は、基準規格(500ミリリットル)の価格の引き下げもさることながら、大型規格を増やすことによって、実質的に農家購入価格を引き下げている。 ◆「5.5リットル」規格が5リットル規格を底上げ 平成15農薬年度で特筆されるのは、この「ラウンドアップハイロード」で5.5リットル規格を市場投入したことだ。5リットル1本に対して500ミリリットル1本をセットにする規格で、5リットルと同じ価格で購入することができる。目に見える割安感があり、このことが「農家(ユーザー)から大きな支持を受けた」(農薬推進企画課)という。 ◆平成16農薬年度も5.5リットル規格を継続 5.5リットル規格は、平成15農薬年度は限定販売とされた。そのほとんどが、3月末までに出荷を終えている。また、5.5リットル規格は平成15農薬年度の単年度で終了の予定であったが、「非常に評判が良く、商品力もあることから、平成16農薬年度も継続していく」(同)ことにした。 ◆期待すべき茎葉処理剤のブランド3剤 バスタ、プリグロックスも大型規格で健闘 非選択性茎葉処理除草剤分野において、「ラウンドアップハイロード」、「バスタ」、「プリグロックスL」はブランド3剤といわれている。本年度は、「ラウンドアップハイロード」が一人勝ちした感があるが、「バスタ」、「プリグロックスL」も大型規格で健闘している。 ◆バスタの大型規格お買い得感で伸長 「バスタ」の大型規格の出荷実績は、対前年同月比(10月末)で、約2倍の成長を見せている。系統独自の規格は2.2リットル×6本で、バスタにおけるJA全農の大型規格の比率を昨年の34%から50%にまで押し上げた。 ◆大型規格は前年比250% 注目のプリグロックスL 「プリグロックスL」は、この分野において先輩格だ。「ラウンドアップ」、「バスタ」などが登場するまでは、速効性という効果面はもとより低廉価格という経済面においても他剤を寄せつけなかった。 ◆ゴーゴーサンは乳剤を中心に拡大 「ゴーゴーサン」も息の長い薬剤。大型規格は、細粒剤で10キログラム×2本、乳剤で2リットル×10本となっている。大型規格の比率は、それぞれ5%、27%となっており、大型規格の普及拡大は乳剤が先行している。JA全農では、「今後とも普及に力を入れていく」(同)という。 ◆ラウンドアップハイロード無登録農薬問題で追い風 茎葉処理除草剤分野は、これまで無登録農薬の流通が目立っていたが、昨夏の無登録農薬問題の発生から、平成15年3月、7月の、いわゆる平成農薬取締法の改正に至るまでの経過の中で、ホームセンターなどから無登録農薬は駆逐されていった。しかし、これを追い風としたのは、現時点ではラウンドアップハイロード1つとなっている。 ◆ブランド剤に追い風を期待 この意味で、年初、これらブランド3剤が伸長する期待感があったが、必ずしも「バスタ」、「プリグロックスL」は3剤のなかでこの追い風に乗り切ったとはいえない。 効果と割安感が実証された デジタルコラトップアクタラ 低コスト育苗箱施用剤分野で、思い切った価格設定を行ったのが「デジタルコラトップアクタラ」だ。この分野の全体の価格水準を確実に引き下げている。新しい価格設定で始動した当年度は、約1万5000ケースの普及を果たし、平成16農薬年度は3倍強の約5万ケースの普及を目指している。 ◆今年の冷害の中で高い効果を実証 「デジタルコラトップアクタラ」は、何も価格だけが魅力というわけではない。10年ぶりの冷害に見舞われた今年、「今年使ってみて、特に東北地域を中心に非常に高い評価を得た」(同)という。筆者のところにも、「JAみやぎ登米」で善戦したという情報がきたくらいだ。 ◆直接購買品目の「嵐プリンス」 水稲育苗箱施用剤も、先行し大型剤に成長した「ウィンアドマイヤー」、「Dr.オリゼプリンス」を中心に豊富な品揃えとなっている。地域、条件に応じた商品を選択していきたい。 軌道に乗った『JA POP甲子園』 JA店舗・購買窓口の活性化へ JA全農は11月21日、JAビルにおいて第2回『JA POP甲子園』選考会を開催した。 ◆今年の最優秀賞では山口JA豊関が連覇 今回の『JA POP甲子園』には、全国各地から昨年の2倍以上の79点の応募があった。いずれも、文字・色・形に斬新的な工夫を凝らしたもので、力作ぞろいで選考委員を悩ましたぐらいだ。栄えある最優秀賞に輝いたのは山口・JA豊関 下関東部営農経済支部で、昨年に続く受賞で2連覇となった(表参照)。 なお、JA全農では、第3回『JA POP甲子園』に向けて準備を進めている。夢を広げるコンテストとして、より多くのJAの参加を本紙でも呼びかけたい。
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