農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 第49回JA全国女性大会 農と共生の世紀づくりは私たちの手で

JA全国女性大会に寄せて 私たちの「信頼」「改革」「貢献」を私たちの言葉で語りましょう!
峰島歌子 JA全国女性組織協議会会長
 

 私たちは、誰一人として農と共生しないで生きていくことはできないのです。これは、太古の昔に、人類が初めて自らの手で栽培した作物を収穫した日から、この今まで、そしてこれからも永遠に……。
 この半世紀、私たちは、この農業との共生が基盤となることをいつしか忘れ、目の前を通り過ぎる、溢れんばかりの情報やサービスに心弾ませてまいりました。そこで、もう一度私たちの手で共生の大切さを確認する作業に取りかかることになったのです。
 勝手な言い分ではありますが、私たちの手で、何を始めるなどといった大それたことではなく、つい見失ってしまった、農との共生のなかにある喜びと幸せを思い出させていただきます。

 『信頼』―――――●

 農業という営みのなかに必然的に生まれてくるものがあるとするならば、それは、営みに関わるすべての人々のなかの信頼という強い絆でしょう。
 その信頼関係のもとに、極めて細やかな配慮や心遣いが自然に働き掛け合い、結果として美しい農作物が生まれるのです。形が悪いまがった大根にも、ゴツゴツした山芋にだって、それは、言葉には表わせない美しい心が多く含まれているのです。その美しい心の生産者であり消費者であることが誇りであり、その誇りのなかで、私たちは本当の幸せを実感できるのです。
 最近、私はこの幸せを脅かす大きな過ちを目にする機会が多くあります。具体的な事件や事故については、それぞれの自助努力によって解決に向かっているようですが、堪え難い憤りを感じています。それは、皆様方も同じではないでしょうか。
 今日の農業に、大きな過ちがあるのなら、それは、結果として信頼を裏切ってしまう行為があり、言い換えれば強い絆がどこかで切れてしまったということでしょう。
 真の農との共生は、信頼のうえに成り立っているのです。裏切り者を探すのではなく、信頼関係をあえて確認するでもなく、仲間を信じていくことが、今、私たちJA女性組織がしなければならないことなのです。
 「信じてください」と叫ぶことは実は簡単ですが、「信じますか?」と尋ねることの方が勇気がいるのです。今こそ、「信じますか?」と互いに尋ねあえる勇気を持たなければならないと思います。
 JA女性組織メンバーは、総代や理事となり、「信じていますか?」と勇気を持って社会に尋ねます。そして、「信じます」と言われるように日々努力する道を選んだのです。
 真の信頼関係には言葉は要りません。隣をみてください、そこに信頼がありますか。

 『改革』―――――●

 変化という言葉にあまりに敏感になっているような気がします。何でも新しい構造にして、今まであった体制の批判をして、あたかも新しい制度や考え方の方が正しいと騒いでいるようです。
 農業も同じです。戦後の農地改革に始まり農業もこの半世紀で多くの改革を行ってまいりました。
 今さら、その改革の一つ一つがすべて正しかったとか、間違いであったなどといった検証はしません。ただ、行く先々で耳にするのが、これからの農業に向かって必要な改革があるといった旨の言葉です。
 「いったい、これからの農業に向けて、何を構造改革するのですか?」
 そもそも、改革などといった言葉を使うよりも、「より良くする」といった方が、解りやすいですよね。そうです、農業をより良くし、農業に関わるすべての人々の暮らしをより良くするということが、目的なのです。そこで、何をしたら良いかという議論と実践になるのです。
 JA女性組織では、多くの組織で「より良くする」ための実践報告がされていますが、私は、その実践を目のあたりにするごとにいつも同じ思いになります。それは、「より良くするための努力は、とても大変なことですね。しかし、より良くするための努力は、とっても疲れるけど、楽しいものなのですね」と。
 とかく、女性には出来ないであろう、とされていたことに女性が参画することに目を取られがちですが、真の女性参画も、より良くしようと願う女性の思いが行動になっているだけなのです。
 「より良くする実践報告」が、フレッシュミズの主張発表や意見交流会で活発に行われています。きっとそこには、他の地域でも役に立つ大きなヒントが隠されています。そのヒントを皆さんでさらに説き明かし、幸せにつなげましょう。それが真の改革ですから。

 『貢献』―――――●

 人のために生きるなんて考えたことがありますか? そうですね、自分の家庭のためとか、子供のためにということは、皆さん意識して暮らしていらっしゃると思います。
 これが、社会のためとか、国家のためにとかと口にすると、一瞬、眉を顰められたりします。残念なことですが、この眉を顰められるようなことこそ、一番大切なことだと思います。
 農業は自分たちの生活のためだけではなく、広く社会全体のための営みでもあるのです。私たちの作る米が、果物が、すべての農作物が、社会のためになっているのです。
 『福祉』という言葉が氾濫していますが、そもそも、『福祉』という言葉は、『幸い、幸福』という意味です。私たちの営む農業は社会の幸せの礎であって、言い換えれば福祉の充実に欠かせないものなのです。
 JAグループは、社会に貢献しています、と胸を張っていきましょう。目に見えたボランティアをしないと評価されないことがありますが、これからの社会をより幸せなものにするため、目に見えない貢献をしているのが私たちの組織です。
 地域社会を守り、その地域社会のなかで健全な子供の教育を行い、高齢者との関わり合いを大切にしている中心に農業の営みがあります。考えれば、もっともっと、地域社会の中心になる働きかけができるでしょう。
 『共生のために』
 個性の時代といわれた20世紀の後半。私たちは、つい個を尊重するがあまり、公を見失ってしまったようです。言うなれば、共存することは上手くなったのでしょうが、共に生活していく共生という思いが見失われてしまったのだと思います。
 『農作物を食べて生きる。自然の恩恵を受けながら自然と共に生きる』といったことを忘れてしまいました。『消費物として農作物を購入して暮らす』『自然との関わりを忘れがちになって暮らす』といった方向にいってしまったのです。大切なのは自然と共に生活し利益を得る、そして次世代に幸せを継承していくことだと思います。
 ここに、JA女性組織は、共生という言葉を大きく提唱します。今こそ、共生にある真の喜びと幸せを求めて活動を展開しましょう。 (2004.1.29)



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